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意思決定プロセスの改善手法

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 一つ前の記事で日本における生産性の低い原因は意思決定プロセスにあるのではないかという仮説を述べた。判子の大量に並んだ稟議書を見るたびにこの仮説が頭をよぎる。折しもこのところワークフローシステムが再ブームになっているようで、問合せや相談も増えている。働き方改革の実現手法としてワークフローシステムにより電子化が上がりやすいこと、ワークフローのパッケージシステムがそろそろ第3世代に入り、乱立していたパッケージソフト群から勝ち組が決まり始めるとともに、それらの機能が日本企業の複雑なルールに適合しきりつつあることがその背景にある。

 さてワークフローシステムの導入にあわせて、稟議の手続きやルールを見直すというケースは多い。そうしたケースでとり得る選択肢として幾つか手法を紹介しておく。

(1)職務分掌規定、権限規定、職務権限一覧表の簡略化
 まず、最初にチェックすべきはワークフローや稟議のもととなるこれらの規定である。特に権限規定に添付されている職務権限一覧表は要注意である。多くの場合EXCELで書かれた職務権限一覧表。これが10頁以上になっていたら、見直したほうが良いかもしれない。細かすぎる権限規定を稟議の都度照合・確認するのは現場の担当者の時間を確実に奪う。年に数回しか出ない稟議の回覧先を確認するために数時間をかけ、さらにはそれが間違っていて途中で差し戻されるなどというのは大いなる無駄だ。
 分類を見直し、似たようなものは合議(協議)先も含めて纏める、金額などにより決裁権者を細かく分けるのは辞める、などできるだけ簡略化して表の行数を減らして確認作業が簡単に出来るようにする。

(1)'決裁権者、回覧ルートの設定は専任部署に集約化する
 もしどうしても権限規定が簡略化できないのであれば、決裁のためのルート設定は各担当者にやらせるのではなく総務部や経営企画部に専任者を置きそこで一括して行う。最初に専任者に回覧してチェックをさせ間違いが無いように設定するのである。もっとも日本の大企業の場合は従来からこっちのやり方が主流で、申請部署(起案部署)にルート設定をやらせるのは、ワークフローシステムが普及し始めてからの流れだ。
 システムになったからと言って安易に回覧ルートの設定を現場に任せないことだ。(1)で書いたような権限一覧の簡素化をしないで現場に任せると、決裁権者の設定間違いやルート漏れが多発して、稟議書の差し戻しが増えるだけになる。

(2)協議・合議先の削減
 (1)の権限一覧の見直しとも被るが、そもそも不要な協議先(合議先)の部署に回覧をしないようにする。組織の中には過去の慣例とやらで意味もなく協議先に加わっている部署が結構あるものだ。決裁前に意見を求める必要が無いのであれば、協議先ではなく決裁後の報告先に変更する。
 これとは別に、申請部署(起案部署)が「念のために」や「とりあえず」で協議先部署を安易に追加するのも日本人には多い行動パターンである。思い切って部署を勝手に加えられないように制限してしまう(必要であれば報告先に追加させる)のも手だし、追加した場合なぜ追加したか併記させるというのもある。

(3)補佐役(副査)によるチェック・承認
 これも多いのだが、部長の前にかならず課長や次長(あるいは参事役や担当部長などと呼ばれる人)が確認をしてから部長が承認をする"部内ルール"の存在によって、承認ルートに同じ部の人が何度も出てくる。確かにチェックは必要だろう、しかしそれを毎回各所でやる必要があるのか、そもそもチェックであって承認ではないはずだ。もし気になるなら部長の前の補佐役が却下しているケースをカウントしてはどうか。形式的に承認しているだけなのならそもそもその人を通す必要はない。あるいはせめて、部長とその補佐役には同時に配信してしまい、部長の承認は先にどんどん進められるようにしてしまえば良い。もちろん部長承認前に補佐役が目を通して承認を差し込んでも良いし、部長が「あれ?」と思ったら補佐役の確認が終わるまで待つようにするのはかまわない。

(4)ネゴと決裁の分離
 例えば官公庁などでは決裁文書は公文書扱いで長期間の保管が求められ、訂正や修正はできないということもある。このため決裁時には、意見やコメントまたそれに対する修正を加筆することができないので事前に調整をしておき既に合意や修整をし終わったものを稟議として回している組織もある。
 ワークフローがこの形式的な決裁文書を回覧するためのものとして導入された場合、現場ではワークフローを回す前のネゴの作業が残り、多くの場合ネゴ作業は過去同様紙で実施される。かくしてワークフローシステムは単なる形式的なものとなり、システム投入分の作業は業務効率化ではなく余計な追加作業という扱いになる。
 これを防ぐためには、事前協議(相談、ネゴ)もワークフローに取り入れる方法がある。ようは最初から2度回すようにするのだ。最初は最終決裁者を除き調整先のみとし、しかも順次ではなく同時に配る。その結果を受けて最終版を作成(差し替え)して正規ルートで回す。その際には先程の(3)のような補佐役は飛ばすが、事前協議時の履歴は見えるので部長は安心して即時承認できるという流れである。
 あるいはもっと進めて、事前協議はワークフローではなく社内SNSや専用の場でやるという組織も出てきている。案となる稟議書を共用フォルダに入れておいて、閲覧・確認依頼をメールやチャットで行う。各関係部署の担当者は稟議書案に直接コメントや修正案を書き込む。書き込んだ内容は修正履歴として保存されるので、適当な時期が来たら起案部署でそれらを纏めて反映するのである。

 他にも細かい意思決定プロセスの改善手法はまだまだあるが、長くなったのでとりあえずこのへんで。もしもっと詳しく知りたい方や現在の意思決定プロセスにお悩みの方は個別にご連絡いただきたい。

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