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エンタープライズコラボレーションの今と今後を鋭く分析

お互いの小遣い額を比べて、それでどうする?

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 訪問先企業の役員からIT予算について相談を受けることがよくある。「うちのIT予算は他の会社に比べてかかりすぎじゃないのか?」「(売上高や人員数から)標準的なIT予算額の目処がないか?」という相談だ。

 結論を先に書くとそうした目処になる金額は無い。というか、ベンチマークとする他社のIT予算額の全体額を知って自社のIT予算額と比較してもどうしようもない。
 理由はいくつかあるが、一つ目はIT予算額というものの考え方や捉え方が会社ごとに異なることにある。会社によっては部門システムの構築費用はIT予算とは別に各部門の予算に計上していることがある。IT部門に所属する人員の人件費の扱いもばらばらだ。情報子会社を持っているような大企業になると、情報子会社の運営コストをグループ全体のIT予算額としてどう見るかはとても難しい。かくしてIT予算額の中身は各社ごとにばらばらでありその総額を比較してもあまり意味はない。
 ちなみに二つめの理由として、IT予算額はその会社のIT化のライフサイクルに大きく左右される部分があるということだ。基幹システムの再構築やPC端末の入替えなど数年に一度発生する大規模な投資が年度によっては数字に含まれ異常値となることがある。ちなみにこうした大規模投資分は通常のIT予算枠とは別に管理して予算に含めないとする考え方の会社もある。

 それでも何か目安となる数字が欲しい人用には、先日メイド・イン・ジャパン・ソフトウェア・コンソーシアムが発表した「企業の業務システム構築方法に関する調査結果」に、企業の従業員数と業種ごとのIT予算額の平均額が載っているの参考にすると良い。

 さてこのようなデータから自社の総額が他社水準と比較して多いか少ないか判ったとする。で、次はどうするのか?多ければ減らすのか?少なければ増やすのか?
 そう金額だけ比較しても結局意味はない。自社がITを活用して業務効率を上げたりこれまでにない付加価値を創っていく戦略を取っているのであれば、今までの金額に関係なく当然増やすだろし、既にIT化出来る部分がひととおり終わっているのであれば他社に比べて低い金額をさらに減らすことも可能だ。

 ようはサラリーマンが月々の小遣いの金額をお互いに「俺2万円」」「俺は10万円」と明かしあってそれでその後どうするのか?ということだ。郊外に勤め昼飯も夕飯も会社の食堂で賄っている内勤者と都心の食堂の無いオフィスに勤務し取引先との付き合いも多い営業マンの小遣いの総額だけを比較しても仕方がない。

 では、こうした「自社のIT予算額が妥当か他と比較したい」という時はどうすれば良いか?
 もしやるのなら費目とか投資項目毎に比較すると良い。例えばグループウェア関連投資額について一人あたり幾らかかっているかを比較するとか、OA化(パソコン)のコストと内容に絞って比較するのだ。同規模の同業他社が会計システムに1億円しかかけていないのに自社では10億円もかかっていたとすれば、それは精査した方が良いということだ。小遣いの総額ではなく、利用用途を比較しないと無駄遣いかどうかは判らない。

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