総務省が作成した「ICTベンチャー・リーダーシップ・プログラム」のテキストが素晴しすぎる件
今週末に筑波大学でCRMに関する講義をするための資料を作っていたら、ひょんな所から凄い資料を見つけたので紹介。
総務省が2007年度に開発し昨年の4月に公開した「ICTベンチャー・リーダーシップ・プログラム」のテキストと授業計画書がそれ。2007年度の総務省の報告書といえば小野さんが紹介して有名になった「事業計画作成とベンチャー経営の手引き」及び「事業計画作成支援コースの運営とベンチャー支援上のポイント」があるがそれに負けず劣らずの素晴しいできばえだ。
公表資料には
我が国ICT産業が、グローバル競争が激化する中でさらなる発展を実現するために、イノベーションの担い手として期待されているのが、先進的・独創的な技術やビジネスモデルによりニュービジネスを創出するICTベンチャーです。
(中略)
そこで総務省では、大学生・高等専門学校生等を対象に、ICTベンチャーの経営層候補となり得る人材の育成を目的として、「ICTベンチャー・リーダーシップ・プログラム(別紙)」を開発しました。
当プログラムは、大学・高等専門学校等の教育機関等において、使用して頂くことを想定しています。
とあり、プログラム全体は11章+補講に加え企業調査とワークショップからなっている。講義部分にあたるテキストだけでも大学・高等専門学校生でなくてもICT業界の若手には自習用教材としても良さそうだ。例えば第1章のICTベンチャーの類型(事例紹介)のヤフー、アマゾン、楽天、ミクシィといったベンチャー8社の紹介は読み物としても面白いし、第2章の技術の項目や第6章のマーケティングの第10章の会計面の話は資料として非常に良く纏まっていていろんな場面に使えそうだ。
他にもいくつか面白い部分を引用すると第4章の「アイデアから事業機会へ」には、『「投資家の視点」で「アイデア」を選別するための問いかけ』として
- (その事業アイデアは)顧客やエンドユーザにとって、重要な価値を創造するか/重要な価値を加えることができるか?
- (その事業アイデアは)重要な問題を解決するものか?もしくは顧客が喜んでお金を払うようなニーズに合致したものか?
- (その事業アイデア)は儲かるか?
十分なマーケットがあるか(50億円以上の市場規模)
高成長マーケットか?(20%以上の成長率)
高い利幅が見込めるか?(40%以上の利益率)
高い潜在利益が見込めるか?(税引き後で10%~15%以上の利益率)
早期に潤沢なキャッシュフローが見込めるか?
投資家に魅力的なリターンが見込めるか?(IRR(内部収益率)で25%~30%)- そのマーケットに、「現時点」で参入することは、本当に適切か?リスクに見合ったリターンが得られるか?
という視点の例があるし、第8章では、いろんなビジネスモデルの紹介に先立ちビジネスモデル図の説明をしている。
授業計画書のほうには、講義の後の企業調査とワークショップの進め方の解説として「企業調査の手引き(スライド399~)」「ワークショップの進め方(スライド428~)「インターンシップ実施要綱(スライド463~)」とあって、このあたりも組織内で人材育成を担当している人には参考に出来ることが多い。いろんな場面で活用できそうだ。
世の中が不景気となって本業へ費やす時間が減った分だけ教育や人材育成にかける余力が出てきた今、こういう無料でいろいろ使い回しが出来そうな資料を政府が用意してくれているのは嬉しい。今後の2009年4月は大量採用時代最後の年でICT業界にも大勢の新入社員が加入してくるが、彼らの入社時研修とかにも使えそうだ。
しかしこの広報は昨年の4月に出されているし総務省はその後も各地でセミナーなどをやっているらしいけどそれほど有名になっていないのはなぜだろう。