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エンタープライズコラボレーションの今と今後を鋭く分析

SIerの実力は事例のアピールで

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 SIerのマーケティングの話を続ける。SIという案件の提案段階での差別化というのは、言うのは簡単だがかなり難しい。提案段階ではまだ形のないものをイメージさせるのがまず大変だし、イメージしているものがお互いに同じかどうかを検証するにはかなり詳細に資料を作るしかない。そしてイメージを具現化できることを示すには技術力を提示する必要があるが、この技術力という代物も目には見えない。

 SIと言う案件はその性格上、要件が決まりばあとはそれにあわせた技術力さえあればどんなシステムだって構築できる。「うちはどんなシステムでも構築できます」というのはSIerの営業の良く言う売り文句だ。でも「何でも出来ます」と言われても出来上がりのシステムがどのようなものになって、そのシステムを使うと業務がどう変るかは具体的にはイメージできない。で、「本当にあなたのところで作れるの?」と懐疑的な気持ちになる顧客もいる。

 当然顧客側としても、曖昧な部分を残すSI案件については出来るだけリスクを減らしたいものだろう。だから、過去に実績を持っているSIerや類似案件を経験した担当者をより重視するようになるのは仕方がない。

 これを解決するために過去に自社で手がけたシステム構築案件を事例としてまとめて顧客の目に触れる場所に出す、あるいは事例集のようなパンフレットを作成して提案の折に添付するというのは、SIer側にとっては実力の証明になり、顧客側も案件をよりイメージし易くなるので両者にとって有益だ。

 今はSIerでいろんな事例を積極的に発表している会社は少ないが、営業力やマーケティング強化という面では今後もっと増えても良いと思う。

 そもそもまだ案件にすらなっていない提案前の企画段階のような場合、まずは他者に学ぶという意味でも先進事例や類似案件の検索から始めることは多い。だからこそSIerは自社の保有する実績を事例形式で、雑誌やホームページなどへどんどんと発表していていくべきだと思う。

 こうした事例を発表するときには、対象顧客の業種・規模、対象業務プロセス、システム構築時の狙いやポイント、工夫した点などをストーリー仕立てで纏めることになる。この時に纏めた事例のおのおのに流行のキーワードとか経営手法を付与しておくとさらに効果的だろう。具体的には「システム再構築」「RFP発行」「BPR」「見える化」「仮想化」「サーバ集約」「内部統制」などといったキーワードをタグ付けしておくのだ。
 こうしたキーワードをバズワードと呼び疎んじる人は多い。しかし現実にはシステムの企画や案件化段階のコンセプトにこうしたバズワードが出て、それを手がかりに検索エンジンなどでキーワード検索を行い先行事例や実績をもつSIerを押さえていこうとするユーザは案外多いのではないか。

 当然バズワードはどんどんと変遷していくので、事例に付与したキーワードも定期的に見直す必要がある。逆に考えると、新しい事例を常に増やさなくとも過去の実績のキーワードを最新のバズワードに差し換えるだけでもそれなりに効果があるように思える。

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