土曜日の日経朝刊の企業面に「ITコンサルタント増員 企業向け提案力強化」という記事が載っていた。

 記事の内容は、NTTデータや富士通といったSIer大手がIT戦略の提案やシステムの企画を行うコンサルタントを拡充するというもの。両者とも数百名規模で増員するとされる。NTTデータについては今年の4月に既に同様の報道でコンサルタントを1000名体制にするとされていたがその続報にあたる。

 SI業界に於いては、コンサルタントの増員というブームは周期的に唱えられる(私から見ると)不思議な経営手法である。景気が悪くなり顧客企業でのIT投資が伸び悩み売上が減りそうに時期になると必ずこのお題目がでてくる。
 前回のブームは、2000年から2001年頃のITバブル崩壊直後で、私の机の引き出しにしまってあった「コンサル強化記事スクラップブック」によると、当時も以下のようなニュースが流れていたことがわかる。

  •  2000/10/05 日本経済新聞朝刊 情報コンサル 日立が拡充
  •  2000/10/31 日経産業新聞 情報系大手、コンサル強化
  •  2001/01/15 日経産業新聞 アルゴ21 コンサル会社買収
  •  2001/04/05 日経産業新聞 CTC コンサル専門の組織
  •  2001/03/29 日経産業新聞 ISID 米コンサルとの資本提携

 景気が悪くなると、SI案件が減り受注が落ち込むので営業力を強化する必要がでてくる。この営業力強化には提案力が必要でその為に提案を行う役割のコンサルタントを増員するというのがこれらの背景にあるロジックらしい。ちなみに2000/10/31の記事で、2年後にITコンサル400名体制を予定とした日立はこれを達成しているが、当時に2003年度中に社内での認定制度の有資格者を1300名まで増やす計画とした富士通は、先日の記事によると8年経過した今でもコンサル人員は360人にしかなっていないようだ。

 そこで再度てこ入れするということなのだろう。ただ単純にコンサルタントを増員すると言ってもそう簡単ではない。提案力や企画力というのは、勉強や研修だけで身につくものではない。実際に顧客に接してその業界の背景や企業内の環境、過去の経緯などを肌で感じないと身につかないスキルだ。ちょっと前まで上流工程とはいえ前提条件や制約事項をびっちりと固めた上で設計をやっていたSEに、ある日突然提案作業を担当しろと言ってもそれは無理だ。発想力や課題整理力を求められるような案件を実際にいくつか経験させながら時間をかけて育成していくしかない。

 だがそもそも私はコンサルタントを増やせば提案力が上がるというこのロジック自体にも違和感を覚えることが多い。

 もしSIerが営業力を強化したいのであれば、個人的にはコンサルタントではなく営業バックス、俗に言う提案書(企画書)作成部隊を充実・増員した方が良いと考える。顧客が自分で気づいていないITによる改善ポイントや先行した他社事例の適用などを判りやすい提案書にまとめて説明をする人材やノウハウを揃えたほうが提案の質や量が向上すると思うのだ。

 もちろんシステムが肥大化・複雑化した昨今では、システム戦略やシステム企画を練るためには相当の体力とコストが必要となり、戦略立案や企画検討の為の現状調査・予備的検討・要件整理といった行程を別に切り出さざるをえなくなった。結果こうした行程を提供するコンサルティングサービス市場も拡大はしている。しかしこの行程はお金を貰った上で現状調査から課題整理そして課題解決と企画案立案を行うもので、SI案件の提案作業とは似ているが異なる。コンサルティングサービスでは時間と労力をかける分だけより沢山の仮説を網羅的に検討した提案ができるが、これに対してSI案件の提案は情報などが不足している分、相当の部分を決めうちして仮説を立てるしかない。

 単純にコンサルタントを増やしてシステム戦略やシステム企画での売上を増やそうとするとコンサルティングサービスの仕事が増える。しかしこの場合、最終顧客に提示される提案内容や企画案が従来より具体的かつ魅力的になるかは疑問だ。後者のようなコンサルティングサービスの提案書や企画書というものは、通常はSI案件の提案書以上に抽象的なものだ(これはコンサルティングサービスのアウトプットとして企画案が出てくるのだから当然なのだが)コンサルティングサービスばかりやっているコンサルタントには見えてない部分を決めうちして仮説を立てるというのを苦手とする人もいる。

 提案段階で顧客に訴求したいものが課題の整理手法や解決へのステップなどならともかく、最終的なシステムやソリューションなのにコンサルティングサービスの提案書を持って行くのはどうかと思うのだ。それならばソリューションや業種毎にある程度決めうちで具体的な提案書を経験豊富な営業バックスが作成する体制のほうが良いように思える。

 コンサルタントのあり方やコンサルティングサービスの理想型については私自身も未だひとつの筋の通った答えを見つけきれていない。記事にもあるようにコンサルタントの定義は各社バラバラなのできちんと整理して考えている会社もあるのかもしれないが、少なくとも有償のコンサルティングサービスと無償(?)で提供される営業時の提案活動を混同して考えるべきではないとは思っている。

===
 弊社(みずほ情報総研)のホームページに、ちょっと視点は異なるが似たようなテーマのコラムがあったので参考までにリンクを以下に貼っておく

yoi

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コメント
トラパパ 2008/09/10 12:56

こんにちは
ごぶさたしております
興味深く拝読させていただきました
私見ですが「コンサルタント」という言葉を(私からみれば)軽々しく使う人にそもそも違和感を覚えます
コンサルタントが営業支援・提案力強化をうたうのであれば、無償の営業コストを有償案件獲得後にリカバリする採算管理ができる能力が備わっていることが求められると思います。
でないと、営業コストが管理されず、営業活動の醍醐味に酔いしれて稼働率や利益率を低下させることになるからです。コンテンツは当然ですが財務管理ができない人はコンサルタントを名乗ってほしくないなあと感じています。
また、そもそも分割発注の推進が予想される中、最終的にSIがほしい場合に、その前段でコンサルティングフェーズを受注してしまうと、後続SI工程が受注できなくなるリスクもあります。そういう意味でも、SI企業各社はコンサルティング部隊を増強するリスクをきちんとお考えの上で経営していただきたいものです。
そうでないと、この縛りによって、本来能力や貢献度が高いSI企業が泣く泣く別会社にSIを任せ、結局ユーザ企業からみてSIが(相対的に)失敗に終わるリスクが増大すると危惧しております。
つらつら私見を述べて失礼しました。

Yoshikawa 2008/09/11 23:38

トラパパさん
 ご指摘の通りだと思います。
 「コンサルタント」には資格が必要ありませんから誰でも使えてしまうのも問題のひとつだと思うのです。
 
 まあそういうエセコンサルは時間とともに淘汰されていくものだとは思っていますが。


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