コミュニティにおける格付け制度の運営
昨日はてブの最近の人気エントリーに上がっていた「Yahoo!がまとめた「コミュニティにユーザーを参加させる方法」が興味深い件」は確かに面白い。コミュニティにおいて運営側が参加メンバー間の競争意欲を促進させるために、レベルだとかポイントだとかの何らかの格付けを提供することは良くあるし、実際に私もいくつかを使ったことがある。
格付けによって従来見えなかった本質が一面ではあるが可視化される。そして格付けされる側のモチベーションアップだけでなく、他の参加者から見たときにその人の発言の傾向だとか情報の重要度を把握しやすくなるというメリットがある。
さてこうしたレベルとかポイントを使う場合にも、やり方は2つある。一つは加算制とした誰でも時間と労力をかければ必ず最上位クラスまであがれる形式のもの。もう一つは相対的評価によってランクを区切って常に最上位のポジションにいる人たちの割合を一定にする方式である。
どちらも一長一短がある。
例えば加算制の場合は、基本は頑張れば頑張るほど上位にいけるので初期の段階での参加者のモチベーションは上がりやすいが、コミュニティを長く続けていくと、皆が最上位クラスに上がってしまい格付けのブランドが毀損してモチベーションが下がったりしまったり、後から参加した人は初期参加組とのあまりの差に意欲が沸かなかったりということが起きる。
端から見ていても、皆が最上位のラベルを使っているので結局どれが信頼のおける情報なのかとか誰が本当に優れたメンバーなのかが判断できなくなる。
相対評価でランクを区切った場合でも長く続けてくると、ランキングを上げる定石が固まってきたりして同じ事が起きる。常に努力することが求められる相対評価だと、ずっと上位をキープしていた優良ユーザが何かの拍子に下位に落ちると、急にモチベーションが下がってそのままフェードアウトしてしまった、なんて事も起きる。
他にも長く続けていると上位者のブランドが強くなりすぎてポイントの付与が本質ではなくブランドによって行われるようになったりもする。こうなると上位者は何をやっても高評価を得るのに対して底辺組はちょっとやそっとの工夫では評価されないという状況になる。
だからこういう格付け制度はある程度の期間を経過する都度に見直がされる。これはコミュニティに限らず資格制度なんかでも同じらしく、制度の見直
しによって「ゴールド」の上に「プラチナ」という上位格ができたり、それまでの「プラチナ」を一旦「ゴールド」に読み替えて新「プラチナ」を作るなんてこ
とが行われるわけだ。
相対評価の場合は、特別表彰だとか殿堂入りだとかいう施策がとられる。
運営がコントロールできる場でも格付けのコントロールは困難を極める。レベルだとかポイント制度は確かに有効だが長期に運営するのは相当の覚悟が必要だ。
さて話がちょっと脱線するが、こうした格付け制度をコミュニティの時間的経過に沿ってみていくと面白かったりする。
運営のいないコミュニティなどでは当然最初は公式格付けは無いが、コミュニティが大きくそして長くなると結局はユーザ同士で品定めというかブランド化が進んで暗黙のうちにクラスが分けられ、次第にラベルがつけられて格付けができていく。アルファ・ブロガーとかアルファブックマーカーとか神調教師とかいうのもその一種だろう。
こうした公式でないラベルというか格付けが登場した際に一番最初に皆からそう呼ばれる人は、ほぼ全員が認めるような人である。だからわりとすんなりと受け入れられる。そして次に皆がその最高の格付けを取得しようと努力を始める。格付け制度自体もコミュニティの中で中核となるメンバーのボランティアなどで明文化されたり、運営組織が出来たりする。
で、格付けが公式であろうが非公式であろうが、じきに不満の声が上がってくる。それは、どんなに努力しても上位の格付けがとれないという事情からだったり、後からその場に参加したけど、駆け上がるのに時間をかけたく無いという背景からだったりする。そうして一部から制度の改善提案が出されはじめる。例えば「誰でもアルファブロガーに成れるようにしよう」みたいなやつだ。こうした人達からの提案は大抵の場合は却下されるのだが、時々何かの手違いで受け入れられてしまうこともある。
私は過去に実体験したことがあるが、制度変更が行われた直後にそうした提案者の顔色や発言内容がどんどん変わっていくのを見ていて笑ってしまった。彼らは提案した制度変更が受け入れられて、自分が高格付けを手に入れると、その瞬間満面の笑みを浮かべしばらくはそれを目立つように見せびらかす。しかし少し時間が経過するとそれは辞めて、次なる不満を言い出す。
そう彼らが提案し他の皆に受け入れられる制度変更というのは、誰かを単独で上位格付けするのではなく、最上位の格付けの仕切りラインを以前の80点代から彼らのいる60点代のところまで下げるだけのことに過ぎないのだ。高格付けを得た後の彼らの不満は、以前は同じランクに自分と一緒にいた61点の仲間が(労せずして)高格付けを得た事に対する嫉妬だったりする。
こうなってもその後にさらに制度変更の提案が行われ議論されたりもするが、一旦毀損したブランドを取り戻すのは並たいていの事では難しい。こうなった格付けはその後は衰退し、じきに自然消滅していくことになる。
ちなみにもうひとつおもしろいことには、本当に実力があって皆から自然と最高位クラスで呼ばれるような人は、案外こういう格付けにこだわらないことが多いものだ。