つい先日日経BPの運営するITproで、3~5年も前の記事をそのまま掲載して視聴者から非難を浴びるという事件が起きた。(参考「そろそろ日経LinuxがDISられた理由について解説しておくか」「Perl 2008年のファイルオープン」)

 この記事は技術系の記事だったので、書かれた当時と現在では状況が変化しているため一部に現在では誤りとなりかねない内容が含まれていたために多数の人がそれを指摘しちょっとした騒ぎになった。
 実は、ITproがこうした過去の雑誌記事を最新記事に見せかけて掲載するのは、これだけではなく最近よく見られる行動である。私は何度かこれに釣られて過去記事にアクセスし、中には社内ソーシャルブックマークに登録して同僚に読むように促したこともある(例えばこの記事)。なお再掲載は元の執筆者が知らないうちに編集側で勝手にやっていることのようだ。
 正直、アクセス稼ぎとしか思えないこうした行為は見苦しいし、きちんとした企業が運営するニュースサイトとしてはあまり褒められた行為では無いので改善して欲しいものだ。

 誤解がないように補足しておくと、過去の雑誌の記事をWebに電子化して掲載することには賛成だしどんどんやって欲しい。紙媒体や特定の有料サイトにしか保管されず、再利用性が損なわれている有益な情報を電子化して、より捜しやすい形態で提供することは素晴らしいことだし業界への貢献も大きい。たとえ技術系の過去記事で内容が古くなったり、今は間違いだと言える内容でも過去の経緯だとかモノゴトの発展段階を知る上では有益なのでこうした記事をITproに載せていくことは今後もやって頂きたい。

 私達読者がここで改善して欲しいと言っているのは、過去記事の掲載時の紹介の仕方やオリジナル記事の作成日の表記方法である。古い記事の再掲載なのにさも新しい「特集」のように見せかけたり、記事の末尾にほんとうに小さく日付を入れるのではなく、目立つようにわかりやすいように表記をして欲しいと言っているだけである。

 それからITproではメールマガジンを発行しているが、このメールマガジンでも過去記事を最新記事のように見せかけて紹介するのも辞めて欲しい。過去記事でも新着には違いないからメールマガジンで紹介したいという気持ちはわかるが、それならば例えばCNET系で採用しているような、メルマガの末尾に「1年前の今日のニュース」のような区切りを設けて紹介してはどうか。

※この騒ぎの発端となった「Catalyst(前編)---Perl向けWebアプリ・フレームワーク」という記事については執筆者本人が編集部に掛け合ってくださった結果、大きく注意書きが記載されるように変更されているが、他の記事は未だに表記が小さいままである。

 さて上では、ITproの過去記事を使ったアクセス乞食的行為を例に上げたが、このところここITmediaでもアクセス稼ぎ偏重の傾向が見て取れて正直個人的には辟易としている。ニュースやエンタープライズ向けチャンネルに、よりアクセスを稼ぎやすいサブカルチャー系の内容のものが多く見られるようになったし、なかにはどこかのローカルな集会の中継のようなとてつもなく内輪向けの記事もあったりもする。
 そりゃたしかに企業の情報システム部門の所属者ってネットユーザの一部分だし、彼らの多くはネット系の最新技術ニュースには興味が無いから、より人口が多いオタク系に受ける記事を書いた方が人は集まるだろう。ローカルな集会だってニュースにすべき有意義な情報を多数扱うこともある。でも何か背後に、集会ネタを書けば少なくともそれに参加した人は読むだろうしブログなどで引用されて波及する効果もあって真面目にニュースの解説をするよりもアクセス数が計算しやすくて楽、みたいな姿勢が見えるのは、私だけだろうか。

 こちらも誤解されないように補足するが、こういう記事を書くなと言うわけではない。場所や量さえきちんとコントロールをすれば良いだけだ。具体的には「ねとらんチャンネル」とか別の場を作ってそこで集めるのはどうか。ITmediaはここオルタナティブ・ブログのようなゆるめの場だって持っているのだから、そういうネタは記者にブログとして書かせるとか。
 そもそも有名メディアの提供する真面目で信用できるニュースの中に、時々ジョークや萌え要素がさりげなく含まれるからこそ意外性があって面白いし楽しいのだと思う。サブカルチャーも扱える総合ITニュースサイトだからこそ存在意義が高いのであって、サブカルチャー中心で時々真面目なニュースも扱うというサイトなら、そこいらのアルファブログやNewsingなどのソーシャルニュースで充分ではないか。それとも もしかして、まなめはうすをはじめとする個人ニュースサイトの分野に進出してそれらに取って変わろうとでもいう戦略なのだろうか。

 こういうのは多分記事を書いている個別の記者とかライターの嗜好ではなく、組織での評価制度とかそういうものの影響だろうから、要はこの2つの IT系メディアのトップだとか経営層は、アクセス至上主義というかPV比例の広告売り上げをことさら重視しているということなのだろう。当然従来通りITジャーナリストの戦略をとる他のメディアもまだあるので今後を比較してみたいと思っている。

 ま、サブカル系の記事もオモシロイちゃあ面白いし、私もそれなりには楽しんでいるので文句を言える義理でもないのかもしれないが、少なくとも最近私が仕事上であてにするサイトが変化しつつあることも確かだ。
 最近の私の国内ニュースソースは、ニュースが早くて多いCNET、他に無い独自のニュースが良く載るIDG、解説記事が量もあって丁寧なマイコミジャーナルあたりにシフトしつつある。

yoi

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コメント
おおた 2008/06/23 11:02

 逆に、サブカルチャー中心で時々真面目なニュースも扱うというサイトだからこそ存在意義が高いのであって、サブカルチャーも扱える総合ITニュースサイトならマイコミジャーナルで充分ではないか、とも言えるんですよね(笑)。結局、オルタナティブブロガーにはモニターのようにITMedia内の記事の精読が義務付けられているのでもあるまいし、お嫌であればどうぞ他のサイトに「シフト」すればよろしいではないですか、ということで結論が出てしまうと思うんですよ。
 確かにアクセスを「稼ぐ」という行為に嫌悪感を持たれる気持ちもわからないでもないですが、どっかの雑誌みたいに違法情報を『悪用厳禁』と書いて垂れ流しているわけでもないですし、「あーあ、変わっちゃったね」ぐらいの気持ちで受け流してもいいんじゃないでしょうか。そもそも、どんなに素晴らしい硬派なサイトでもアクセスを「稼げ」ないと立ち行かないのが市場原理というものですので、あまり責める気になりませんね、私は。
 なお、無意識で使われたかもしれませんが、サブカルの意味合いに「ねとらん」という用語を安易に使うことに関しては、「一緒にするな!」と不愉快に思われる可能性もありますので注意された方がよろしいかと(私も正直いい気はしません)。そもそも、今はソフトバンクグループでも何でもない「他社の」商標を使えるはずがないでしょう。

垣内郁栄 2008/06/23 12:31

@IT編集部の垣内です。ご意見、ありがとうございます。@ITのタイトルについてですが、うその情報で読者を釣ろうと思ってタイトルを付けたことはないのですが、多くの読者に関心を持ってもらおうと思い、踏み込みすぎたタイトルになってしまうことはあります。この点はとても反省しています。

本文に自信があっても、平凡なタイトルではなかなか読んでもらえず、私もいつも悩んでいるのが実際です。また商業メディアとしてPVを無視できない現状では、PVを追求するのは当然かと思いますが、そろそろ別の道も探し出す時期なのかと思っています。

Yoshikawa 2008/06/24 01:04

>おおたさん
 やはりアイティメディアは、サブカルチャー中心で時々真面目なニュースも扱うというサイトを目指すという戦略なのですね。まあ、それもありだと思います。
 他の人の会社の戦略にとやかく言う筋合いも無いので、私としては本文でも書いたように、巡回の際の優先度を下げるという対応をするだけです。
 あと、チャンネル名については、初稿では違う名前だったのですがそれだと記事が特定できるので、あえてこう表現を変えています。このなまえがおおたさんに不愉快さを与えてしまったのであれば、謝罪いたします。
 

Yoshikawa 2008/06/24 01:36

垣内さん、コメントありがとうございます。
 えーと上手く言えないのですが、世の中金がないとなにもできないのは判っていますのでPVを追うこと自体は理解できます。
 そしてタイトルを工夫するというのもアリだと思います。本文が良い出来であればどんな過激なタイトルをつけても「がっかり」はしないと思います。要は読み終わったときにがっかりさせない内容であれば良くって、そうでなく中身もないのにタイトルだけでアクセスを稼ぐのは短期的には効果があっても長期的には「狼少年」で効果がないと思ってはいます(ただ、役員の任期は短期なのでそうなりがちなのも良く知っていますけどね)

垣内郁栄 2008/06/24 11:48

>そうでなく中身もないのにタイトルだけでアクセスを稼ぐのは短期的には効果があっても長期的には「狼少年」で効果がないと思ってはいます

@IT垣内です。まさしくそう思います。内容もタイトルも充実させて、酷いといわれないようにがんばります。読者の満足度向上が一番かと。


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みずほ情報総研勤務。情報共有や情報活用を主テーマにコンサルティングや新ビジネスモデルの開発に携わっている。

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