ソーシャル時代の新しい人間関係モデル
先日Googleが「Friend Connect」を発表した。『すべてのWebサイトにソーシャル機能を 』というふれ込みのようだ。同時期にFacebookが「Facebook Connect」を、MySpaceも「Data Availability」を発表したので、これらのプラットフォームを使って一気にインターネット上のソーシャル化の流れが加速してインターネットは全てソーシャルになるようことを言っている人もいる。
今のところ実際にこの仕組みや技術を実装したサービスは少なく、私もサービスを使ってみたわけではなく記事などを読んでいるだけで、詳細まで突っ込んでいるわけでもないのだが、直感的感覚だとなんとなくこうしたプラットフォームが整備されたからといって、突然インターネット上のサービスが全てソーシャル化するかというと、そうでも無いような気がする。
というのもSNSをはじめとする今のインターネット上のソーシャル系サービスでの人間関係のモデルはあまりにも簡略化されすぎだと思うからだ。「家族」「友人」「友人の友人」という区分は確かに直感的で判りやすいが、SNS上だけで交流していた一昔前ならいざしらず、仕事も趣味もオン・オフ限らずネットワーク上でほとんどを管理&処理していくにはこの区分だけではちょっとずさんすぎる。
例えば仕事の上の知人には自社の同僚も取引先の関係者も含まれるが、当然この両者に見せたい自分の顔は異なる。仕事以外の趣味の分野になるともっとそうだ。5時からは別の仮面(ペルソナ)で活動したいという人もいるし、はたまた人によっては土日に所属するコミュニティでは会社と全く違った役割を果たしつつ、それを適当な繋がりとして仕事に活かしている場合もある。
同じ「友人」でも、自分のどの(興味)分野での友人なのかという“人間関係の種類”だとか本当に全情報を公開して構わないパートナーなのかそれとも単なる知り合いなのという“人間関係の深さ”など、従来のモデルは、何らかの拡張をされるべきだろう。
私個人でも自分のブログやホームページにソーシャル機能を実装するにしても、逆に会社や家でブラウザにパーソナル情報機能を実装するにしても、今の人間関係モ デルのままではちょっと使いづらいし、正直導入には躊躇してしまう。時代は替わって、既にネット人格は一パターンに収まらなくなったし、沢山のネット人格を IDなどで切り替えるのは煩多だし、そもそも元は1人なのだから切り替えるというよりは、滲み出るとか複合するというように使いたいのにそうではないからだ。
簡単に人間関係モデルなんて呼んだが実際には非常に難しいモデルであることは認める。そもそも人は複数のペルソナも持ち本能的にそれをTPOにあわせて切り替えているし、他人との関係も時間と共に変化して行く。実態に合わせようと精緻にモデル化すると今度は管理面でのコストが無視できなりそうだ。一時期話題になったソーシャルマップを描くなんて研究はその後どうなっているのだろうか、あのあたりの研究成果が反映されると良いとは思うのだけど・・・
まぁこのへんは、モデルの設計と構築拡張が先か使いながらモデルを修正するかという卵と鶏の議論だし、彼らも当然気がついていると思う。早晩何らかの対応や変化が起きると思うので、しばらくはそれを楽しみに待ちたい。
しかしインターネットのほうはこれほどまでにソーシャル化の流れが急激に進んでいるのに、エンタープライズ分野では3年前と何にも変っていないと言っても良いという状況だ。IT分野における産消逆転現象の差は広がるばかりだ。ニセ・ジョブズの中の人が不安に駆られるのも無理からぬことと思う。