足跡機能への抵抗感増大はSNSでの新たなイノベーションの兆し
ITmediaニュースで興味深い調査結果が発表されていた。『SNSの足跡機能、「監視されているようで嫌」が半数』というもので、定期的にこの分野のリサーチを出しているネクストの「地域コミュニティサイトLococomが調べ」のデータを元にしたものだ。
このニュースのタイトルにもなっている足跡機能への抵抗感の数字が高いのが私には意外だった。そもそもSNSというものが登場したときには、従来のホームページやBlogよりもより深いコミュニケーションが行えることがウリでその仕掛けのひとつとして誰が日記を読んだかがわかる足跡機能が重宝されていたはずだ。反応が薄くコメントやトラックバックもあまり貰えない、砂漠に水を巻くようなホームページやBlogに愛想を尽かした人がSNSへ流入してブームになったと記憶している。
時間が経ち、SNSが一般的になって、ネット上で最初に使ったコミュニケーションツールがSNSという世代も増えてきたのだろう。もしかするとこうした世代には足跡機能は余計に感じるのかもしれない。
あるいは、本音を書きにくいと言われるホームページやBlogよりもSNSを情報収集源として重視し、Web巡回的にSNSを巡回して情報収集する層が出てきて、足跡機能を邪魔に思っているのかもしれない。この設問の他の「コミュニティサイトは内輪で盛り上がるためのものだ」という質問には否定的な回答が多く、別の設問でSNSやコミュニティサイトは、
「自分の趣味や関心ごとについて、更に深い知識を得られる場」「新しい趣味や関心ごとを見つけられる場」という意見が多いことを考えると、こうした足跡を気にせず
に気楽にSNS内を巡回して広く情報収集をしたいという層が増えている可能性もある。
しかし、同じ設問で「日記は友人のみ公開、もしくは部分的に公開に限定」という質問への回答も同じくらいの数字である。もしこちらの質問への回答との相関が高ければ、そもそも最初からSNSは親しい友人との情報交換に限定して活用しているという層が、自分の日記への足跡を気にしなくなってこういう意見を回答している可能性もある。
ネットワークへの参加の時期なのか、情報収集源としての活用法なのか、あるいはクローズドコミュニティ特化層の影響名なのか、どの仮説が正しいかは設問間の相関を見ないと判らないが、残念ながら公表されているデータにはこれが含まれていないので私には検証することはできない。
ホームページよりも簡便に書けて表現がシンプルなところが使いやすいとして登場したBlogが時間の経過と共に、よりビジュアルに凝った表現をしたがる層の要請によって様々なブログパーツや拡張機能を実装していったように、サービスも時間と共に成熟し一定の成熟レベルに達し、そして次のイノベーションへと進むのだろう。初期段階ではウリであった機能へのユーザ要求の変化はまさに、古いS字カーブから新しいS字カーブへの移行過渡期を表す者かも知れない。
(S字型のイノベーションライフサイクルの図:出所はWikipedia)
今回のようなアンケート結果を元に今後SNSサービスの提供側が足跡機能をどうしていくかについては、こうしたイノベーションのジレンマ的視点で見ると興味深いのではないだろうか。