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ブログやSNSは利用率でなく認知度で評価すべき

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 イントラブログや社内SNSを始めとする組織内のコミュニケーション支援の為のナレッジマネジメントツールを扱っていると時たま腑に落ちないことに出くわす。それはツールの利用率が100%で無いことが事務局や運営側の大問題になるのだ。

 実はツールの利用率を100%にすることは案外たやすい。ポータルなどの情報集約/配信ツールの場合に良く使われる手法を応用する形式で、出退勤のタイムカード打刻や業務用の伝票処理など毎日使わざるを得ないシステムはそこからしか処理できなくすれば良い。また、もしコミュニケーションツール自体の利用率を上げたいのであれば、営業日報や業務週報などをBlogやSNSで記述することを義務化すれば利用率は上がる。

 ただここでちょっと考えて欲しい。そうして全員が使えば効果がより上がるのだろうか?6割程度の人間で使っているのに対して全員が使っているほうが良いという根拠は何か?えてしてツールの利用率を100%に近づける議論をしている場合には、この視点が抜け落ちてしまうものだ。
 ちょっと酷な言い方なのだが、例えばアイデアを発想したいという目的の時にもともと問題意識が低い人をどんなに大勢参加させても余り意味は無い。それにこうしたコミュニケーションツールはもともと対面/対話によるコミュニケーションの支援の為のツールなのだから、対面/対話によるコミュニケーションが十分に取れていて問題が発生していない人に取っては、わざわざ使うコストと得られる追加の効果が逆転するケースだってある。

 もちろん利用率に注目しないといけない段階もある。ツールの認知や普及が進んでおらず累計での参加率が10%とか20%に留まっているような段階である。またコミュニティーにおける最低限のコミュニーションを維持するために一定数の人数は必要だ。参加者が一ケタ台だとコミュニティ自体がマンネリ化して存続できない。でも参加者が半数を超えてなお100%にすることを目的にすることは意味がないと思う。上に挙げたような利用の義務化は、結局実の入っていない使い方を招き、最終的にはわざわざ使っているのに利用効果が実感できないという不満を呼ぶ恐れがある。日報を全員が書くことが最終目的なのか?違うはずだ。書いた日報から何かを見つけたり対処したりすることが、最初の目的だったはずだ。ならば対処する必要が無い人や対処しても仕方の無い人にまで日報を書かせる必要はないはずだ。

 大金(?)を投資したツールなので全員が使わないとおかしいという意見もある。でも私はそもそも今の日本の大企業ではメールの利用率だって100%ではないと思っている。メールは読むだけで返信や発信は直接か電話で済ませるという年配者はまだまだ多い。通達や連絡の掲載された掲示板だって見ない人は案外多い。それにアイデアを交換したりいろんなことに気づくのであれば、まずは経済紙や業界紙に掲載される業界や市場、競合他社や顧客企業の動きといったニュースをきちんと読むことから始めたほうが効果的だと思う。新聞やニュースの購読率が低いのにイントラブログや社内SNSの利用率だけを100%にして何に気づくのだろう?

 事務局や運営側へのアドバイスとして、イントラブログや社内SNSの認知率(存在を知っている)は100%に近づけれる努力をすべきであるが、利用率を100%にする努力をするくらいなら他のことをやったほうが良いといいたい。ナレッジマネジメントツールを使いたい時や場面は人によってまったく異なる。だから使いたいときに使える状態にあれば良いと思うのだ。

 8月4日のNHKの朝の番組「おはよう日本」で社内SNSの紹介がされていた。番組の最後では、利用率が100%で無い事が課題だと伝えられた。しかし番組に出ていた先進導入企業の事務局担当者はあくまで「まずは1度入ってもらって知ってもらって、」という表現をしていた。微妙にニュアンスが違うので注意してみてみると良いと思う。 

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