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エンタープライズコラボレーションの今と今後を鋭く分析

多くのIT専門家は本質的には不要なポジションにいる

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 先々週ITproの『真髄を語る』に「IT専門家は毎年一割減る」という刺激的なタイトルの記事が掲載された。中身をよく読むとタイトルとはちょっと違って、ITに詳しい人材が企業内の事業部門へ異動してビジネスもITも両方をこなす人材になっていくことで専業部隊やIT部門へ費やすコストが毎年減っていくという予測を述べたものであった。
 この記事の言いたいことや予測していることはわかる。ユーザが直接システムの要件定義や調達や導入手配をするようになれば、たぶんユーザ企業側のIT専門家は不要になると私も思う。ただそれが直ぐに完全に実現されるかというとちょっと疑問だ。ちなみにこの記事ではユーザ企業側のIT専門家の話をしており、ベンダー側のIT専門家については何も述べていない。しかしこの考え方をとるならばベンダー側のIT専門家についても製品や技術に特化した人間だけで業務アプリケーションのIT専門家は不要だといえそうだ。
 ユーザが要件を決めてシステムの調達まで行い、そのニーズに合わせてベンダーのIT製品の技術者がソリューションを提供するという単純な2つの役割だけでシステムを構築するというのは確かに理想形だと思う。その昔システムが企業に初めて導入された頃はまさにこういった分担で作業が行われていたのではないだろうか。ところがその後、製品担当のSEだけではユーザニーズが汲み切れないということでベンダー側に業務アプリケーション担当や業種別のSE部隊が設置され、逆にユーザ企業側には業務をITという視点から見るための情報システム部門が作られたのではなかったか。そして最近は、さらにその間に要求を要件に落とすためのITコンサルタントだとか、IT製品のより効率的な使い方をアドバイスするITアーキテクトといった新しいコンサルタント的職種の必要性が唱えられている。

 そもそも業務用システムを構築するときの理想形はなんだろうか。ユーザが自分でシステムを作る事こそが理想形ではないのか。そしてその理想形が現実的に上手くいかない時にその都度その隙間として安易に新しい職種を作って凌いできたのがこれまでの経緯だ。
 
 さて実は同時期に同じITProの『記者の眼』のほうにも「情報システム部員は“外回り系”職種です」という記事が掲載され、ここでも「仕事の問題を解決しようと言うとき、自分で問題を理解できない人に解決ができるの?」という意見とともに、将来は一種職業軍人のような専業SEは不要になるという意見を紹介している。こちらの意見については、私は全面的に同意する。
 なぜなら上に説明したように、ユーザ企業の情報システム部門もベンダーの業種別SEも私のようなITコンサルタントも本来的には理想形にはなかった後から生まれた冗長な役割だからだ。ここで冗長な役割と書いたが、表現を変えるなら私を含めた多くのIT専門家は結局ユーザと最終技術者の間の隙間(ニッチ)という立場にしか過ぎないといえる。そして隙間的ポジションが安定したものではありえない。またそもそも両極に明確な役割があってそれをつなぐために生まれたポジションであるのだから、当然そのポジションで待っているのではなく積極的に連携すべき両者に働きかけない限りその役目は果たせないはずだ。

 IT専門家は不要になるという予言は、短期的には外れると思うが超長期的には当たると思うのだ。我々IT専門家は今のポジションは所詮ニッチであり将来は不要になる可能性が高いということをきちんと自覚して、ユーザや自分の属する組織に何を付加価値として提供していくのかを良く考える必要がある。

===== 2007/11/30 AM ZDNetにも関連記事が掲載されたのでリンクを追記

米ガートナー:「IT専門家の雇用は5年間で4割減少へ」

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