オルタナティブ・ブログ > ナレッジ!?情報共有・・・永遠の課題への挑戦 >

エンタープライズコラボレーションの今と今後を鋭く分析

企業情報ポータル市場が爆発しなかったわけは?

»

 一昨日、昨日と続けて日本IBM主催の「LotusDAY2006東京」に参加してきた。残念ながら別件があって初日の澤田事業部長の基調講演は聞き逃したが、それでもお目当ての大塚商会の丸山シニアコンサルタントとIBMの森ロータス営業部長の講演を聞くことはできた。特に丸山さんのお話には相変わらず経験に裏づけされたNotesと他のツールとの比較がふんだんに盛り込まれており参考になった。

 さて2日目の基調講演を聞きその後Web等でざっと調べたが、残念ながら今年はWebSphere Portalの新版とLinux対応版のNotesくらいが目玉で他にはあまり新しい話は無かったようだ。 ただそんな中でちょっとだけ気になったのは、ITMediaの記事のこのくだり

 「われわれはポータルミドルウェア市場においてトップシェアだが、国内のEIP市場全体の伸びは思ったほど“爆発”していない。グループウェアの延長として使われているインフォメーションポータルではなく、SAPやNotes/Domino、RDBと連携するトランザクションポータルとして、業務プロセスの中で使うことを企業に提案したい」

 確かにおっしゃるとおりである。企業情報ポータルの初期の普及段階で業界の一部で「単なるリンク集」や「グループウェアのWeb化」のみのシステムをポータルという名前で売り込んだ結果「あまり役に立たないポータル」が構築され、それが結果的に「企業情報ポータルは導入効果がない」という誤解を生んでしまっている。
 澤田本部長が述べているようにビジネスプロセスで使われる重要なコンテンツを組み込んでいないポータルは役に立たないし利用も進まない。しかしながらこの「企業情報ポータル市場が爆発しなかった」責任の一旦は日本IBM自身にもあるのではないだろうか?私はここ数年企業情報ポータル関連プロジェクトに直接間接を問わず携わってきたが、残念ながら日本IBMからWebSphere Portalを使った業務プロセスまで踏み込んだポータルの構築事例をほとんど見ていない(このご時勢であるので事例の発表にはいろいろ問題があるにしてもだ)。これには、初期のWebSphere Portalではパフォーマンスや品質の面で問題の為にあまり凝ったコンテンツをサポートできなかったという理由や戦略上WebSphere Portalのバックでコンテンツストレージを担うのはNotes/Dominoであるために結果的にポータルに掲載するコンテンツがグループウェア系に偏るという背景も影響したのであろう。そのうえNotes/Dominoとの親和性が思ったほど高くないのもポータルの失望を生むことにつながった。
 若干穿った見方かもしれないが、この結果として現時点では国内で「良くできた役に立つポータル」の構築事例はPlumtree(現在はBEAに買収)のほうが数的にも内容的にも上位となっている。残念ながら買収の余波でここ一年ほどはこちらも動きが止まったので差は縮まってきているが。
 そしてちょうど海の向こうから『ビジネスとITのギャップを埋めるBEAの「超ポータル」戦略』というニュースが飛び込んできた。ここで元PlumtreeのJay Simonsが言っていることもまったく同じ内容だ。別にSOAなどという新しいキーワードを出すまでも無く、役に立つポータルを作る秘訣はキラーコンテンツの掲載とビジネスプロセスの組み込みにある。国内ポータルトップシェアであるIBM(あるいはIBCSか?)の提案力と実行力の充実に期待するとともに、我々からも改めて役に立ち、使える企業情報ポータルとはどんなものであるかをきちんと説明していきたい。

Comment(0)