3階層ワークプレイスモデル
最近のエンタープライズサーチの盛り上がりにあわせて企業情報ポータルも再度注目されているようだ。先日企業内での「さがす」行為には「捜す」と「探す」の2種類があるということを紹介したが、たしかにこの「捜す」場合の解決策には企業情報ポータルやECM(Enterprise Content Management)のようなツールのほうが適しているのかもしれない。
そういった流れのなかで最近の企業情報ポータル構築時の手法のひとつを紹介する。最近企業情報ポータルをワークプレイスと呼ぶことがあるが、これは企業情報ポータルの構築の目的に「そこだけですべての業務が出来るようにする」ということが掲げられることを所以としている。私見を言うと単なるワークプレイスと呼ぶと日本テレコムなどが取り組んでいる「フリーアドレス制」などと混同されるので、私個人としては、企業情報ポータルはデジタルワークプレイスという呼んだほうがよいと思うのだが、それはまあここではおいておく。
このワークプレイスとしてのポータルを構築する際に、社員のワークスタイル分析を元に仕事上取り扱う情報や作業の内容をいくつかに分類してそれぞれに適したワークプレイス(ポータル)を構築するという考え方である。以下にワークプレイス(ポータル)を3階層に分けて順に紹介する。
ひとつめは「コーポレート・インフォメーション・ポータル」、これは名前のとおり全社的に共有すべき情報への入り口となるワークプレイスである。全社通達や連絡事項、人事システムや経理システムといった社内の共通的システムへの入り口などをここに統合する。その他のコンテンツとしてはニュースや新聞記事、対外的ホームページの更新情報などが掲載されることが多い。グループ経営に取り組む企業の場合などはここからグループ各社ホームページのコンテンツのサマリーとその更新状況の表示も有効だ。
大会社の場合は、コーポレート・インフォメーション・ポータルとしての全社ポータルを階層化して配下に部門別または地域別のポータルを複数構築することもある。
次が「パーソナル・ワークプレイス・ポータル」これはこれまで、メールやスケジューラといったグループウェアが担ってきた機能で昔風に言うとPIMの機能を統合したワークプレイスである。自分に届いたメールやその日のスケジュールなどをここで確認する。各個人が日常的に利用する作業リスト・業務遂行用のアプリケーションの起動ボタンなども配置される。
最後に最近注目されているのが「グループ・コラボレーション・ポータル」である。これは企業内の様々な組織にあわせて、そこに属する人の間で情報共有を行なうためのワークプレイスである。企業内の組織での情報共有は従来会議で行なわれてきたが、大胆にいえばこれを代替することを目標としている。ここには同じ目的を有する社員や同じ業務を担当する社員間での、連絡、スケジュール、作業リスト、ディスカッション、文書共有の支援機能が実装される。企業の中には沢山の組織が存在し各個人は複数の組織をまたがって活動することからこの「グループ・コラボレーション・ポータル」は企業内に複数構築される必要がある。
さて実はここが肝心なことなのだが、現時点でこの3つのワークプレイス(ポータル)を全て1つの製品で解決できるものはない。BEAのAquaLogicPortalServerやIBMのWebspherePortalServerは一番上の「コーポレート・インフォメーション・ポータル」のための実現ツールであるし、ガルーンやINSUITEなどは「パーソナル・ワークプレイス・ポータル」の色彩が濃い。SharePointはワークグループでの情報共有を目指していることから「グループ・コラボレーション・ポータル」だといえる。
ちなみに、パーソナル分野については、非常に判りやすいユーザインターフェースを武器にしたマイクロソフトが圧倒的に強いし、コーポレート分野になると伝統的にIBMやBEAの実績が多い。現時点では双方が上流と下流から攻め込んで中央でがっぷりよつというような状態であろう。