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グローバル化する中で日本人はどのようにサバイバルすればよいのか。子ども×ICT教育×発達心理をキーワードに考えます。

教員のための仕事効率化 -データの取り扱い―( 2021アップデート版 )

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-今回から「2021アップデート版」をシリーズ公開します。これは20197月~20202月にシリーズ公開した「教員のための仕事効率化」を同じテーマで、再インタビューするものです。

ちょうど学校で一斉休校になる直前までの連載と今を比較することで見えてくるものがあるのではないでしょうか。まず第1回は「データの取り扱い(ファイルの分類)の工夫」について再度お聴きしたいと思います。

【望月陽一郎先生・略歴】

大分県立芸術文化短期大学非常勤講師。Forbes Japan電子版オフィシャルコラムニスト。公立中学校理科教諭(理科)・大分県教育センター指導主事(情報教育)・大分県主幹等を経験されています。自作の「micro:bit『サンプルプログラミング集』2.0版」が、2019年第35回学習デジタル教材コンクールにて「学情研賞」を受賞されました。

望月陽一郎 個人サイト:http://mochizuki.net

「データファイルの管理」で気をつけていること

-学校の先生方は教科の授業だけでなく部活動の顧問をしたり教務も行ったり、非常にご多忙ではないかと思います。特に一斉休校から感染対策をしながら学校再開を経てきた中で「教員のための仕事効率化」というテーマで仕事の効率化・時短術について再度お伺いしたいのですが、よろしいでしょうか?

望月先生:学校で扱うデータについてまず話したいと思います。学校ではいろいろなデータファイル(デジタルデータ)を扱っています。

 ・「学校全体」で扱うデータファイル

  ・・・A教育課程に関するもの・学校行事に関するもの・対外的なもの

  ・・・B子供たちの個人情報に関するもの(指導要録、通知表、調査書など)

 ・「学級単位」で扱うデータファイル

  ・・・A学級事務に関するもの・学級通信など

  ・・・B学級の子供たちの個人情報に関するもの(名簿など)

 ・「教科単位」で扱うデータファイル

  ・・・A教科の授業に関するもの

  ・・・B教科に関する、子供たちの個人情報に関するもの(成績など)

望月先生:Bの個人情報に関するものは特にセキュリティを高める必要があるファイルになると思います。こうしたデータは最近標準化する動きがあるので、学校でも注目されていますね。

「文部科学省 教育データ標準」
https://www.mext.go.jp/a_menu/other/data_00001.htm

望月先生:また、「Aのデータファイルは毎年同じ時期に扱うことが多いもの」です。

そのため、効率よくAのデータファイルをうまく管理するだけで、かなりの時短をすることができるはずです。

-そのあたりを先生方はうまくできているのでしょうか。「オンラインやテレワークが日常的」になってきた最近では教育現場でもクラウド活用が始まっているのではないかと思います。そうするとよりデータ管理方法が重要になってきますね。

望月先生:校務PCが普及したのはもうずいぶん前になるかと思いますが、クラウド活用については都道府県・自治体間で差があるようです。

これだけオンラインやテレワークが普及してきても「クラウド禁止」という自治体はあるようです。私は学校に勤めていた頃も公的なGoogleドライブや校内の共有ドライブを使っていましたので、大分県は進んでいたほうだと思います。もっと学校でのクラウド活用が進むとよいですね。

望月先生:私がしていた校内の共有ドライブ内に保存するAのデータファイル(誰でも見ることができる)については、「保存ルール」を決めていました。

〇データファイルに関する保存ルール

  • データファイルは個人の端末に保存せず、校内の共有ドライブに保存する。
  • 「〇年△月」というフォルダを作りその月に関するデータファイルはその中に保存する。

というものです。

4月に扱うデータファイルをまとめたフォルダ

5月に扱う・・・

としておくと、翌年はそのフォルダを参照すればその時期に扱う予定の「元データ」があることになります。

-たとえば、20204月に作成したファイルは「202004」「202005」もしくは「20204月」「20205月」などのフォルダ名にして、いつ使うのかがフォルダ名でわかるということですね。ちょっとしたコツですがこのような工夫も大切ですね。

-「データファイルは個人の端末に保存せず、校内の共有ドライブに入れる」とのことですが、USBメモリを利用する先生方がまだ多いという話を聞きます。USBメモリ自体はとても便利ですがセキュリティの問題がありそう(落としたり盗まれたり)なので、どうなのかなといつも感じています。

望月先生:私は自宅でも端末にほとんどデータを保存していません。

しない理由は、

  • 端末が故障してもその中にデータがないため、端末だけ交換すればよい。
  • 複数の端末(PCやタブレットなど)でアクセスするため。

いまやPCは「作業をする端末」扱いなんですよね。

望月先生:また仕事上ではセキュリティを高め個人情報管理することはとても大切です。

おっしゃるとおり、USBメモリにデータを保存する先生がいると聞きますが、とても危険ですから今は禁止されている自治体が多いと思います。

USBメモリは突然開けなくなることがあります。私も経験したことがありますので、USBメモリはデータの持ち運び用として小容量のものを使うくらいですね。

-なるほど、確かにそういう使い方がよいように思います。

データを整理するメリット

-データを整理すると、どのようなメリットがあるでしょうか。

望月先生:述べたように、学校で扱うデータにはセキュリティを高くしておかなければならない「子供たちの個人情報に関するデータファイル」があります。これを守ることは最優先事項です。特定の場所(共有ドライブの指定された領域)に置いておくことで他のファイルとの差別化を図ることができます。

また、今回話した「年月フォルダによる分類」はTodoリストにも似て、いつどんなデータファイルを扱う必要があるかすぐにわかります。学校で扱うデータは毎年少しずつ作り変えるものがほとんどのため、前担当の先生がそういった分類をしておくとそのまま引き継いでいくことが可能で効率的なのです。

「担当の先生が異動して、前の年のデータがどこにあるかわからない」といったことは学校でよく聞くトラブルのひとつです。

-担当の先生がよその学校に異動してしまってそういうことが起こるというのは、教育現場でよくありそうですね。そのような場合に備えておくのもリスクマネジメントですよね。

作業時間の短縮について

-そのほかにちょっとした時短術があれば教えてください。

望月先生:短大の実習などでもよく話しますが、

  • 細かな作業時間の短縮が、トータルでは相当な時短につながる。

のです。

私が「かな入力」を使っているのも、時短の工夫のひとつです。同じ入力速度(習熟度)であれば、ローマ字入力よりかな入力の方が速く仕事が終わります。また、ショートカットキー(コピー・ペーストなど)を使うことでマウスに手を操作する時間をさらに短縮することが可能です。

そうやって少しずつ作業にかかる時間を短縮していくと、年間そしてキャリア全体では相当な時間差が出てくるのは当たり前ですよね。

小学校で子供たちはキーボード入力を習いますが、「ローマ字入力以外は教えない」先生がいるという話を聞くことがあり、子供たちの将来まで考えて複数の入力方法を教え選択肢を増やしてほしいものだと思っています。

-たしかに「ローマ字入力」と「かな入力」では、ひらがな一文字を入力する際に押すキーの数が倍近く違いますから格段に時短できますね。プロのキーパンチャーは「かな入力」で入力をしているといいますし、日々の入力作業だけでも「かな入力」で行えば1.52倍近くの時短になりそうです。

私は「ローマ字入力」しかできませんが、「細かな作業時間の短縮は、トータルでは相当な時短につながる」は耳が痛いです。タイピングソフトで練習する価値がありそうです。今回もお話をありがとうございました。

>>「教員のための仕事効率化 -授業編-( 2021アップデート版 )」に続く(2021年2月公開予定)

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