グローバル化する中で日本人はどのようにサバイバルすればよいのか。子ども×ICT教育×発達心理をキーワードに考えます。

リフレクションシートから見る「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」の視点

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望月陽一郎 先生(中学校教諭)に取材している「アクティブ・ラーニング(子供たちが学びに向かう姿)の視点からの授業改善」シリーズは、昨年(2016年度)の人気記事アクセスランキングでTOP10に2記事、TOP25に6記事ランクインするほど好評をいただきました。

参考:
【2016年の棚卸しをかねて】教育ICT研究室でもっとも人気だった記事は? アクセスランキングTOP25
http://blogs.itmedia.co.jp/kataoka/2017/01/2016_top25.html

今回は望月先生が授業で行っている「リフレクションシート」から見た授業の工夫を中心にお聞きしました。

【望月陽一郎 先生・略歴】
大分市 中学校教諭(理科担当)。大分県教育センタ- 情報教育推進担当主事、指導主事、大分県主幹等を経て、現職。
https://www.facebook.com/yoichiro.mochizuki/about を参照。

「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」とは

‐新年最初のインタビューとなりました。まず昨年のふり返りとして、これからの授業改善のキーワードとなっている「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」について、先生の現段階でのとらえ方を教えていただけますか。

望月先生:文部科学省の資料にあるタイトルなどから、「アクティブ・ラーニング」という言葉に代わり「主体的・対話的で深い学び」がメインになっています。(アクティブ・ラーニング)となっていますね。

【参考】中央教育審議会(第109回) 配付資料をご覧ください。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/gijiroku/1380836.htm

‐なるほど。確かに資料のタイトルを読んでも「アクティブ・ラーニング」という言葉がメインではなくなっていますね。

望月先生:これは、大学などでいう「アクティブ・ラーニング」という手法と、授業改善に向けた「アクティブ・ラーニングの視点」。別のものをさしていると思う2つの混同を避けるためだと思います。

  • 「アクティブ・ラーニング」・・・手法、やり方
  • 「アクティブ・ラーニングの視点」・・・子供たちが学びに向かっているか、学習者側からの視点

これを新しい言葉で置き換えると、

  • 「アクティブ・ラーニング」・・・手法、やり方
  • 「主体的・対話的で深い学び」の視点・・・子供たちが学びに向かっているか、学習者側からの視点

こうしてみると整理できますから、「アクティブ・ラーニング」という手法で、「主体的・対話的で深い学び」を促す、という説明もできますね。

言葉にこだわっているように見えるかもしれませんが、

  • 新しいことに取り組む(実践する)
  • みんなに広げる(啓発する)

このふたつは実は段階が違うことを意識しなければなりません。啓発するには、より一般化してわかりやすい言葉に置き換えていくことが必要なのです。

‐「新しいことに取り組む」(実践)と「みんなに広げる」(啓発もしくは広報)の段階が違うという点に着目されたのは何故ですか?

望月先生:自分だけが実践するのであれば、他の先生にはできない・合わなくてもよいのです。それは「すごい」と言われることでしょう。

一般の先生方に広げていくためには、他の先生が使いやすい・取り入れやすいものに「一般化」「汎用化」しておかなければなりません。これを勘違いしていると、「あの先生はすごい」「あの先生だからできる」に終わってしまいますね。

‐そうだったのですね。授業を完全にマニュアル化することは不可能だと思いますが、先生がおっしゃるように使いやすい・取り入れやすいものに「一般化」「汎用化」する必要は確かに感じます。「取り入れやすく」「自分たちで実施できる」というのはとても大切だと思います。

そして「一般化」「汎用化」したものが、「子どもたちにとって本当に役立つものか」をよく検討する必要があると思います。望月先生が過去のインタビューで強調されてきた「授業でのリフレクション」がかなり重要なのかなと。

子供たちのリフレクション(子供たち自身の振り返り・授業を評価)からわかったこと

望月先生:その授業で何をつかんだか、その授業が自分のためになったか、判断するのは、先生側ではなく、子供たち。リフレクションをせずにまだまだ手法を集める段階でとどまっている先生も多いかもしれません。

毎時間リフレクションシートを書いてもらっていますが、2学期の理科授業のリフレクションもテーマごとに書いてもらいました。(びっくりと文章が書かれています)

①小テスト(毎時間最初に行う前時間の振り返り)について 多い順

  • 語句が覚えられ、よい復習になった。
  • 自分が間違えたところが苦手だとわかった。
  • 全部○だと次もがんばろうと思う。
  • テスト前の情報交換の時間に友だちと教えあえてよい。
  • 定期テストにも同じような問題が出てよかった。

これらの文章から、子供たちが小テストに対してどう取り組んでいるかが見えてきますよね。

②実験・観察について 多い順

  • グループ内で楽しく、考えながらできた。
  • しっかり安全に気をつけてできた。
  • いろいろなオリジナルの機器で、実験のしくみがよくわかった。
  • 実験前の説明がテレビで大きく映されわかりやすかった。
  • 準備片付けをきちんとしてくれるので実験に集中できた。ありがとうございます。

時間を効率化できるところ(説明をテレビで提示、実験器具をパッケージしておく)を工夫して本来の目的(実験で確かめるなど)に集中し安全を意識してできたようです。

③リフレクション(毎時間最後の授業振り返り・感想(評価)・質問)について 多い順

  • 自分がその授業で何がよくて何がよくなかったか意識するようになった。
  • 理科の質問をするとシートに答えてくれて、とても参考になった。
  • 一言の返事を読むのが楽しみです。
  • ルーブリック(自分がどの段階であったか)の判定ができるようになった。
  • シートを入れたファイル(ポートフォリオ)が厚くなり見直しに役立った。

一番多い答えは、全員の7割近くを占めていて、授業に対して意識して取り組んでいると子供たち自身が書いてくれました。

④KP法(紙プレゼンテーション)、テレビでの提示、iPadの活用について 多い順

  • 教科書でチェックするところがテレビに映されるのでよく確認できた。
  • 大きく教科書やプリント、器具などを映してくれるので説明が分かりやすかった。
  • 宇宙の分野で、アプリで宇宙空間が大きく映しだされていてよくわかった。
  • 黒板が先生で隠されてしまうことが少なくよく見える。
  • KP法は時間短縮になる。

ここについては1学期とあまり変わりませんでしたが、理科室内を小さなプラネタリウムとして授業を進めたことで、3年生の「地球と宇宙」では理解がしやすかったようです。

‐望月先生の公開授業を動画でちらと見せていただいたとき、スクリーンに表示されている文字がくっきり・はっきり見えるのが印象的でした。何が大切かわかりやすいのでありがたかったです。何が表示されているか明確に見えるから、子どもたちも迷わずに理科の実験や問題に取り組めるのでしょうね。

私は目が悪くてめがねをかけているので、「字が大きく、教室の後ろから見える」とそれだけでも授業への好感度や集中力が高まります。よく見えないときは、授業について行けない感じがして、授業に取り組む意欲・モチベーションが下がってしまいます。

望月先生の公開授業を拝見して

‐望月先生の公開授業の一部を動画で拝見させていただき、印象的だったのは、

  • 子どもたちが集中して実験やワークに取り組めるように先生が冷静なトーンで声かけをされていた。
  • グループワークの時、子どもたちが活発に話し合いをしていた。
  • 理科の実験中に楽しげな雰囲気で満ちていた。
  • どこに集中したらいいのかわかりやすい。などでした。

大型テレビに時折アナログ時計を大きく映し出していたのは、時間の感覚がとてもわかりやすかったです。おそらく時計アプリを使われているのでしょうね。

また、先生がiPadを譜面台のようなスタンドにおいて、立って操作しているのもいいなと思いました。片手で持ったり、テーブルに置いたりすると、動きの制約が出てしまうと思います。望月先生は冷静な話し方かつ遠くまで通る声なので、子どもたちが興奮しすぎることなく授業が進行できているのかなと感じました。

大型テレビの使い方と子どもたちとの掛け合い(対話)がとてもお上手で、子どもたちの思考か活性化している印象を受けました。「どこに集中したらいいのかわかりやすい」ということは、「主体的・対話的で深い学び」を実現するために非常に重要なのではないかと考えさせられました。

指導者の目線と子どもたちの目線の違い

望月先生:子供たちのリフレクションには、苦情も書かれています。

  • 小テストでヒントが多すぎるときがあります。
  • もっと難しい問題を出してほしい。
  • 先生の実験が後ろから見えにくいときがあった。
  • 先生はわかっているつもりでもわかりずらい人もいます。
  • たまに光の反射や人とかぶって見えにくいことがあった。

これらの意見は、3学期に活かして改善しようとしているところです。

このように学習者が「主体的・対話的で深い学び」に向かっているかその「視点」から授業改善をしていくことが大切だと思います。

プログラミング的思考の重要性

‐望月先生、年初から貴重なお話をありがとうございました。最近「プログラミング教育」「プログラミング的思考」という言葉が多く見られてきましたが、先生はどうお考えですか。

望月先生:プログラミングを過去教えていた経験からいうと、

  • 「プログラミング的思考」ができる人は、「プログラミング」ができるようになる人が多い。
  • 「プログラミング」ができるからといって、「プログラミング的思考」ができているとは限らない。

ということです。プログラミング的思考とはいわゆる論理的思考(ロジカル・シンキング)のことです。これは理科で実験や観察する場合でも必要なものです。

‐プログラミング的思考についてもお話しくださり、大変ありがとうございました。

プログラミングを学んでも文法や書き方がわかるだけで、プログラミングすることは苦手な人もたくさんいます。ロジカル・シンキングが苦手な人はアルゴリズムでつまずくので、職業訓練校でもフローチャートを作成しながらアルゴリズムのトレーニングをする時間を取っていました。

論理的思考(ロジカル・シンキング)はプログラミングに限らず、望月先生がおっしゃるように各教科の授業で、もっと大きく言えば仕事や日常生活でも必要になってきます。子どもたちに早い段階でロジカル・シンキングを育てられる場を作るのは非常に大切なことだと感じました。

今回も大切なお話をありがとうございました。

おわりに

「文部科学省の資料にあるタイトルなどから、『アクティブ・ラーニング』という言葉に代わり『主体的・対話的で深い学び』がメインになっています」というご指摘が興味深かったです。一部メディアでは「アクティブ・ラーニングを導入」とか「アクティブ・ラーニングという手法」という表現が使われていましたが、言葉の整理ができた気がします。

文部科学省が「主体的・対話的で深い学び」という表現を使用するようになったということをふまえて、「主体的・対話的で深い学び」を促す、知的に興味深い授業が展開されることを願っています。

そして、受験期の中学校でお忙しい中、インタビューにお答えくださった望月先生と、記事を読んでくださった皆さまに感謝の念が堪えません。大変ありがとうございました。今年も教育現場からのお話を取材し、お伝えしていきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。

参考記事

先導先生 - DiTT(デジタル教科書教材協議会)
※望月先生の45の取組みが紹介されています。

まとめ記事

今までに取材した「授業でのICT活用のポイント」「学校でICT機器を活用する時のポイント」「教材作成時に気をつけたい著作権の問題」などについては、以下の記事にポイントをまとめました。ぜひご参考にされてくださいね。

第16回~18回目のインタビューは下記のURLからご覧いただけます。

▼アクティブ・ラーニング(子供たちが学びに向かう姿)の視点からの授業改善(その1)
https://blogsmt.itmedia.co.jp/kataoka/2016/06/active-learning.html

▼アクティブ・ラーニング(子供たちが学びに向かう姿)の視点からの授業改善(その2)
https://blogsmt.itmedia.co.jp/kataoka/2016/07/active-learning.html

▼アクティブ・ラーニング(子供たちが学びに向かう姿)の視点からの授業改善 学期末の子供たちの感想編
http://blogs.itmedia.co.jp/kataoka/2016/08/active-learning.html

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