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グローバル化する中で日本人はどのようにサバイバルすればよいのか。子ども×ICT教育×発達心理をキーワードに考えます。

ICTを活用した教育・学びの保証 「魔法のプロジェクト」

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ここ数年でiPadを利用した障害児支援の活動は増えてきています。たとえばソフトバンクモバイル株式会社は、2009年6月より、国立大学法人 東京大学先端科学技術研究センター人間支援工学分野と連携して「魔法のプロジェクト」を行なっています。

▼「魔法のプロジェクト」障がいを持つ子どものためのモバイル端末活用事例研究
http://maho-prj.org/


私がアメリカ帰りの研究者から読み書き障害の人を支援する際に使われるDAISYという規格を教えていただいたのが2009年2月。2009年から一年ほどDAISY XML規格で読字障害の子供向けデジタル教科書作成に取り組みました。

参考動画:ディスレクシアとDAISY|財団法人 日本障害者リハビリテーション協会

2009年から1年に1回程度、DAISY XML規格(マルチメディアDAISY)について私の個人ブログ取り上げています。ITmediaオルタナティブ・ブログでも2本紹介しています。

読み書き障害ではないお子さんにも役立つ電子書籍ではないかと私見では感じていましたが、

  • 著作権の問題で制作できるコンテンツが限られていたこと、
  • 特定の子だけ学校にPC・モバイル端末を持ち込むのは、他の子どもが持ち込めないのだからダメと反対される現場もあった

という問題がありました。

そのためデジタル教科書を制作しても自宅で予習・復習に使うのが精一杯という事例もありました。子どもの学びを保証するためにボランティア制作したデジタル教科書が学校で使えない。こんな事例が数年前には普通にあることでした。

し かし、アメリカからiPhoneやiPadが流入し、誰もが普通にタッチパネルのモバイル端末・タブレットを使うようになりました。日本でも教員の方々が 電子黒板やタブレットを利用した授業の実践研究に取り組まれるようになりました。2012年には日本デジタル教科書学会も設立されました。

参考:日本デジタル教科書学会
http://js-dt.jp/

日本では電子書籍は普及しにくいと言われていましたが、2012年秋にアマゾンのKindleが日本でも販売されるようになり、今後、電子書籍を普通に買うユーザが増えていくのではないでしょうか。

数年前まではパソコンやモバイル端末を利用して学習に障がい児(特別なニーズがある子どもたち)の支援する活動は特殊な扱いをされましたが、ようやく日本でも「学びの保証」としてアタリマエのことになろうとしています。

健常な子どもたち向けにもタブレットを利用した通信教育が始まりつつあります。

  • ベネッセ
  • Z会
  • ジャストシステム

など大手の通信教育業者がタブレットを利用した在宅での学びを開始しています。(2013年から本格化するようですが。)日本の小中学校でもICTを活用した授業スタイルへシフトしていくのが普通になるのかもしれません。

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なお、冒頭にご紹介した魔法のプロジェクトは2013年1月26日 土曜日に「魔法のじゅうたんプロジェクト 成果報告会」が行うそうです。会場は東京大学先端科学技術研究センター ENEOSホールとのこと。

▼魔法のじゅうたんプロジェクト 成果報告会を開催します
http://www.e-at.org/app-def/S-101/service/modules/news/index.php?page=article&storyid=80

こ れは特別支援教育の講座で聞いた話ですが、数年のうちに健常な子どもと障害がある子どもが同じ教室で学ぶ「インクルーシブ教育」が開始されるようです。 IT・教育・福祉が今後は三位一体となっていく兆候を感じます。

2013年も「IT・教育・福祉」というキーワードで情報をご紹介できればと思います。

>>「ビジュアルプログラミング言語「Viscuit」での作品制作を通して、情報化社会で生きる力を育てる:ビスケット塾と筆者の場合」に続く


編集履歴:2013.12.19 19:15 題名を「ITを活用した学びの保証より「魔法のプロジェクト」」から「ICTを活用した教育・学びの保証 「魔法のプロジェクト」」に改めました。

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