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「うちもIoTでビジネスはできないだろうか?」という質問への回答

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「うちもIoTでビジネスはできないだろうか?」

ITベンダーもユーザー企業も「IoT」という言葉に魅了されています。

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爆発的な伸びを見せると推測されるIoT(世界規模)
(出典:National Cable & Telecommunications Association)

インターネットにつながるモノの数は急激な伸びを示し、先進事例として、コマツのスマート・コンストラクション、GEのPredix、ロールスロイスのPower By The Hourなどが紹介されるようになりました。これは我が社も何か手を打たなければと焦りにも似た雰囲気があるようです。そして、いままでの人月積算型の収益構造に、もはや限界を感じ始めているSI事業者にとっては、「IoT」を突破口に新規事業を立ち上げて起死回生を図りたいという思惑も見えます。

しかし、IoTビジネスとは何かが曖昧なままに、漠然とした期待感だけが、妄想のように膨らんでいるのではないかと思うことがあります。

IoTのもたらすビジネス価値を否定するものではありません。しかし、インフラを構築する、システムを開発する、運用管理や保守作業を請け負うといった既存のビジネスの延長線上で、IoTビジネスを捉えてもうまくいかないことを覚悟したほうがいいでしょう。

IoTを次のように捉えてみると、この問題提起の本質が見えてくるかもしれません。

IoTはテクノロジーではなく、ビジネス・プロセスを変革する取り組みである

まず、IoTは単独のテクノロジーではないということです。例えば、

  • 現実世界のアナログな出来事をデジタル・データとして読み取るセンサー
  • 低消費電力で広域な通信(LPWAネットワーク)
  • 膨大なデバイスを認証しログを管理する認証・デバイス管理基盤
  • 多様な形式のビッグデータを維持管理するデータベース
  • それらを解析し価値ある規則性や関係性を見つけ出す機械学習など

多様なテクノロジーの組合せによって顧客の課題を解決する「ソリューション」です。

「ソリューション」とは解決すべき課題が前提です。そして、その課題に対してどのような解決策を導くかにより、必要とされるテクノロジーの組合せが変わります。

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このチャートは、IoTを構成するビジネス・レイヤを示しています。IoTビジネスをテクノロジー・ビジネスとして捉えるならば、ここに示したテクノロジー部品の提供や、多様なアプリケーションに便宜を提供するプラットフォーム、つまりテクノロジー部品を連係・組み合わせたサービスとして提供するという選択肢があるでしょう。ただ、それらは競争も激しく、機能の優位性だけではやがて差別化は難しくなり、規模の経済を求めることになります。それも1つの戦略ではありますが、それなりの覚悟が必要です。

では、他の選択肢は何かと言えば、お客様のビジネス・プロセスの変革に貢献することです。例えば、コマツの「スマート・コンストラクション」は、土木工事の自動化を目指す取り組みですが、それには次のような背景がりました。

建設需要が増えているにもかかわらず・・・

  • 高齢化によりベテランの職人が確保できない
  • 経験の浅い人材を集めても経験がないので即戦力化できない
  • 若い人が3K仕事の土木工事を嫌って集まらない

これらの課題を解決しなければ事業が継続できないという危機感から端を発しています。もはや人手に頼った土木工事ではこの課題を解決できません。ならば、テクノロジーを使い人間がいないことを前提にビジネス・プロセスを変革しようと取り組んだのです。そして、それを実現するために自分たちの経験や実績にとらわれることなく、センサーや自動制御などの新しいテクノロジーにも目を向け、最善の手立てを組み合わせた結果としてできあがったサービスが「スマート・コンストラクション」です。

この取り組みの責任者に話しを聞いたことがありますが、「IoTビジネス」をやりたかったわけではないそうです。結果として、「IoTビジネス」になっただけだと話していました。

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目の前の課題に真摯に向き合い、その課題を解決するために最善の手立てを「いま」のテクノロジーに求めました。そして、既存のやり方にこだわらずビジネス・プロセスを変革しました。「IoT」というソリューションはそのための有効な手立てとなったわけです。

もちろん、こういう「課題」への切迫感はユーザーにしか分かりません。だからこそ、IT事業者やSI事業者は、ユーザーに寄り添い、ITの専門家の立場から一緒になって課題解決に取り組まなくてはならなりません。「共創」とはそういう取り組みを言うのでしょう。そのとき、ユーザーから求められたテクノロジーを提供するだけではなく、新しいテクノロジーを前提にビジネス・プロセスの「あるべき姿」を示し、既存のビジネス・プロセスの変革を共に考え促すことも大切な役割となります。

いつの時代も最適解は新しいのです。1年前の最適解は、いまは最適解ではないかもしれません。そして、その変化を生みだすテクノロジーの進化は、これまでに無く加速しています。そういう、新しい常識を常に懐に携えて、ユーザーのビジネス・プロセスの変革に貢献することが、結果として「IoTビジネス」になるのです。

「IoTビジネスをする」とは、「テクノロジー提供者あるいはその組合せのプラットフォームを提供するビジネスをすること」か、「テクノロジーを懐に携えてユーザーのビジネス・プロセスの変革に貢献すること」かのいずれかです。

IoTに関連したインフラを構築する、システムを開発する、運用管理や保守作業を請け負うといったビジネスは、既存のビジネスが抱える自動化や自律化、クラウド化などによる工数の減少や単金の低下といった課題をそのまま引き継ぐことになり、需要はあっても利益の出ないビジネスであることに変わりはありません。「IoTビジネス」でこの現実を変えたいというのであれば、自分たちが提供するビジネス価値を変えてゆくことを覚悟すべきです。

ITソリューション塾・第24期

ITソリューション塾・第24期を2月8日(水)から開催します。第24期は、IoTやAIのビジネス戦略にも一層切り込んでみようと思っています。また、情報セキュリティの基本やDevOpsの実践についても、それぞれの第一人者から学びます。多くの皆様のご参加をお待ちしています。

  • 会場 : アシスト株式会社・本社@市ヶ谷
  • 日程:2月8日(水)〜4月26日(水)の毎週1回×11回 *但し、3月最終週は休みとなります。
  • 時間:18:30〜20:30
  • 定員:80名(前回参加者 84名)

お願い

  • 毎期早い段階で定員に達しています。手続き等で時間はかかるが、参加のご意向をお持ちの場合は、事前にメールにて、その旨をお知らせください。
  • 個人でのご参加の場合は、消費税分を割り引かせて頂きます。
  • 今回の期間は、予算期を跨ぐところもあるかと思いますが、今期または来期のいずれか、または、両期に分けて支払いという場合は、個別にお知らせください。

詳細のご案内、および、スケジュールのPDFダウンロードは、こちらをご覧下さい。

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2017年1月 最新の改訂版をリリースしました!

ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA

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*「コレ1枚でわかる最新ITトレンド(2017年度版)」を新規に作成しました。
*先進技術編では、解説を大幅に追加、刷新し、新たなチャートも追加しています。
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【インフラ&プラットフォーム】(293ページ)

【更新】コンテナ型仮想化・改訂版の解説を改訂しました p.175
【新規】SD-WAN p.184

【ITの歴史と最新トレンド】(14ページ)

*これからのビジネスを考える参考となるよう、「コレ1枚でわかる最新ITトレンド(2017年度版)」を新規に作成しました。

【更新】デジタル化の歴史の解説を追加しました
【新規】コレ1枚でわかる最新ITトレンド(2017年度版)を新規に追加し、解説も加えました。

【サービス&アプリケーション・基本編】

*運用と開発のプレゼンテーションが増えたことから、基本編と運用と開発編に分割しました。

基本編(50ページ)
 変更はありません

開発と運用編(64ページ)

【更新】これからのシステム開発のチャートを改訂し、解説を追加しました p.5
【更新】DevOpsとは何か?の解説を追加しました p.19
【新規】仮想マシンとコンテナの稼働率 p.74-77
【更新】DevOpsとコンテナ管理ソフトウェアの解説を改訂しました p.78
【新規】FaaS(Function as a Service) p.79

【テクノロジー・トピックス】(49ページ)
 変更はありません

【サービス&アプリケーション・先進技術編】

IoT(92ページ)

【更新】IoTとM2Mの解説を追加しました p.7
【更新】IoTの定義の解説を改訂しました p.15
【更新】コレ1枚でわかるIoTのチャートと解説を改訂しました p.18
【更新】デジタル・ツインの解説を改訂しました p.23
【更新】モノのサービス化の解説を改訂しました p36
【更新】ビジネス価値の進化の解説を改訂しました p.38
【更新】IoTと機能と役割の4段階の解説を改訂しました p.41
【更新】クラウドから超分散への解説を改訂しました p.46

人工知能(93ページ)

【新規】コレ1枚でわかる人工知能とロボットの新たなチャートを追加し解説を載せました p.9
【更新】産業発展の歴史から見る人工知能の位置付けの解説を改訂しました p.317
【新規】ディープラーニングが注目される理由の新しいチャートと解説を追加しました p.24
【新規】弱いAIと強いAIについて、新しいチャートと解説を追加しました p.32
【更新】人工知能に置き換えられる職業について、解説を追加しました p.64

詳しくはこちらから

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