オルタナティブ・ブログ > ITソリューション塾 >

最新ITトレンドとビジネス戦略をわかりやすくお伝えします!

知ってしまったからには、行動しなければならない。

»

「知ってしまったからには、行動しなければならない。」

昨日、IBMのTHINK FORUM 2014に参加する機会を頂きました。その折、IBMの最高経営責任者ジニー・ロメッティ氏が語ったこの言葉です。私は、グローバルカンパニーが持つべき「視座の高さ」をこの言葉に感じました。

昨年、IBMは、医療分野でのWatsonの商用利用について発表した折り、次のような文章を載せています。

「米国癌協会は、この1年に160万の多岐にわたる新たながんの症例が、米国内で診断されるだろうと推定しています。研究によると、この医療の複雑な現状のために、5人に1人が誤ったあるいは不完全な診断を受けているとされています。」

「ワトソンは腫瘍学研究の分野において60万件以上の医学研究結果と、42誌の医学専門誌から200万ページにおよぶテキストおよび臨床試験データを学習しました。 ワトソンには、医療記録、患者の経過といった150万件のがん治療履歴のデータ(数十年のがん治療の歴史に相当)を、ほんの数秒で厳密に調べて、証拠ベースの治療の選択肢を医師に提供する力があります。」

「腫瘍学の最新の状況がすべての診療所の環境に行き渡るには、何年もかかるかもしれません。しかし、我々のがん解析で培ったワトソンの変換技術と意思決定プロセスの組み合わせが、国内のみならず全世界でがん治療の情報アクセスに革命をもたらす可能性があります」

「ヒトの命を救えることを知ってしまったからには、そのために行動する」

このような国家や人種を問わない普遍的価値への共感を生みだすことこそ、グローバルカンパニーの持つべき「視座の高さ」なのでしょう。

「世界の次なる資源は、データです。」

データもまたグローバルに普遍的な存在です。そこに経営資源を注いで行くというメッセージもありました。

データは、モバイルやソーシャル、IoTの普及と共に今後ますます増大します。言うなれば、日常や社会と言った現実社会のデータ化が、今後急速に進み、ビックデータが生みだされ続けます。

しかし、データは、ためるだけでは意味はありません。分析(アナリティクス)されてこそ価値を生みだすわけで、Watsonは、その価値を生みだすエンジンと位置付けているようです。

例えば、ヘリコプターの保守・点検データを活用して、保守点検を90%削減した事例を紹介していましたが、このような成果は、企業の競争力の根本が変わってしまう可能性があります。

また、昨年一年間に10億の個人データが侵害されたそうです。このようなセキュリティ侵害は、高度化・多様化し、どんな対策を打っても完全に防ぐことはできません。そこで、こういう不正行為に関する情報を世界中から収集し、自ら学習して、システム自身が、攻撃への対策を作り上げて行く「自己免疫型」のセキュリティという取り組みも考えられているのだそうです。

他にも健康や医療、資源やエネルギー、安全や安心を、データとそれを分析する技術を組み合わせることで実現しようというのです。

そして、モバイルとソーシャルを通じて、個々人に応じ、ヒトやモノ、情報を結びつけてゆくと言った大きな仕組みを築いてゆこうというのです。

そこに、これまでのテクノロジーの延長ではないイノベーションを実現し、そのイニシアティブを自分達がとってゆくという強いメッセージが伝わってきました。

当然、これは大きなビジネスの機会でもあります。しかし、その機会を生みだすきっかけを人類や世界といった高い視座からの価値においていることこそ、グローバルカンパニーたる所以なのでしょう。

Img_8967

(IBM時代、自分の机の上に置いていたものです)

IBMには「THINK(考えよ)」という社是があります。私が、IBMに在席していた頃にもこの言葉が至る所に掲げられていました。そして今、IBMは、「THINK」そのものをビジネスにしようとしているのかもしれません。

「大きな時代の転換点を向かえている」。それを強く印象づけられるイベントでした。

ところで、ひとつ面白いことを見つけました。このイベントの最初に投影された「THINK FORUM」と掲げられたスライドの両脇にAppleのMac Bookが写っていました。話には何も出なかったので、意図したものではなかったのかもしれませんが、AppleとIBMの関係を象徴するようなスライドに何人の人が気付かれたでしょうか。


最新ITトレンドとビジネス戦略【2014年10月版】(182ページ)」を公開しました!

毎月公開しています最新ITトレンドについてのプレゼンテーションです。以下のテーマでまとめられています。

  • クラウド・コンピューティングで変わるITの常識
  • モバイルとウェアラブル
  • 仮想化とSDI (Software Defined Infrastructure)
  • IoT (Internet of Things) とビッグデータ
  • スマートマシン
  • これからのITビジネス戦略

今月は、仮想化とSDIについてプレゼンテーションを一新し、解説文書を追記致しました。

よろしければお立ち寄り下さい

システム・インテグレータの今と次のシナリオを考えて見ました

system_cover

「システムインテグレーション崩壊」

〜これからSIerはどう生き残ればいいか?

  • 国内の需要は先行き不透明。
  • 案件の規模は縮小の一途。
  • 単価が下落するばかり。
  • クラウドの登場で迫られるビジネスモデルの変革。

Follow Us on Facebook Facebookページを開設しています。「いいね!」やご意見など頂ければ幸いです。

Comment(0)