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システム開発案件で、契約書の記載と実際の運用が違う場合に作業時間に応じた報酬を得られる?

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システム開発案件で、契約書はあるけれど

システム開発案件では、大抵の場合、契約書が作成されます。

しかし、その契約書の記載が曖昧かつ不明確なことも多いのも事実。特にシステム関連契約では、形が見えない分、曖昧な表現に終始してしまいがちです。

システムの保守契約を締結したところ、契約書では、作業時間を定め、作業時間に応じて報酬を定めるような記載がありました。

しかし一方で、保守業者は、クライアントの求めに応じてシステムの改変や機能追加を行っており、システムの開発に近いようなカスタマイズも行っていました。

その保守業者は、作業時間に応じ、報酬として200万円を請求したところ、クライアントは仕事が終わってないと言ってお金を支払ってくれない...

こういった場合、保守業者は、作業時間に応じた報酬を得ることはできるのでしょうか?

契約書があっても、その通りになるとは限らない!

この場合は、契約書に作業時間に応じた報酬の記載があるので、その通り請求できると思うかもしれません。
しかし、ここで注意しなければならないのは、保守業者はユーザーの要望に応じ、システムの改変や機能追加を行っている点です。

実際には、作業時間ではなく、成果報酬に近い形で運用されていたとも考えられます。

このような場合、契約書通りの請求できるかと言われると微妙な問題があります。

システム契約は、契約書+実態の運用

作業時間に基づく報酬とするか成果報酬とするかは、契約書の記載によるところが多いですが、それだけではなく、実際の役割分担や運用、契約当時、お互いがどういう共通理解があったかということ観点から判断されます。

運用次第では、作業時間報酬と成果報酬の併用であったと判断されることもありえるのです。

もちろん、裁判になったときには、契約書の記載は最重要視されます。

しかし、ベンダ側とユーザー側との間で、契約書とは異なる運用をしていたら、契約書記載通りの請求ができなくなってしまう可能性があります。

なので、システム開発案件で重要なのは、

  1. 契約書を作成し、その記載は法的に明確にしておく
  2. 契約書の記載通りに、運用していく

ということが大事になります。

そして、トラブルになった場合には、契約書の記載と実際の運用を比較・検討し、どういう請求ができるのか(どういう請求がされるのか)を考える必要があるのです。

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