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「人とそのつながり」に活路あり 日本の課題を突破する

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日本マーケティング協会の月刊「マーケティングホライズン」2016 vol.1への寄稿です。「Not Forecast but Backcast」という素晴らしい未来から逆算して、これからやらねばならないことを探すというテーマでの号の一部です。

「人とそのつながり」に活路あり

課題1 下落する経済的地位

 いま日本は豊かで他国より問題が少なく暮らしやすいが、どこまで続くのか?図のように他国が伸びる中、日本経済はその地位を下げていくのは、程度の差こそあれ、必然と考えられる。他国に依存するくたびれた国になりかねない。やや小さく良き国であればよいが、我々は何をなすべきか?

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課題2 自信も希望も最下位の若者

 「平成25年度 我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」(平成26年6月 内閣府)は、7か国の満13歳から29歳までの男女を調査し、日本人は、最も、自分自身に満足しておらず、自分に長所があると思っておらず、やる気がなく、憂鬱であり、40歳になったとき幸せでないと思っている、という結果だった。これで明るい未来を築くことができるのか?

課題3 人の存在意義が問われる

 今年バズワードとなった一つにAI(人工知能)があるが、英オックスフォード大学でAIなどの研究を行うマイケル・A・オズボーン准教授とカール・ベネディクト・フライ研究員による論文『雇用の未来--コンピューター化によって仕事は失われるのか』が昨年から世界的に注目されている。

 技術革新により、多くの仕事がAIやロボットなどに代替される。いまクルマの自動運転が騒がれているが、10~20年後には米国の総雇用者の約47%の仕事が自動化される可能性が高いと、この論文は結論づけている。

 だいぶ前から日本は成熟化し、低付加価値の仕事は減り、高付加価値の仕事が主となる、と言われてきたが、ますます人の存在意義が問われるようになる。

 この三つの課題を鑑みて、明るい未来のために「これからやらなければならない事」は何だろう?

人を活かす

 人の存在意義を高めねばならない。それには、人を活かす、そして人の価値を高める、の二つだ。

 シニアの技術人材が流出して国益を損なうとか、女性が活用されていないという指摘もあるが、活躍させない日本の仕組みから根本的に変革するのが先決だ。これは、企業内の人材活用も同様。

 それに看護師や介護、あるいはエンジニアの人材不足というが、価値を認め相応の対価で報い(例えば、プログラマーの給与の日米差は歴然)、職場環境の改善などしなければ、せっかくやりたい人がいても、その意を活かすことは難しい。

 そして、人材の価値を上げなければならない。例えば、国際化が言われているが、英語力は先進国で最低のまま。しかも、外国人の方が日本の事をよく知っていることがしばしば。

 また、海外の優秀な人材で、日本が好きで日本に貢献したいが、日本が受け入れてくれないという話は、よく聞く。人材鎖国を解いて、こうした高付加価値人材を受け入れることだ。

 これは日本の人材の質を高めるにも有効だ。例えば、再生医療は規制緩和で日本は世界で最も可能性がある地域になったが、人材もノウハウも足りない。海外からの人材や組織から学び、それが日本のレベルを押し上げることにもなるだろう。

 

人のつながり

 日本企業は他国よりも社員の心が企業から離れているという調査結果が複数ある。日本は妙な合理主義に傾き、欧米が一時は羨んだ共同体を喪失させた。一方で、多様な社員をグローバルに抱える米国企業は、コミュニケーションの努力を払ってきた。顧客をアンバサダーとして共にマーケティング活動することも、欧米企業が先行している。しかし、かつて家族的と言われお手本とされた日本企業は、リカバリーショットが打てるはずだ。そして、個人も組織も輝く時代を勝ち得ねばならない。

 また、ミシガン大学教授のスコット・ペイジは著書『「多様な意見」はなぜ正しいのか』で、「多様性は(一人の)能力に勝る」と指摘している。イノベーションは多様性の組み合わせが鍵だ。前述したように、海外人材との交わりや相互刺激が、人と組織の価値を高めるだろう。

個人短期から脱却し、新たなつながりへ

 幸せの重点は、物質から心の豊かさへと移りつつある。ポジティブ心理学の第一人者であるペンシルベニア大学マーティン・セリグマン教授は、幸せの主要素の一つは人のつながりだと指摘している。

 そのつながり方も、進化の途上だ。近年のシェアリングエコノミーの台頭は、モノを所有することを第一に置く時代から人がつながり共有・利用する時代への転換の予兆だ。この背景に、個人短期の視点の限界がある。

 例えば、筆者は京都の弘道館という江戸時代の学問所のサポーターだが、京都の歴史ある味わい深い家屋が売られたりマンションとなり、このままだと京都の良さが減じると危惧されている。個人の短期的な儲けはそれでいいが、社会的な視点からは価値ある資産が失われ、再びそれを構築するには大きな金と時間がかかる。長期的全体最適に至らなければ、結局は個人・短期の利得も減少していくのだが。

新たな価値で世界に貢献する

 長期的全体最適と言いつつ、日本自己中心的に論じてきたので、ここで視野を広げてみたい。世界の中で、日本がどう役に立てるか?単なる数の経済貢献は、他国を下回るだろう。すでにカンボジアなどアジア諸国への経済貢献では、中国に抜き去られた。

 ならば、人材そしてノウハウによる価値の提供がある。量から質への転換。そのための人材・組織開発にいまから取り組まねばならない。自分らしく自信と希望に満ちた人材を育くみ、イノベーションを起こす人のつながりを促進することだ。そして、これから生み出す新たな日本モデルの移転、さらには他国との新モデル共同開発を期待したい。

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