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いま注目を集めるザッポスとトニーシェイ そして新経営ホラクラシ―とは?

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トニーシェイ著「ザッポス伝説」(原題"Delivering Happiness")を2010年12月に日本の紹介してはや5年近くになろうとしているが、このところザッポスの記事が続々と公開されている。

これは、管理職を無くし社員が自主的に動くようにする新たな組織経営の手法「ホラクラシ―」を、ザッポスが全社導入しようとしていることが、注目を集めているからだ。

今月=9月上旬

小生のザッポス最強伝説 Part2~アマゾンを震撼させたサービスはいかに生まれたか|ダイヤモンド・オンラインの
9/2 「世界を驚かせ続けるザッポスとトニーシェイのいま
9/9 「経営革命に挑むザッポス 管理職をなくすホラクラシーの衝撃!

のほか、ダイヤモンド・ハーバード・ビジネスの翻訳記事
9/2 「ザッポスが「管理職のない会社」に挑戦する理由
9/3 「ザッポスは新しい組織形態で さらなる革新を目指す

がある。そして、

先月=8月は、有料記事の

8/3 「最強のEC企業ザッポスが導入した組織理念「ホロクラシー」とは?」佐々木俊尚の未来地図レポート vol.357 - BLOGOS(ブロゴス)メルマガ

に続き、David Gellesによる7/17のNY Times記事 "At Zappos, Pushing Shoes and a Vision"(これは無料で読める)の和訳を三分割したNewsPicksの
8/24 「管理職ゼロ。ザッポスが目指す、イノベーティブな組織」 
8/25 「年俸3.5万ドル。地味なザッポスCEOが進める「奇妙な改革」」 
8/26 「辞任論も浮上。ザッポスCEOの一か八かの大勝負」 
が公開された。

有料記事に続いて、無料で読める記事4本を「ザッポス伝説」刊行のダイヤモンド社から出せたのは、広くザッポスとトニーシェイのいまについて知っていただく上でお役に立てたかと思う。

これらで論点とされているホラクラシ―についてもう少しざっと理解するには、小生がインタビューしたブリロニ・アレックスさんの例を述べたWall Street Journal「上司不在の組織「ホラクラシー」はうまくいくか」を読むとよいだろう。

なお、上のあげたもの以前の記事の論調は、批判的なものが多かった。新しい取り組みにケチをつけるのは簡単であり、そうした記事を読んでも得るものは乏しい。大切なことは、ザッポスとトニーシェイの取組みから何を学ぶかだ。

自律的な組織、自主性あふれる社員を、理想と考える経営者は多いだろう。しかし、現実は程遠いものだったりする。それを革新するザッポスの取組みは、興味深い。それも、ホラクラシ―の起源でもあるソフトウェア会社では実践もしやすいだろうが、普通の人が仕事する一般的な事業で、それも大きな組織で実践するのは、容易ではないはずだ。ザッポスがいかに課題を解決して前進するか、他社にとってもヒントとなるだろう。

ここで、ダイヤモンド・ハーバードの二つの記事について、短く言及しておきたい。

 フアン・パブロ・ヴァスケス・サンペレのIEビジネススクール教授の「ザッポスは新しい組織形態でさらなる革新を目指す」は、題名の通りで、小生の記事にも書いたように、証明済みで伸びている既存事業を効率化し磨き上げて伸ばすことに終始せず、一時的には犠牲を払ってでもイノベーションを志向するという選択をザッポスをしたのだ。

 ジャンピエロ・ペトリグリエリINSEAD准教授の「ザッポスが「管理職のない会社」に挑戦する理由」だが、原文は"Making Sense of Zappos' War on Managers" とポジティブな題名になっている。だから、「非常に困難」との解説文の出だしに引っ張られると読み違えかねない。
 文化づくりを条件としているが、それはザッポスが注力し続けているポイントだ。また、「仕事に全力で打ち込むことは必須条件」と指摘しているが、ザッポスも一人ひとりが自主的に動くことを狙っている。明るく前向きなカルチャーは、それを助けるだろう。
 もっとも、業績が伸び続けている組織では、これも可能だが、業績が停滞すると、暗い雰囲気になってくる。組織改革の間も、成長し続けることが求められることをこの論文に付け加えたい。

ちなみに、ザッポスの人々の雰囲気は、前向きで明るい。またホラクラシ―での試行錯誤や否定的な言葉も、なんら隠さずオープンに話す。どこかのメディアが期待するような、実は裏では××といった様子はうかがわれない。もちろん、初めはわけわからず不安だよね、と推進チームのメンバー自ら語っている。だが、前に進もうというカルチャーは明らかだ。ザッポスは特に他社より給与が高いわけではない。それでも去らないのは、職場に魅力があるからだ。

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バスケやいろいろ遊べる玄関前。例えば、ランチタイムにホットドックの早食い大会なんてことも。

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これはオフィス内の光景

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ザッポスライブラリーは公開されたものと社員向けに分かれてます。本を薦めるのがザッポスの特徴。いまはホラクラシ―本を無料で社員に配ってます。

<参考書籍>

ザッポス伝説」トニーシェイ著
郵今年も版を重ねているロングセラー。試読版ほか情報はこちらに。

究極の顧客サービス「ザッポス体験」」 ジョゼフ・ミケーリ著、トニー・シェイ 序文】
スターバックスほか著名企業の研究本でベストセラーを重ねるジョゼフ・ミケーリ氏の取材執筆による書

なお、小生は直接取材していないので、現実の理解が不足しているが、以下に日本のベンチャー企業のホラクラシ―体験談も書かれているのでご参考まで。

KOZO TAKEI'S BLOG
ホラクラシー型組織で8年経営してみた。
ホラクラシーで失敗したこと  ~1. 給料バブル~
Slideshare|ホラクラシー型組織の作り方(ホラクラシーのメカニズム)

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