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スポーツとデータビジネス 〜「スポーツDXレポート」から

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経済産業省は2022年12月7日、「スポーツDXレポート」の取りまとめを公表しました。

今回はこの中から、スポーツとデータビジネスについてとりあげたいと思います。

スポーツにおけるデータビジネスの広がりでは、海外では「参加費分配型」のファンタジースポーツが開催され、参加者が数ドル~十ドルの参加費を支払い、数万~数十万ドルの賞金を獲得できるコンテストも存在しています。

国内では、参加費ではなく「スポンサー提供賞金分配型」のスキームとして始まっています。

また、海外では、試合結果の勝敗・得失点、試合中の選手ごとの各種スタッツ等、様々な数値・現象がデータ化され、それがスポーツリーグ・ベッティング事業者・ゲーム事業者・メディア等の各種ビジネスに活用されているとしています。

データビジネス ①ゲーム(ファンタジースポーツ):ビジネス概況をまとめたのが以下の図です。

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出典:経済産業省 「スポーツDXレポート」 2022.12

データ活用が重要なゲームとしてファンタジースポーツがあります。

ファンタジースポーツとは、実在するスポーツ選手から成る架空のチームを組成し、その選手の実際の試合におけるパフォーマンスをスコア化したうえで、他の利用者と競い合うゲームです。

ファンタジースポーツの運営会社は、コンテンツホルダーであるリーグやクラブと、画像や映像の使用権・試合に関するデータ等に係るライセンス契約を結んだうえで、データ分析・加工を行うデータプロバイダーを通じるなどしてデータ等を入手し、アプリ等を介してサービスを展開しています。

米国ではプレイヤーの参加料から勝者に高額な賞金が与えられる場合もあり、人気を博しているといいます。

また、最近では、NFTトレーディングカードを用いて行うファンタジースポーツも登場しています。


ファンタジースポーツのサービス提供には、チーム/選手情報、試合スケジュール、選手/チームスタッツ、出場情報、選手成績、チーム成績、契約情報、公示情報、選手記事等のスタッツデータが活用されます。

海外が先行していましたが、国内でも、国内版のファンタジースポーツが広がっています。

日本では参加料から賞金を出すことは賭博罪に当たると解されるため、スポンサーから賞金や賞品を拠出するモデルが展開されています。

現時点では国内ファンタジースポーツ市場の規模は小さいですが、潜在市場規模は3,000億円超とする試算もあります。

データビジネスで、もう一つ注目されるのが、海外スポーツベッティングです。

スポーツベッティングとは、スポーツの勝敗を予想し、その結果が当たっていれば配当を得られるサービスです。

海外では、予想の対象が試合結果の勝敗だけでなく、個人選手の得点数や各種スタッツ、試合の合計得点等、様々な数値・現象が対象となり、タイミングや手段・媒体も多様化しています。

近年では、その事業性の高さから、利用者が高頻度でスポーツベッティングに参加できるサービスが増加しており、それを支えるテクノロジー・データサービスが普及しています。

スクリーンショット 2022-12-10 13.53.39.png

出典:経済産業省 「スポーツDXレポート」 2022.12


スポーツベッティングはイギリスで古くから実施されてきたが、2005年にイギリスでオンライン上のスポーツベッティングが解禁しています。

その後、DXとボーダレス経済の加速や違法市場の排除と税収増などの意図も加わり、欧州各国・米国・カナダで解禁や民間開放の動きが広がっています。

米国では、2018年に最高裁判所でスポーツベッティングを主催することを禁じる「プロ・アマスポーツ保護法(PASPA)」が違憲とされて以降、スポーツベッティングを合法とする州が広がり、すでに30州を超える州で合法化されています。

スポーツベッティングで活用されるデータはそのサービス内容によっても様々ですが、必須データは放送・配信等の映像から把握できる試合経過のデータです。

しかし、放送・配信等により公表されるデータは実際のプレーより10秒以上遅くなっています。

現在、市場が伸びているのは試合中に予想するインプレイベッティングですが、そのためには、実際のプレーから2~3秒以内に収集された「速報データ(Live Data)」が必要です。

スポーツベッティングにおけるデータを取り巻く商流には、スポーツベッティングを行うユーザー向けにサービスを提供する「ブックメーカー」の他、スポーツリーグ等のコンテンツホルダーからスタッツ等のデータを取得して、オッズに加工してブックメーカーに提供する「データプロバイダー」が存在しています。

スポーツベッティング合法国では、規制当局が不正を監視するほか、データプロバイダーがリーグやクラブ等に不正防止のサービス(Integrity Service)を提供しています。

依存症対策として、ベッティングを行う際には本人確認が必要となるほか、オンラインベッティングでは、ユーザーが限度額を設定できるサービス等をブックメーカー等が提供しています。

日本国内では、スポーツベッティング自体が賭博罪の適用対象(公営競技、宝くじ、スポーツ振興くじ等除く)となるため、市場が存在しない。公営競技、宝くじ、スポーツ振興くじの市場規模は2019年の統計によると、約7兆円となっています。

ただし、日本のスポーツはすでにスポーツベッティング合法国でベッティングの対象となっており、その規模は5-6兆円との推計もあるといいます。

スポーツとデータビジネスですが、規制面などの環境整備の検討は必要ですが、市場成長性の高いビジネスの可能性はあると感じています。

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