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ロボット白書2014(5)各国におけるロボット政策

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ロボット白書2014における「2. ロボット利用の意義・必要性・取りまく環境」を中心に、各国におけるロボット政策について、まとめてみたいと思います。

ロボットは、これまでは工場においての産業用ロボットとして、生産性工場や品質の安定化、さらには、人が危険にさらされる場所や容易に近づけない場所での作業を中心に、採用が進んできました。

ロボットの普及は工場だけでなく、身近なところでも利用されるようになり、たとえば、クリーナーロボットなど民生用にも100億円以上の市場が創出されています。そして、医療や介護、福祉、農業などさまざまな分野での利用が広がっています。医療分野では、手術用ロボットでは世界で1,000台以上が導入されており、国内でも厚生労働省の認可を取得するロボットも出てきており、ロボットが介護保険の対象となっています。

2015年には4人に1人が65歳以上の高齢者なることが想定されている中、超少子高齢化が進むことで、労働不足や介護などの人材が不足されることが予想され、ロボットへの期待は高まっており、さまざまな分野で実用化の動きも進んできています。

特に、米国では、

・クリーナーロボット(Roomba)
・ロボット倉庫システム(KIVA systems)
・手術支援ロボット(daVinci)
・低価格人共存型ロボット(Baxter)

そして、ロボットOSであるROSの展開など、ロボット技術が生活からビジネスまでさまざまな分野に広がりを見せています。

ロボット関連政策は、各国において重要な政策として進められています。

米国

米国では国防高等研究計画局(DARPA)が2004年に始めたロボットカーのGrand Challengeが有名で、2007年にはロボットカーが自律走行で市街地のコースを完走した。その後、2012年には福島災害などに対応する技術を確立するためにRobotics Challengeとして災害対応ロボットの技術開発が新たに設定された。2013年12月には日本のチームが予選を1位で通過し技術力の高さを示した。また、2011年に製造業の復興促進のために国家ロボティクスイニシアチブとして、国立科学財団(NSF)、国立衛生研究所(NIH)、航空宇宙局(NASA)及び農務省(USDA)の4組織が、次世代ロボット開発の研究費を提供する7,000万ドルの共同提案公募を発表した(関連記事)。

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Supporting the President’s National Robotics Initiative
http://www.whitehouse.gov/blog/2011/08/03/supporting-president-s-national-robotics-initiative

欧州

第6次研究開発枠組み計画(FP6)の中でロボット開発に関わる欧州の研究開発機関を連携して、欧州レベルでの研究資源の効率化や戦略的な研究方向を探るためのネットワーク・プロジェクトEURONにて研究ロードマップが作成された[3]。FP7(2007年~2013年)ではCognitive Systems and RoboticsをICT分野のチャレンジ領域の1つに選定し、知能化技術に関する研究プロジェクトへ年約2億ユーロの投資をした。2014年から2020年までは後継のHorizon2020が始まり、総額800億ユーロが投資される計画である。

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HORIZON 2020
http://ec.europa.eu/programmes/horizon2020/en

韓国

韓国ではユビキタスロボットコンパニオンプロジェクト(URC)が終了し、その成果の実用化が進められたが新規市場創出までには至らなかった。その後、知識経済部が中心となり、2013年から10年間のロボット未来戦略を発表した。中国は成長率が鈍くなったとは言え、依然、期待が高く国家中長期科学技術発展規画綱要(2006年~2020年)、先端技術8分野の中で知的ロボットをあげている。

日本

産業用ロボットの生産額はいまだ世界一であるが、米国、ドイツ、韓国、中国との差は年々小さくなっている。経済産業省が中心となって、2005年の愛・地球博以降、サービスロボットの実用化に継続的な施策を実施している。ロボット用ミドルウェア(RTミドルウェア)はその普及戦略の1つとして、戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト(2006年度~2010年度)、次世代ロボット知能化技術開発プロジェクト(2007年度~2011年度)などを通して共通プラットフォーム化が進められ、社会への普及を目指した活動が継続している。総合科学技術会議で計画された第4期科学技術基本計画(2011年度~2015年度)の中でもライフイノベーションとしてロボット手術や生活支援ロボットがあげられている。第3期にあげた「家庭や街で生活に役立つロボット中核技術」の継続的なテーマとなっている。

ロボット技術の期待の高い応用先としては、災害対応と福祉・介護があげられる。2011年の福島原発事故以降、試作で終わっていた日本のロボット研究・開発の課題が明白になり、実運用までを確実に実施することや今後の開発方針などへの提言が学界や学術会議、産業競争力懇談会(COCN)などから行われている。このような背景のもと国際廃炉研究開発機構(IRID)が2013年8月に設立された。他にも海外の技術も結集し廃炉に向けた取り組みが産官学にて実施され、世界的に注目されている。

 

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