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「次世代社会インフラシステム」の国際展開について(国際競争力強化検討部会 最終報告書より)

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スマートシティ、スマートコミュニティ、スマートグリッドなど、次世代社会インフラシステムをイメージするキーワードが最近話題となっています。

政府においても、日本の安定した社会インフラシステムをアジアなど海外への展開は重要施策として位置づけています。

一ヶ月前の情報になってしまいますが、総務省は12月14日、「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース「政策決定プラットフォーム」 (第4回会合) 」を開催し、「過去の競争政策のレビュー部会」、「電気通信市場の環境変化への対応検討部会」、「国際競争力強化検討部会」、「地球的課題検討部会」から最終報告が提示されています。

ここでは、「国際競争力強化検討部会」で提示された最終報告書の「次世代社会インフラシステム」の国際展開に焦点をあてて整理してみたいと思います。

「国際競争力強化検討部会」の最終報告書の構成は、「Ⅰ.3つの基本理念(ICTによる持続的経済成長の実現・日本のICT「総合力」の発揮、グローバルな「強調関係」の構築」、「Ⅱ.重点戦略分野(①重点推進プロジェクト、②連携推進体制、③技術戦略)に分類されています。

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重点分野戦略分野の重点推進プロジェクトにおいて「次世代社会インフラシステムの国際展開が明記されており、主に「パッケージでのアジア展開」「地デジ等主要インフラの国際展開」「ICT利活用モデルの国際展開」をあげています。

パッケージでのアジア展開

■ ICTによる社会インフラの効率化:
我が国全体の成長戦略の観点からは、我が国が強みをもつインフラをパッケージとして、アジア地域に展開・浸透させることが重要。我が国の最先端のICTシステムをインフラに組み込むことにより、ICTシステム自体の国際展開に資することに加えて、社会インフラの飛躍的な効率化・高度化が達成されることによるインフラの国際競争力向上といった効果も期待される。このため、次世代社会インフラシステムに関する総合的なプロジェクト組成を関係府省と連携しつつ進めることが必要。

■ ICTを組み込んだ具体的なシステム構築とロードマップの策定:
プロジェクト実施に当たっては、我が国が強みを発揮しうる主要インフラ分野(交通、物流、上下水道、保健衛生・医療、教育等)を絞り込んだうえで、ICTを組み込んだ具体的なグローバルモデルシステムの構築・展開ロードマップの策定を速やかに行い、戦略的にプロジェクト実現に取り組むことが必要。
(システム例) 新都市型交通システム、ITS、環境センサーネットワーク、防災システム 等

■ ODA等の有効活用:
本プロジェクトの推進に当たっては、政府開発援助(ODA)の有効活用に加え、民間の資金・技術・ノウハウを活用する官民パートナーシップ(PPP)手法を活用することが適当。

主要通信インフラの国際展開

■ 地デジ等の国際展開:
地上デジタル放送、ワイヤレス、次世代IPネットワークといった我が国が強みを発揮しうる通信インフラ分野は、引き続き強力に国際展開を推進すべき

ICT利活用モデルの国際展開

■ 課題解決型モデル事業の重要性:
「課題先進国」という我が国の特徴を活かした地域発のプロジェクトを実施し、課題解決型のICTシステムを世界に先駆けて多数組成していくことが、我が国のICT産業の国際競争力を強化する上でも有効。

■ 国際貢献・国際協調の視点:
課題解決モデルのグローバル展開は、アジア各国等における社会的課題の解決にも大きく貢献するもの。このため、アジア各国への国際貢献・国際協調の観点からも、我が国発の課題解決モデルをユニバーサルモデルとして汎用化し、積極的に提供していくことが重要。

■ ユビキタス技術の国際展開:
我が国がこれまでに各種知見・ノウハウを蓄積してきたユビキタス関連技術のグローバル展開は、途上国のニーズを充足するうえでも有効であり、戦略的に国際展開を進めることが必要

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社会インフラシステムの国際展開については、

新成長戦略 ~「元気な日本」復活のシナリオ~

 特にアジアにおける中間所得者層の成長が著しいこと、また、環境問題や都市化等、我が国が先に直面し、克服してきた制約要因や課題を抱えながら成長していることは、日本にとって、大きなビジネス機会である。(P20)
 環境技術において日本が強みを持つインフラ整備をパッケージでアジア地域に展開・浸透させるとともに、アジア諸国の経済成長に伴う地球環境への負荷を軽減し、日本の技術・経験をアジアの持続可能な成長のエンジンとして活用する。(P21)

新たな情報通信技術戦略

 情報通信技術の利活用による、環境、医療、行政サービス、災害対応など様々な社会経済活動のスマート化・インフラの高度化をめざすアジェンダを提案するべく、関係府省の連携の下、具体案を検討する。

具体的なプロジェクトとしては、

● ICTを組み込んだ次世代インフラシステムの構築

 ICTを組み込んだ次世代インフラシステムの国際展開を図るため、ロードマップを策定したうえで、① 総合的なプロジェクトを組成するための国際展開体制(コンソーシアム)の組織化、② 先進的ICTシステムのモデルを実証・構築、③ 具体的なグローバル展開活動を関係府省と連携しつつ推進。
 我が国が強みを発揮しうる主要システムの例は、以下のとおり。
① 交通分野(新都市型交通システム:IC乗車券、ITS(ETC、VICS) 等)
② 環境・資源管理分野(センサーネットワークシステム:スマートグリッド、広域施設管理、水資源管理 等)
③ 防災分野(緊急通報システム:防災無線、ワンセグ放送 等)
④ 物流分野(物流管理システム:電子タグ 等)
⑤ 教育(e-ラーニングシステム:電子教科書 等

● 最先端のICTインフラの国際展開の加速

 地上デジタル放送、次世代ワイヤレス、次世代IPネットワーク等の我が国が強みを発揮しうる最先端のICTシステムの国際展開を加速するため、国際展開のための国内での連携体制を整備したうえで、相手国におけるモデルシステムの構築・運用、各種セミナー、ミッション派遣、人材育成等を積極的に実施。
 こうしたICTインフラの中南米、アフリカ、アジア等への積極的な展開活動を推進

● 「アジアユビキタス特区(仮称)」の実現

 我が国がこれまで蓄積してきたユビキタス関連技術に関する国内での実証実験等の知見やノウハウ等の国際展開を目指すべく、相手国のニーズを満たす分野についてモデル地域を設定の上、相手国と共同でモデル事業等を実施。その際、韓国の「U-City」政策や、中国の「物聯網」(感知中国)等との連動に配慮しながら、まとまりを持った形で推進すべき

主な取り組みとしては、

■ ICTを組み込んだ次世代インフラシステムの構築
 次世代社会インフラの海外展開を行うにあたり、関係府省と連携し、検討・推進体制を整備した上で、対象となる国や分野に関する調査分析を行い、戦略ロードマップを策定するとともに、情報通信技術関連システムの海外展開に関連する我が国の技術の国際標準化、官民一体となったファイナンス支援及び人材育成等を推進する。

● 次世代社会インフラの国際展開
2.主な目標と期限
 2010年度から、次世代社会インフラの展開の対象となる国や分野の調査分析を行い、戦略ロードマップを策定するとともに、2013年度までに、システム構築・運用・サービスビジネスの提供について複数の案件を獲得する。

● 情報通信技術コンソーシアムの組成と国際展開の推進
 我が国の高い技術力や経験を活かし、ICTグローバル・コンソーシアムの組成を支援するほか、情報通信技術関連システムの海外展開に関連する日本の技術の国際標準化、ファイナンス面での海外展開支援等を推進する。
 2010年度から、コンソーシアムによる国際展開の対象となる国や分野の調査分析を開始し、戦略ロードマップを策定するとともに、2013年度までに、システム構築・運用・サービスビジネスの提供について複数の案件を獲得し、2014年以降、世界各国での本格導入を開始する。

■ 最先端のICTインフラの国際展開の加速
● ICT海外展開の推進
 我が国が強みを有するICTシステムの国際展開活動を加速するため、官民一体の連携体制の下、システムごとに、相手国の実態・ニーズを踏まえたロードマップを作成し、当該ICTシステムの展開を図るための調査の支援、モデルシステムの構築・運営、セミナーの開催等を戦略的に実施することにより、我が国のICT産業の国際標準化の推進を含めた国際競争力強化や成長力強化の支援を行う。
 具体的な取り組み内容は、以下のとおり。
 地上デジタル放送日本方式(ISDB-T)等の海外展開の推進
既にISDB-Tを採用している国(ブラジルなどの中南米諸国、フィリピン等)とISDB-Tインターナショナルフォーラムを通じた連携による働きかけや、デジタル放送に関連する技術との組み合わせによる実証実験の実施等により、技術の「見える化」を図ることでISDB-T等の国際的な普及を実現する。
 アジア地域におけるワイヤレスシステムの海外展開の推進
我が国の高い技術力や経験を活かし、アジア諸国と連携して、安心・安全や環境負荷低減に資する次世代ITS、センサーネットワーク、防災無線、衛星通信等のワイヤレス技術の開発や標準化を進めることにより、アジア地域におけるワイヤレスシステムの展開を実現する。
 国際標準化海外普及の推進
モデル・システムを構築するとともに、相手国政府に対する調整等を行うことにより、我が国の技術が採用された規格のグローバル展開を図る。

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■ 「アジアユビキタス特区(仮称)」の実現
● アジアユビキタスシティ構想の推進
 ユビキタス特区事業等により確立された我が国の先進的なICT利活用技術の海外展開を支援することにより、当該地域での社会的課題の解決に役立てるとともに、我が国発ICTの国際標準化の推進、ICT産業の国際競争力の向上を目指す。
 具体的には、これまで確立された多様なICT利活用技術や知見・経験をアジア各国と共有、諸課題の解決に役立てるため、相手国との連携により、相手国のニーズや事情に合致した複数のICTモデルを特定地域で集中的に実証し、相手国での社会的課題の解決や更なる成長に資するモデル都市の構築を目指す。
 今後、対象国を選定の上、①当該国政府と実証すべきICT分野や技術・制度面の課題等の洗い出し・調整、②相手国のニーズや事情に応じて改良したICTモデルの特定地域での実証実験の実施、③実証実験の実施に伴う人材育成、④実証結果を踏まえた当該国ICTモデルの確立等の支援を行う。
 この過程を通じて我が国のICT利活用に係る技術や知見、ノウハウの海外普及を促進し、我が国技術の国際標準化の実現や我が国ICTシステムの相手国導入等を通じた国際競争力の強化を図る。
 2011年度より、相手国のニーズや事情に合致した複数の我が国の先進的なICTモデルについて、特定地域で集中的に実証実験を行い、2013年度以降の成果展開を目指す。

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以上です。

今後具体的な検討が進められていくと思われますが、ICT分野における国際展開は重要となっていくと考えられます。本報告書には、クラウドコンピュティングというキーワードが見られませんでしたが、クラウド基盤の海外展開、つまり、日本発のクラウドサービスをパッケージ化してアジアなどの海外ユーザに利用していただくための政策的な検討も重要となってくのではないかと感じています。

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