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ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

クラウドで生まれる経済価値とは?

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クラウドコンピューティングが進展がする中で、最近ではテクノロジーの議論よりも、エコシステムや課金の仕組みなど、エコノミー(経済)の視点で議論するケースが増えてきているという印象を持っています。そこで、クラウドと経済との関係で少し整理してみたいと思います。

「規模の経済」の視点

グーグルなど世界を代表するクラウド事業者は、世界各地で巨大なデータセンターを建設し、「規模の経済(スケールメリット)」をいかし、高性能なサービスを無料もしくは安価にサービスを提供しています。クラウドコンピューティングの普及で最も意識されているのが規模の経済といえます。今後も、クラウドビジネスが進むことになれば、スケールメリットをいかしたビジネスは有利に働くことが考えられます。

「範囲の経済(共有する経済)」の視点

クラウドコンピューティングはよく「巨大なエコシステム」と呼ばれます。これまでは、企業ごとにサーバ設置し、システムを構築するといった「作る経済」でしたが、これからは、巨大なコンピューティングリソースを多くのユーザで共有する「範囲の経済(共有する経済)」によってコスト削減と自社のコアビジネスへの選択と集中が可能となります。

「貨幣経済」の視点

クラウドコンピューティングの特徴としては、従量課金があげられます。ユーザがサービスを利用したいときに必要な分だけ利用できるというのがメリットとしてあれがれます。その分、ユーザ側に提供する課金サービススキームが非常に重要となります。先日、「クラウドで変わるお金の流れ」で少し整理をさせていただきましたが、クラウドの普及によりお金の流れが複雑になり、ユーザ側にとって利便性の高い課金モデルを提供できる事業者が競争優位に働くことでしょう。

「高付加価値経済」の視点

クラウドが普及することにより、構築・運用・保守といった業務は必然的に減少していくことになります。そのため、企業の情報システム部門にとっては、企業経営の視点で業務を遂行していく必要が出てくるでしょう。また、サービスを提供する事業者にとっても単なる価格競争だけでなく、ユーザ側がサービスを使って新たなビジネスを展開できるといったような付加価値の高いサービスを創造していくことが重要となります。クラウドの普及によって付加価値の高い経済モデルへの貢献が期待されます。

「ミクロ経済」の視点

経済理論には「マクロ経済」と「ミクロ経済」が二大理論としてあげられますが、クラウドの場合には特に需要と供給、そして価格論の視点が重要となります。クラウドの流れはミクロ経済に見られるような市場構造を十分に把握した上でビジネスを展開していくことが重要となるでしょう。

「公共経済」の視点

政府は「新成長戦略」などの多くの政府の重要な報告書の中で「クラウド」の重要性が記載されています。クラウドは電子政府・電子行政、医療・教育などの公共分野において、重要な社会基盤となると考えられます。つまり、クラウドという「公共財」をどのように整備し、公共分野に還元していくかというのは重要な政策テーマとなっていくでしょう。

「国際(アジア)経済」の視点

クラウドの流れは世界で起きており、グローバル視点で経済を考えていく必要があります。総務省の公表資料によると、海外発のトラフィックは年々増加傾向にあり、2010年以降に50%を超えることが予想されます。このまま、海外発のトラフィックが増えていくと、情報の空洞化が加速化していくことが懸念されます。そのため、アジアへのクラウドサービスの展開など、アジアの中のクラウド経済圏をしっかりと検討していく必要があるでしょう。特に、新興国などはこれから大きく成長が見込まれる市場であり、クラウドの利用が進む市場と考えられます。

「情報経済」の視点

クラウドの流れが進むと、経済活動において多くの情報が流通することになります。「ヒト」「モノ」「カネ」が経済学において重視されてきた要素ですが、情報の流通や活用のあり方、そして扱いのルールなどのクラウド上の「情報財」のあり方について、経済活動においてさらに重要な位置づけを占めていくことになるでしょう。

「投資と回収」の視点

クラウドを事業の柱として展開していくためには、データセンターやサービス開発、そしてベンチャー企業の買収など、投資ビジネスが非常に重要な位置づけとなります。サービスを展開した中で、どの程度の資金を回収できるか、投資リスクは何か、収益が黒字化するか、など、「投資と回収」の視点が事業者には益々重要となっていくでしょう。

以上のように、今後、クラウドが今後本格的普及していくためには、技術視点の議論だけでなく、経済的な視点が重要となっていくのではないかと考えています。経済活動の中でのクラウドによる経済価値のあり方が、今後注目されていくのかもしれません。

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