デジタル教科書の政策のまとめとこれから
原口前総務大臣から新しく片山総務大臣になりました。副大臣や政務官も大幅に代わり、今後の情報通信政策がどのようになっていくのか、その行方が注目されます。
原口前総務大臣が特に力をいれいたのが、「光の道」そして、「教育とICT」です。私が、以前、八重洲ブックセンターのサイン会に参加した際にも、この二つのキーワードが特に印象に残りました。
教育分野では、総務省が2009年12月に公表した「原口ビジョン」では、「フューチャースクールによる協働型教育改革」を掲げ、「デジタル教科書を全ての小中学校全生徒に配備(2015年)」という目標設定を提示されました(関連記事)。2015年までにデジタル教科書を全ての小中学校全生徒に配備するという目標設定は、とても印象に残りました。
また、2010年の5月に公表した「原口ビジョンⅡ」では、デジタル教科書については、具体的な数値目標については、具体的な数値目標が設定されていませんが、以下のとおりで示されています(関連ブログ)。
■ ICTによる協働型教育改革の実現
● 2020年までに、フューチャースクールの全国展開を完了
- 2010年度より、「フューチャースクール推進事業」を着実に推進
- タブレットPC、デジタル教材(電子教科書)等を活用し、児童・生徒が互いに学び合い、教え合う「協働教育」についてガイドライン化(2010~12年度)し、これに基づき全国展開を計画的に推進
以前のブログ「デジタル教科書に関する取り組みについて(まとめ)」でもご紹介させていただきましたが、その他のデジタル教科書に関する取り組みについて紹介しましょう。
総務省では、5月24日「ICTを利活用した協働教育推進のための研究会」を開催し、6月1日に開催された第一回の研究会では、フューチャースクール推進事業の実施スケジュール(案)が公開されています。
また、総務省は、8月6日に、「フューチャースクール推進事業」の実証研究に係る請負先と実証校の決定を公表し、東日本エリアの請負先がNTTコミュニケーションズ、西日本の請負先が富士通総研となっています。今年度中に、東日本と西日本エリアで5校、合計10校での実証実験が実施され、3月末にはガイドライン策定や報告書を提示するといった、スケジュールとなっています。
IT戦略本部が6月22日に公表した「新IT戦略」では、教育分野の工程表が示されており、デジタル教科書などについては、文部科学省、総務省による連携施策であることが、伺えます。
文部科学省では、今後の学校教育(初等中等教育段階)の情報化に関する総合的な推進方策について有識者等との意見交換等を行うため、「学校教育の情報化に関する懇談会」を開催し、7月末時点で、既に8回の懇談会が開催されています。
7月28日に開催された第8回の懇談会では、「教育の情報化ビジョン(骨子) 」が公表されています。21世紀にふさわしい学びと学校教育の情報化においてポイントとなるのは、以下のとおりです。
- 情報教育 ・・子どもたちの情報活用能力の育成
- 教科指導における情報通信技術の活用 ・・わかりやすい授業の実現
- 校務の情報化 ・・情報共有によるきめ細かな指導。教育の校務負担軽減
教科指導における情報通信技術の活用においては、
- 指導用デジタル教科書
- 学習用デジタル教科書の開発、情報端末
- デジタル教材
- 超高速の校内無線LAN環境の構築
- 電子黒板、プロジェクタ、実物投影機、地上デジタルテレビ等の提示用デジタル機器の活用
があげられています。
平成23年度の総務省及び文部科学省の概算要求を少し見てみましょう。
総務省のフューチャースクールの推進事業においては、平成22年度の10億円から、3倍近い28.7億円の予算を計上しています。新IT戦略での教育分野での工程表を見る限りでは、平成24年度、25年度までは続くことが予想されます。
文部科学省の概算要求の要望項目を見ると、デジタル教科書・教材や教育支援システムのあり方などの実証研究において、18億円の要望額をあげています。
文部科学省では、鈴木寛副大臣がそのまま推進されるのではないかと推測されますが、総務省では、大臣も副大臣も代わっています。総務省では、これまで「光の道」の議論の中の利活用におけるアプリケーションとしてデジタル教科書の活用について何度か議論となってきました。全体の政策の中で、どのような検討がなされ、推進していくのか、その動向が注目されます。
小学生の子どもを持ち、そしてPTA副会長として、利用者視点からもいろいろ検証や議論をしていければと考えています。