スマートグリッドの概要と日本政府と企業の取り組み等をまとめてみた
最近、ITを使って電力を効率的に供給する次世代送電網である「スマートグリッド」が注目を浴びています。
スマートグリッドとは、簡単に情報ネットワークと制御装置を使って電力の流れを供給側、需要側の双方向から自動調整することができる高効率・高品質・高信頼度の電力供給システムです。二酸化炭素(CO2)排出量削減や電力需要平準化に寄与する21世紀の社会インフラとして期待されています。
ポイントとなるのは、住宅などに設置される「スマートメーター」です。電力消費量データを収集し、電力消費量や電気代をリアルタイムに把握することができ、電力消費量を最適に制御し、需要を平準化します。
「スマートグリッド」は、オバマ政権の環境政策「グリーン・ニューディール」の柱の一つです。エネルギー省では、30億ドルを超える技術開発費の補助金において支給対象事業の選定し、実証実験など約70の計画が進行しています。
この「スマートグリッド」のインフラ整備には、今後20年間で、1650億ドルが必要とされており、IBMやGE、そしてシスコシステムズ、グーグルなどの大手IT企業が次々と参入してきています。IBMは「スマートメーター」の提供、GEは電力消費を電力会社に無線経由で提供等、シスコは「Smart Grid Solutions」にてIPインフラの構築、グーグルでは、「スマートメーター」向けのソフトウエアを開発し、実験を始めています。
今後20年間において9000億ドルの需要創出効果があるといわれ、電気自動車やクラウドにともなうデータセンターの増強などに欠かせないインフラであり、企業や家庭の電気料金の引き下げが期待されています。
日本においては、政府は、2020年に太陽光発電の発電容量を現在の20倍(2800万キロワット)に増やす計画をたてており、2030年には、5300万キロワットを見込んでいます。そして、蓄電池だけで容量2億8千万キロワットの場合、6兆円の投資が必要とされています。大規模な投資は、多くの市場創出が見込まれるとともに、電力料金が料金に跳ね返り負担が重くなるという可能性も考えられます。また、発電容量が、1000万キロワットを超えると電圧の上昇や周波数の乱れが生じ、電気の品質が低下してしまうということも指摘されています。
これらの課題を解決し、大容量の消費電力に対応していくためには、「スマートグリッド」の開発を加速化させることが急務となっています。
経済産業省などは、スマートグリッドの取組みを強化していくとし、2009年度の第一次補整予算案の経済産業省関連施策に「スマートグリッド」や「スマートメーター」に関する内容が盛り込まれています。経済産業省は、電力会社等と協力し、実験用の太陽光発電パネルを全国に設置し、太陽光発電と発電所の調査を実施しています。
日本企業においても様々な実証実験の取組みが始まっていますので少し整理をしてみたいと思います。
シャープや関西電力そして、蓄電池開発会社のエリーパワーは、堺市において2010年にスマートグリッドの実証実験を実施することが明らかになっています。堺市などは環境都市推進協議会を5月25日に設置し、スマートグリッドの具体的な実験内容の検討を始め、8月3日から部会ワーキンググループ活動団体を募集しています。実証実験では、太陽光システムを堺市の住宅に設置し、インターネットで結ぶことによって電力を一元管理し、省エネ効果を検証するというものです。そして家庭での太陽光発電の余剰電力を堺市のLRT(次世代路面電車)などに供給する計画をたてています。
東京電力、日立製作所、伊藤忠商事、東京工業大学などは、東工大キャンパスと電力中央研究所でスマートグリッドの実証実験を始める計画をたてています。実証実験では、ユーザ宅に「スマートメーター」を設置し、太陽光や風力発電の自然エネルギーで発電した電力を蓄積しします。そして電力需要にあわせて、送電網に組み込んだ蓄電池から放電するなど、システム全体を制御し、CO2削減と電力品質の向上を目指しています。
電力中央研究所では、電圧制御用の「ループ・パワー・コントローラー」の試作機を開発しています。
日本企業は米国における「スマートグリッド」市場にも参入しています。国内の数十社が共同で米南部において2010年にもスマートグリッドのシステムを稼動させる計画をたてています。
日米の両国政府(日本は2~3割程度負担:新エネルギー・産業技術総合開発機構<NEDO>)が合計100億円程度を出し、米ニューメキシコ州でスマートグリッドの大規模な実証実験を始める予定です。州内の1000件とビル数件に「スマートメーター」を設置し、太陽光などの自然エネルギーを大量導入する場合の影響などを調査・分析するようです。日本企業は、日立製作所、東芝、日本ガイシ、三菱重工業、清水建設などが参加しています。
九州電力と沖縄電力では、7月1日、離島に「マイクログリッド」を導入し、実証実験を開始することを発表しています。「マイクログリッド」とは小規模分散型電源で主に住宅の電力などの小規模なところで使われます。
電力会社で構成する電気事業連合は、7月3日、「スマートグリッド」の開発を本格展開することを発表しています。太陽光発電の出力予測システム、蓄電池システム、火力発電と蓄電池を組み合わせた需給制御システムを開発し、2020までの導入を目指しています。
その他、「スマートグリッド」に直接関係しないのもありますが、環境に関する取り組みを少し紹介します。三菱重工業グループは、2月に「エコスカイハウス」という太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーで消費の97%をまかなう環境住宅の実験をしています。電気自動車の普及に伴い、経済産業省は、電気自動車の充電拠点の整備に向けて、ガソリンスタンドで充電し、料金を徴収するシステムを開発し、実証実験を今夏に始めています。文部科学省の「スクールニューディール」にでは、全国の学校に太陽光発電システムを設置する計画をたてています。
日本の電力環境は欧米と比べると信頼性の高い送配伝送網はある程度構築されてといわれています。また、配電の自動化用の光ファイバーが既にきており、スマートグリッドに必要な通信インフラは整っているといえるでしょう。政府は2010年内にブロードバンドが使えない地域がゼロになるという見通しをたてており、通信インフラの環境は十分といえるでしょう。
ざっと、自分なりにまとめてみました。まだまだ勉強不足のため内容が正しいかどうか自信がないところもありますので、参考程度としていただければと思います。