Open Cloud Manifesto(オープン・クラウド宣言)」
クラウドコンピューティングが普及が進むと、様々な弊害も出てくることが予想されます。異なる国の異なる事業者が提供すれば、異なる仕様でサービスがユーザ側に提供されることになれば、雲のようにサービスが使えるといっても、不便さを感じてしまうこともあるでしょう。
国境を越えたクラウドサービスを享受できる反面、異なる文化や異なる国々の制度がある中において国際紛争がこの先頻繁に起きるというのも否定はできないでしょう。
また、異なるクラウドサービス間の相互接続ということが困難になるという弊害も出てくるかもしれません。「ITU-Tのクラウドコンピューティングに関するレポートを読んで」で紹介をさせていただきましたが、ITU-Tはクラウドコンピューティング等の普及に伴い、標準化を検討していくことが重要であるという見解を示しています。このような国際機関が標準化に向けて動いていくということは十分に考えられるのではないでしょうか。
3月30日(現地時間)、IBM、Sun Microsystems、SAPなどクラウドコンピューティングのサービスを提供している事業者が、クラウドコンピューティングの選択の自由や柔軟性オープン性を確立するための原則をまとめた「Open Cloud Manifesto」を発表しました。この取り組みのイニシアティブをとっているのは、IBMのようで、現時点で以下の企業や団体等が参加しています。
Akamai、AMD、 Aptana、 AT&T Corp、Boomi、Cast lron、 Cisco、CSC、The Eclipse Foundation、Elastra、EMC、EngineYard、Enomaly、F5、GoGrid、Hyperic、IBM、Juniper、 LongJump、North Carolina State University、Nirvanix、Novell、Object Management Group、Open Cloud Consortium (OCC)、Rackspace、Red Hat、The Reservoir Project、RightScale、rPath、SAP、SOASTA、Sogeti、Sun Microsystems、Telefonica、The Open Group、VMWare (38団体)
この宣言の中では、クラウドコンピューティングを採用し導入する際の課題等について以下の点をあげています。
- 「セキュリティ」
- 「データとアプリケーションの相互運用性」
- 「データとアプリケーションのポータビリティ」
- 「ガバナンスと管理性」
- 「監視性」
また、オープンなクラウド環境のゴールとしては、
- 「選択性」
- 「柔軟性」
- 「スピードとアジリティ」
- 「スキル」
の4つの観点から述べられています。
一方、MicrosoftとAmazonは不参加を表明しています。マイクロソフトのクラウドの担当者が、ブログの中でコンセプトには賛同するものの、標準化に伴い、一握りの企業がクラウドコンピューティングの発展、そして市場を支配しようとしているように見えるということを指摘しています。
クラウドコンューティングが発展するためには、オープンな環境の中でイノベーションを生み出し、業界の成長にあわせて時間をかけて策定すべきであるということも指摘しています。
今後、クラウドコンピューティングの標準化は、「Open Cloud Manifesto」だけでなく、政府、国際機関、民間企業や団体等様々なとこで動きが出てくることが想定されます。
「Open Cloud Manifesto」の動きは、いずれにしてもクラウドコンピューティングが本格的に動き出したといえるでしょう。