Web2.0時代の情報モラル教育
数年前に私自身公立学校をいくつかまわり、児童にネットの危険性等、情報モラルに関して説明したことがあります。現在はWeb2.0を活用する時代にもなっており、少しずつ教える内容も変わってきていることと思います。
まずネガティブな情報から
「学校裏サイト」と情報モラル
学校の世界では、まだ掲示板の利用が中心となっています。ネットスター株式会社が、2006年12月に実施した「第五回家庭におけるインターネット利用実態調査」によると小学校で2chを利用している人は12%となっています。全国の小学校の児童数が718万人(平成18年確定値)と考えるとおおよそ8万人以上の児童が2chを利用していると考えると少し怖い気がします。
小中学校においてインターネット環境も整いつつあります。児童も自宅などでもインターネットを使うようになり、様々な調査等を見てもネットの検索能力や情報発信能力は確実に向上しています。このようにWeb2.0活用の土台は作りはじめられつつあると考えることができます。
おそらく学校の中でWeb2.0という言葉は使われることはほとんどないとないと思いますが、その概念を教えていく必要はありそうです。例えば、ウィキペディア(Wikipedia)のように百科事典をみんなの力でつくるという取組みや、はてなマップのようにみんなで地図情報を共有するという取組み等は、ユーザの信頼関係で成り立つものです。このような概念をマッシュアップと呼びますが、児童が実際にできるかどうかは今後の検討が必要ですが、多くの人が協力しあい、新しいコンテンツやサービスを生み出しているということを児童に教えていく必要が出てきているかもしれません。
Web2.0の良さを少し述べましたが、一方で多くの危険性をはらんでいます。
JavaScriptを悪用してブラウザを狙うケースという技術的な点もあれば、児童が個人情報を無意識のうちに登録してしまい、事件に巻きこまれる可能性も考えられます。よって、Web2.0の活用方法についても体系的に児童に教えていく必要がありそうです。
児童にブログやSNSを活用させるという意見が一部出てきていますが、実際はかなりの検討が必要と考えています。先ほど述べたように個人情報が漏洩するリスクが考えられますし、SNSやブログも「学校裏サイト」のように荒れる可能性も否定できません。
今後学校でブログやSNSを活用するのであれば、
・新聞プロジェクトのようにブログと学級新聞等の取組みと連携させる
・SNSを学習意欲向上の補助ツールとしてクローズドな範囲で活用する
等工夫が必要であると感じています。
対象がちょっと違いますが、学術出版社大手の「Thomson Learningの調査結果(5/7)」によると「文系大学職員の50%近くがSNSの教育的価値を認めているという」結果も出ています。またSNSの場合は、例えば教科別のコミュニティをつくり、児童の質問に対して他の児童が答えたり、先生がアドバイスをしたりとすることによって、授業に遅れている児童をフォローする学習補助ツールになるということも十分考えられます。
Web2.0の活用により、児童の情報モラルがあがるであろうと述べてきましたが、仮にその効果を確認できたとしても、先生側のリテラシーと稼動も考慮していかなければなりません。2004年に文科省が全国の校長・教員を対象にした調査では、「最近1年以内に自分の授業で情報モラルの内容を扱ったことがある」と回答したのは18%というのが現状です。先生は、学校の行事や児童・保護者の対応でかなりハードな業務をこなしていますので、大きな負担になるというのは容易に予測できます。
ではどうしていくべきでしょうか? 現在でも総務省、文科省、警視庁や多くのボランティアや企業の支援に支えられている取組みがあります。また近いうちに対応するWeb2.0にも対応する研修プランやテキストが出てくると推測されますので、同様に外部の支援を積極的に活用していくべきでしょう。
まとめ
インターネットは、当初軍事利用そして一部のマニアから広がりました。その当時はフォーラムや掲示板等は今よりはモラルが保たれていました。普及期に入り、未成年掲示板を利用するようになり、現在の社会問題に至っています。Web2.0も普及のプロセスこそ違いがあれ、大人たちを中心に信頼関係の中で情報を発信・共有しているという取組みを伝え、社会全体のモラルを高めていく作業が必要です。そういった意味でちょうどいい時期にWeb2.0というコンセプトと技術が出てきたのではないかと感じています。