拍のトリックがクセになる『ティル・オイレンシュピーゲル』
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次回の演奏会曲目であるリヒャルト・シュトラウスの『死と変容』のCDを聴いている。今手元にあるのは、このほかに『ティル・オイレンシュピーゲル』などが入っている。
本来『死と変容』を聴くべきところだが、仕事の合間の気分転換に聴くには、死の病に苦しみ、やがて死して魂となる、みたいな展開の音楽はあまりよろしくない。結果的に、気分転換のためには、『ティル』に手が伸びる。
しかし、このおどけた曲は、冒頭からなかなかの曲者である。
譜例:
譜例は、冒頭6小節目からの、ティルのテーマである。ホルンが静かに、しかし、リズミカルに、そしてやがて力強く吹くこの旋律は、6拍子のようで、実は字余りである。矢印で示したソの音(実音だとド)が、1小節ずつ1拍うしろにずれていくことに注意してほしい。
リズムを作っているのは、ホルンだけで、ヴァイオリンはストイックに16分音符を刻むだけだ。これは、何気なく進行しているようだが、リズムのトリックをちゃんと認識するように感じて演奏するには苦労するところだ。
ちなみに、のだめの正月スペシャルでは、千秋が指揮者コンクールでこの曲を振り、正に譜例の箇所でホルン奏者に難癖つけて自滅していた。「何気なくトリックを演じているんだから、触れてくれるな若造よ」というところか。
さて、このようなトリックを理解して曲を聴くのは楽しい。リズムのずれを理解して、再現してみせたりしていると、つい気分転換後も、ティルが頭を占領することになる。
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