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キモチイイだけでは終われないラフマニノフ

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次の演奏会に向け、ラフマニノフの交響曲第3番の練習が佳境に入っている。ラフマニノフといえば、ロマンチックな旋律。さぞかし練習も、甘い旋律でキモチイイだろうと思いきや、そうでもない。

実をいうと、ラフマニノフをラフマニノフらしくしている要素は、そんな甘美な旋律だけではない。ラフマニノフの音楽をよく映画音楽みたい、と評するが、その元祖映画音楽的なところはむしろ、チャカチャカしたリズミカルなテーマ(ときとしてキラキラした感じになるところが、なおさら)である。

そして、そのような場面には、しばしば三連符のリズムが登場する。例えば、交響曲第3番だと、第1楽章で主題が登場した直後から現れる。第2楽章の中間部も、ほとんど三連符に支配されている。

だが、曲者なのは、こうした三連符のうごきが、ときにウネウネ感を伴ってつかみどころのないリズムとなる場合があることだ。典型的なのが譜例1。これは、第1楽章のクライマックスに至るところだ。

譜例1:
Rach03_1

リズムといい、ダイナミックスといい、なんとも表現しがたい。注意深く楽譜を見ると、ところどころアクセント(>)やらテヌート(-)やらがある。速いテンポでゆれるリズムで、強弱つけながらニュアンスをつけようにも、一瞬で流れていってしまう。なんで気持ちよくクライマックスに行かしてくれないんだ、と憤る箇所だ。

こういう場所は、演奏して慣れるというものでもなく、冷静に出すべき音をアタマの中で分析しておくことが肝要だ。本番では、クライマックスに向けて血が上っているだろうからなおさらだ。気持ちよく血圧を上げられるように、冷静なときに分析しておこうということだ。

ところで、このような箇所、しばしば三連符の最初の音が、前の拍からタイでつながっている。これが、まさしくビートを不明瞭しているのだが、往々にしてこういう場面は、ビートを感じて前に攻めていかなければならない。

同じような文脈の箇所が、交響曲第2番にもある。

譜例2:
Rach02_1

譜例は、ヴァイオリンとチェロだが、相補うように三連符がからみ、ビート感を失わせる。この場合、ヴァイオリンの四分音符に付いているテヌート(-)がミソで、これを長くと解釈するのではなく、押すように、と考えれば、ビート感を作れる。

最終的に、微妙な押しやら引きやら、そういったニュアンスが大事で、クルクル指をまわさなければならない大変なところでも、腰がモノをいう、非常にチャレンジングな曲であるといってよいだろう。キモチイイだけでは終われないのだ。

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