毎年大晦日、テレビ東京系列でクラシック音楽によるカウントダウンで年越しする東急ジルベスターコンサート。今年は、どうやらレスピーギの交響詩『ローマの松』より 《アッピア街道の松》 で年越しするらしい。
午前0時が近づくと、0分ぴったりに曲が終わるように演奏を開始する。ほんとにぴったり終わるのか、とハラハラドキドキしながら、音楽の感動とともに年越しを祝おうというわけだ。決められた拍を刻む音楽は、ちゃんと計算して実行しさえすれば尺に合わせることはたやすい。しかし、人間が刻む拍には誤差があるし、音楽的に不自然な微調整はご法度となれば、なかなか時間通りにというのは難しい。
ちなみに、今回のローマの松、スコア指定のテンポは Tempo di Marciaで、66。4拍子だから、1小節あたり3.64秒使うことになる。全部で78小節あるから、全然テンポが変わらないと仮定すると、284秒(4分44秒)。11時55分16秒から始めればよいわけだ。もちろん、実際には、最後にテンポは重くなるし、途中微妙にリタルダントするところもあるだろう。それらを考慮すると、11時55分10秒ぐらいか?
しかし、一定の拍でもってドンピシャのところに持ってくるのは、実際至難の業だ。例えば、テンポをわずか2速くして、68としてみよう。メトロノームでカチカチやっても、その違いはほとんど分からない。だが、この場合、テンポ一定での総所要時間は、275秒。なんと、9秒も違ってくる。ちょっと速かったかぁ、と言って、最後のフェルマータを9秒も伸ばすわけにはいくまい。
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譜例 |
おもむろに始めたテンポで決まってしまう出だし部分。微妙な差を意識してテンポ調整するのは至難の技だ。参考までに、 |
実際の演奏を見ると、あからじめ設定したチェックポイントで誤差を確認して、少しずつ微調整しているようだ。マラソンで、区間ラップを計って、ペース配分するのと同じ。
このような作業を見ると、これは邪道だろうと考えてしまいがちだが、そもそも時間芸術である音楽は、尺についての調整を求められてきた。オペラやバレエ、ショーなどの生演奏はもちろん、映画などの録音ものでもそうだ。例えば、「アレクサンドル・ネフスキー」に代表されるようなプロコフィエフとエイゼンシュテインの共同作業では、まだ発展途上にあった映画技術の中、映像の細かい尺に合わせて作曲するというところまで詰めている。
ということで、ジルベスターも、制限された時間枠内で、いかに音楽表現を最大化できるか、という視点で鑑賞するとよいだろう。では、よいお年を!
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藤井 等
ボーランドの開発ツール事業分離発表を受け、数年ぶりにマーケティングに復帰し、2009年からは日本法人代表へ。
仕事に関連したソフトウェア開発やマーケティング、ビジネスに関する話題、週末には音楽の話題を。
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