語られないリーダーシップの資質:愛嬌
ソフトブレーンの創業者の宋文洲さんがtwitter上でつぶやいた言葉が面白いと感じた。
『菅総理の不人気理由の一つは彼の愛嬌のない言葉にあるだろう。小泉元総理の人気理由の一つはその愛嬌たっぷりのトークにあるだろう。リーダーシップの無さばかりが強調されるが、セックスの不相性を価値観の相違に転嫁する夫婦のようなもんだ。』
彼の性格に加え、中国人という立場もあって、大胆な表現をする宋さんだが、リーダーシップを形作る要素のひとつに「愛嬌」があるというのは興味深い。
「愛嬌」という言葉を英語で表すのは難しい。
直訳するとlovablenessとかwinsomenessなのだろうが、大人に対する褒め言葉に私は聞こえない。
でも、日本におけるビジネスの世界で「あいつは愛嬌があるよね」という言葉は、ちょっとおどけたトーンではあるが、明らかに褒め言葉だ。
『ひょうきんで憎めない。相手の気持ちをなごませるのが上手。甘え(人にものを頼むのが)上手で、適度にすきがあって、気の置けない人。
=>でも、そこそこ自立しているから、思わず周囲が助けてあげたくなるような人。だから、あいつと仕事をしたがる人が多いし、あいつと仕事をするとうまくいく。』
のようなニュアンスを私は感じるのだ。
そういう観点からの「愛嬌」の同意語には「素直」があり、多くのビジネスマンはその資質が好きである。
好んではいるのだが、表だって、それがリーダーの資質のひとつであると語る人は少ないだろう。
「リーダー=進むべく道を指し示す人」の側面から考えると、なんとも反対の資質と言えなくもない。
しかしながら、「リーダー=進むべく道の賛同者を増やし一緒に進む人」という側面から見れば、確かに愛嬌はリーダーシップに必要な資質である。
このような資質は表だって語られることが少ないのはどうしてだろう?
生まれ持っての資質で後天的に獲得できるようなスキルの匂いがしないからだろうか?
リーダーシップに「父権主義」的な匂いを感じ、その観点から嫌われるのであろうか?
「愛嬌」という言葉でこの資質を表現するのが日本的だとしても、他の国でもこのような資質は重要視されていると思う。
例えばアメリカでは愛嬌の代わりに「ユーモアのセンス」という言葉で、リーダーに必要な資質として表だって言われている。
またブッシュとゴアが戦った大統領選で「すきのない理知的なお兄さん」より「やんちゃな憎めない兄貴分」が勝ったのはまさしく「愛嬌」の要素を当時のアメリカ人が重要視した表れだと思うのだが。
ちなみにビジネスにおける「愛嬌」や「素直」は後天的に獲得できるスキルだと私は思っている。
一緒に仕事をしたい、助けてあげたいと思わせる働き方は、ひとつではなく、個人個人のやりかたで達成できるものだから。