日本人留学生減少:時代が違うので、内向き志向と大騒ぎしすぎるのもどうかとは思う。
文科省発表によると、2008年日本人留学生が66,833人で前年に比べて11%減り、4年連続の減少だそうだ。
不況や就職活動の早期化が主な理由と推測されている。
20年も前に大枚を払って留学し恩恵を被った身としては、「チャンスがあるのなら是非留学を」と勧める。しかしながら、20年前と今では日本の置かれている状況は違うので、内向き志向で嘆かわしいと騒ぎすぎるのは、若者に対して、ちょっと失礼だと感じる。
留学というからにはまずアカデミックに学ぶことが第一義であるが、海外との格差が少なくなり、国内で勉強したほうが、費用対効果に優れている分野も多くなった。
昔は圧倒的に日本が遅れていてアメリカで学ばなければいけないものが確かにあった。ビジネススクールはその最たるものだ。20年前はビジネススクールと言えるようなものはほとんどなかった。
しかしながら今や、同じ時代に留学した堀さんが立ち上げたグロービスなどマネジメントを学べる学校も増えたし、主だった大学でも授業を開催している。
昔は、英語で授業を行うのは、上智大学の比較文化やICUなどくらいしか思いつかなかったが、今や英語でマネジメントを学べるサイコム・ブレインズやベルリッツ、大学のコースもある。
日本で学んだほうが役立つ知識も多い。例えば、アメリカのビジネススクールは当然ながらアメリカ国内事情特有な授業も多く、米国の会計基準を習うより、まず日本の会計基準や会計用語を理解したほうが日本人には有意義だろう。
アメリカで仕事をするのならともかく、アメリカで仕事をしない可能性があるのに、費用対効果を考えて足踏みするのは当然だ。
また日本国内の多様性も進んできており、外国人と接する機会は私が子供の頃とは全く違う。
私は40年ほど前に港区の幼稚園に通ったが、クラスに外国人はゼロであった。しかるに息子が通う新宿区の保育園は20人中4人。日本にいても外国人とつきあうようになるのが、今の若者たちだ。
海外から日本に留学している学生も、2010年5月時点で141,774人で前年に比べ5%増だ。
自分の過去は否定したくないので(笑)、異国で学び、生活し、様々な人と交流することは大いに勧めるが、日本の中にいても、様々な価値観をもつ人々と学び、仕事が出来る(しなければならない)のが、今の若者たちの置かれた環境なのだと思う。