社長のインタビューを英語化するときの注意点:謙譲の美徳をどうするか?
仕事がら社長や経営幹部のインタビューを行うことがある。経営のトップに立たれる方はどなたも魅力的で、かつ謙虚な方が多い。
「社長になったのは運がよかったのですよ」
「皆に助けてもらってここまで来ることができました。決して私の一人の力ではありませんでした」
もちろん、そんな理由で経営のトップになったわけではないことは、お話をしているとびんびん伝わってくるし、インタビュー記事を読んで日本人の読者が勘違いすることもない。
さて、しばらくして、「あのインタビュー記事は大変好評だったので英語のサイトにものせましょう」ということになった。
そこで、唸ってしまった。
上記の表現を英訳することは簡単なのだが、たぶん欧米人からは「うけない」であろうと。
「いかにリーダーシップがあって社長になったのか」という趣旨のほうが西洋式カルチャーにいる人々に対してはイメージがいいだろう。
理想論は「海外向けを意識してインタビューをし直す」ことだが、トップの方がお忙しくそうもいかず、かと言って、担当部署の判断で作り直すのも難しかったこともあり、翻訳の範疇で出来るだけマイナスのイメージにならないよう処理した。
私自身の失敗もたくさんある。
朝礼でちょっとよいこと言ったかなぁと自画自賛し、「そうだ、アメリカ向けのプロモーションに使おうかな」と当社のネイティブ翻訳者に日本語原稿を渡し、頼んだことがある。
できた翻訳を見て、びっくりした。そして翻訳者に謝った。「ごめん、私の考えが足りなかったね。こういう風に変更してくれる?」社内の翻訳者なので、私の趣旨を理解して翻訳してくれているのだが、それでも無理があった。
当たり前のことだが、日本人の社員に向けて発したメッセージと、米国の潜在顧客に対するメッセージが同じでよいはずもない。
ましてや日本語のゴロがよいからと作ったキャッチコピーなど翻訳は出来ない。
日本語のコンテンツは日本人をターゲットにしている。翻訳における不満は、もちろん翻訳そのものの品質トラブルもあるのだが、そもそものコンテンツに問題があるケースも多いものだ。
日本人以外が読むことを念頭に、オリジナルの日本語コンテンツをほんの少しだけ海外向けに書き換えるだけで、翻訳の満足度が変わってくる。お試しあれ。