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「自分だけの武器」を持たねば、フリーランスとしては生きていけない。「オリジナルの戦略」を描けなければ、コンサルタントは務まらない。私がこれまで蓄積してきた武器や戦略、ビジネスに対する考え方などを、少しずつお話ししていきます。 ・・・などとマジメなことを言いながら、フザけたこともけっこう書きます。

「スクールウォーズみたいな職場」を寅さんみたいな職場に変える法

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そろそろ人事異動の季節。
あるいは、転職で春から新たな職場へ。そんな人も多いだろうか。
出迎える若手社員は「今度はどんな上司が来るのだろうか」と噂を交わし、新天地へ赴任する上司は「自分の言うことを聞いてくれるだろうか...」と、少なからず不安に襲われているに違いない。

日本企業ははっきり「Yes」「No」を言わない風土である。そのうえ忖度だったり縄張りだったり、通常の命令系統とは異なるローカルルールがあるから厄介だ。就任早々うっかり発言で地雷を踏んでしまい、しばらく職場に馴染めないことも。

とはいえ、これから共に働く仲間である。そんな問題はやがて解決する。ただ、スムーズに仕事を進めるにはなるべくスタートで躓きたくないものだ。

仕事の大半は「良好な人間関係をつくること」――。
つくづくそんな風に思う。

「アウェイ状態」からスタートする人間関係

ボクはフリーでコンサル業を営んでいる。
案件ごとに新しい企業、新しい人々と出会うので、いわば毎回が転職、毎回が人事異動みたいなものだが、決定的に異なるのは仲間ではないこと。

企業の悩みを解決するためにアドバイスをするのがコンサル業であり、そういう意味ではボクは協力者のつもりで臨むのだが、必ずしも相手はそうは受け取ってくれない。
というのも、コンサルを依頼してくるのはたいてい経営者や部長といった上層部で、「やり方は全面的に任せます」というケースも珍しくない。

現場の社員からすれば、いきなり現れた見知らぬ人から「ああしましょう」「こうしましょう」と言われるわけで、いくらこちらが「上から目線」にならないよう注意を払っても、やはり心象はよくないのだろう。

「......誰だ、こいつは?」「本当に仕事がデキるのか?」
そんな風に社員が身構えるのも無理はなく、協力者というよりは不審者扱いされる。
そんなことで、たいていの場合ほぼアウェイ状態からのスタートとなる。

人間関係を確実に良くする3つのコツ

「ここはスクールウォーズか......」と思った企業がある。
もちろん木刀を持った社員が暴れているわけでなく、職場にバイクで乗り込んでくる社員がいるわけでなく、クライアントを訪問するたびにオラオラと恫喝してくる社員がいるわけでもない。

社員の意識がバラバラなのだ。

50名ほどの企業で、事態はそれなりに深刻なはずなのに「自分は関係ない」「教育部門が悪い」「俺がやりたい仕事じゃない」など、みながまったく別々のことを考えていた。

視線を合わせてくれない人。無言でじっとこちらを観察する人。笑顔なのに目が笑っていない人。露骨に嫌な顔を向けてくる人もいる。
初日の挨拶を終えたところで学級崩壊ならぬ職場崩壊〟をしていることに気づいた。

ただ、驚きはしない。むしろちょっとヤル気が湧いてきたのは「人間関係を確実に良くするコツ」を心得ていたからだ。

1)ムリに近づかない

相手が近づいてくるまでひたすら待つのがベスト。相手は大の大人であり、事態がどう変化するのか様子見するのはごく普通のことである。共通の話題で話しかけるような姑息な擦り寄りはすぐに見透かされ、かえって逆効果となる。

とはいえ、ただじっと待つのも得策とはいえない。
すべきことは、どんな些細な変化も逃さないようじっと相手を観察することだ。会議中に少しだけ頷くようになったとか、発言はしないもののメモを取るようになったとか。メモを取るならどんな話題のときか。本人も気づいていない無意識の行動にこそ人間関係をスタートさせるヒントがある。

そんな変化が見えたら、すぐには近づかず、業務連絡のメールといった非対面のコミュニケーションに工夫をこらす。
例えば、さりげなくメモを取っていた話題にメールで触れる。あるいは、そのテーマを勉強するためのビジネス書をそっと教えてあげる。そんな小さな工夫を重ねていくうちに何らかの反応はあるもので、ある日突然、笑顔で話しかけてくることもある。

2)敵を愛する

頭ごなしに意見を否定してくる人。不機嫌を隠さない人。平然と自社批判を展開する人――。こういった敵対勢力への対処はなかなか難しい。ついイラっとなり、もう関わりたくないと諦めてしまいたくなることもあるだろう。

ただ、業務の進め方だったり経営判断だったり、仕事への不平不満があるからこそ怒りを表現しているケースもあり、裏返せば仕事に前向きのサインでもある。

そんな相手には決して感情的にならず「敵を愛する」「敵を理解する」という気持ちで耳を傾けるといい。じつはその不平こそが秀逸なアイデア、窮地を打開するヒントになるなど、気づかされることもある。

また、相手を刺激しないよう言葉の使い方や順序にまで気を配りたい。
例えば「文章のミスが多い」ことを指摘する場合。

①「仕事は早いけど、ミスが多いですね......」
②「ミスは多いけど、仕事は早いですね」

同じ内容を伝えるにしても②の方が相手の心証を害することは少ない。
ボクは「ネガ・ポジの法則」と呼んでいるのだが、日本人はとりわけ〝言外の意味〟を意識しがちなので、ネガティブな言葉を文章の先に持ってくることで表現を和らげることができる。

頭ごなしに叱る上司が嫌われるのは「ポジ・ネガ」か「ネガ・ネガ」だからである。

3)味方をつくらない

誰にでも公平に接し、肩書や役職で人を判断しないことは大切だ。
組織人たるもの、取締役とか部長など肩書や役職によって意見や態度が左右されがちだが、これこそ信用を損ねる最大の要因。「状況が変わればすぐに裏切る人かも」と警戒されてしまう。
そもそも人事異動や転職で職場の環境はどんどん変化するのだから、味方をつくったところで永続する保証はない。

正しい意見を持ち、まともな仕事を通して理解者を得る――。

味方とは「人間」につくもの。対する理解者とは「仕事のスタンス」につくもの。スタンスが変わらない人は安心感を与え、それは人の好き嫌いを超えた価値基準となる。

「うちの社員がなかなか働かなくてね......」

そう嘆く上層部はけっこういる。それは「期待した通りに動いてくれない」「仕事に積極的でない」といった意味だが、ただ『働かない社員』というのは工夫次第で働くようになる。

上記3つのコツを実践して人間関係をつくっていくうちに、スクールウォーズみたいな職場も徐々に変わっていった。

いつもふくれっ面だった女性社員が冗談を言うようになり、無口だとばかり思っていた若い男性社員が積極的に発言するようになり、露骨に嫌な顔を向けてきた50代社員はすっかり笑顔で相談してくるようになり――。

チームワークがよくなるとすっかり本業であるコンサルに専念できるようなった。
沈んでいた事業は少しずつ改善していき、成果が見えるようになると、成功体験を実感した社員は自ら動いてくれるようになった。

こうなると後は早い。まさにスクールウォーズのごとき強烈スクラムで前へと突き進んでいった。

スクールウォーズのドラマを思い出してほしい。
高校生たちは暴れたくて暴れていたのではなく「素敵な将来像が見えない」「自分の能力を発揮する場所や方法が分からない」から暴れていたのだ。

この企業の社員たちも決して『働かない社員などではなく、単に「素敵な将来像が見えない」「働き方が分からない」だけだったのだ。
そして、
そんな企業は少なくない。

話が長くなったので「働かない社員を働かせる働き方改革」はまた次回に。

(荒木NEWS CONSULTING 荒木亨二)

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