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「自分だけの武器」を持たねば、フリーランスとしては生きていけない。「オリジナルの戦略」を描けなければ、コンサルタントは務まらない。私がこれまで蓄積してきた武器や戦略、ビジネスに対する考え方などを、少しずつお話ししていきます。 ・・・などとマジメなことを言いながら、フザけたこともけっこう書きます。

【女子会考】 オトコが女子会に潜入すると、どうなるの・・・?

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近年は「女子会」ばやりである。仕事や恋愛などについて"男性抜きの本音トークを展開する"という、男性にとっては何やら秘密めいた恐ろしいイメージである。女子会とはその名の通り女性限定のはずなのだが、なぜかオトコである私は、昔から頻繁に女子会に参加している・・・。

女子会は古くから行われていた

女子会が生まれたきっかけのひとつとして1985年の「男女雇用機会均等法」が挙げられる。女性の総合職が誕生する契機となった法律として有名だが、実際の職場は依然として男性優位、"女だから"といった理由で適正な評価や待遇が得られないのが当たり前だった。

会社の飲み会に参加しても女性総合職はマイノリティーな存在、先輩女性はおろか同僚・後輩女性もおらず、なかなか仕事の愚痴や不満を話せる環境にはない。法律ができたからといって、それまでの風習や価値観が急激に変わるわけもなく、受け入れる立場の企業も、そこに働く男性サラリーマンも、対応に困っていた。

男性と同等に働く機会と権利を得た。しかし女性のロールモデルが存在せず、どうキャリアを重ねていけばよいのか分からない・・・。女性の社会進出の黎明期である。当然ながら、時代のキャッチャアップはまだ遠い・・・。

ところが均等法から数年後、1990年代に突入すると、徐々にキャリア女性と呼ばれる人々が社会のあちこちに登場するようになってきた。女性も男性並みにパワフルに働きますよ! 稼ぎますよ! というアイコン的存在。

この頃からようやく【サラリーマン=オトコ社会】という旧弊なシステムにも変化が見られるようになり、次第に"女性の仕事力"に注目が集まるようになった。

『女性の本格的な社会進出』・・・。この過程において、女性だけで集まって情報交換や仕事・恋愛の話をぶっちゃけよう! というのが、女子会の起源であると思われる。無論、当時は女子会などといった"可愛らしい呼称"はなく、またメディアも特段注目しておらず、密かに集まっては、こじんまりと飲んでいたのである。現在の40代半ばの女性たち、いわゆる均等法第一世代である。

女性の結束は強い

1990年代にはもうひとつの"女性の社会進出"が見られた。大学進学率の急上昇である。

1992年に17.3%にしか過ぎなかった進学率が、わずか10年後の2002年には33.8%と2倍近い伸びを示している。この驚愕の数字の背景には、やはり均等法の影響があると思われる。大学から企業への就職、それも男性と一緒の扱いという"まっとうな道"が見え始めたことで、進学意欲が高まった。もちろん、同時期に登場してきたキャリアというアイコンの影響も大きい。

さてさて、進学率が急上昇したといっても比率で言えば男性の方が多いことに変わりはなく、特に難関大学では男性優位という状況がしばらく続いた。こちらも企業と同じような状況で、学内では何となくマイノリティーな女性たち。そこで女性たちはどうしたか?

大学のサークルとは別に、女性のみでグループを形成し、女子飲みをするようになった。こちらも女子会の先駆けのような感じで、発生の経緯や理由は、女性社会人のそれと似ている。異なるのは、この後の彼女たちの"共同体験"・・・。

女性が大学に進出する勢いとは正反対に、日本経済は落ち込んでいった。1990年代半ば以降、日本は就職氷河期に突入した。男性でも相当な苦労を強いられたが、大卒女子はさらに悲惨だった。当時は高学歴の女性は企業にとって扱いづらいと煙たがられ、不思議なことに、有名大学の女性ほど苦労するという"逆転現象"がみられた。

せっかく手に入れた大卒女子という肩書。しかし、当の本人たちはむしろ"余計な肩書"とさえ思うようになった。短大を出て一般職の方がまだマシという悲観論すら出てくる始末・・・。

このような状況のなか、彼女たちは苦労をして世に出て、転職しながらあるいはひとつの企業で、現在も働き続けている。その"苦難の共同体験"が、たとえ別々の企業に就職しても『同士のような結束』を持つパワーとなり、彼女たちを今も結びつけている。

社会に出てからも定期的に女性だけで集まって飲む習慣が根付き始めた。つまり、ここにも「女子会」のパイオニアがいるわけだ。こちらも1990年代のこと、現在30代中盤から後半の女性たちである。

活躍を始めた女性たちは、疲れ始めている?

女子会の起源は、上記のような2つの系統を踏んでいるのではなかろうかと推察する。当時は若かった彼女たちも今や30代~40代半ば、組織の中でも重要なポジションに就き始め、家庭を持ったり独身であったり、10数年で環境は大きく変わった。もはや"女子"ではない! それでも女子会を継続する理由はどこにあるのだろうか?

ひとつは「組織疲れの顕在化」だ。この世代の女性の多くは肩肘張って生きてきた感は否めない。"女性という性"を気にせずに働いてきたようでいて、案外それが負のプレッシャーとなって蓄積していたりする。責任と立場が上がるにつれ、悩みの質も変容してきている。

もうひとつは「カラダの問題」。更年期障害など女性特有の病気は早期化しており、加齢に伴うカラダの変調とも向き合わなければならない年代にさしかかっている。ビジネスにメンタルに、悩みは尽きない。女性だけで語り合う"気楽さ"は、人生において必要なコミュニティーとなっているのだ。

近年の女子会ブームはこのような先輩・上司を間近で見てきた20代半ば以降の女性たちが、そのメリットや合理性から、あるいは単純気楽に楽しむため、ロールモデルとしての先輩を真似てブーム化している側面もあるように思われる。

オトコが入っても女子会は成立する?

私は昔から女子会に呼ばれる機会が多かった。「女性20人で鍋を囲む会」に、オトコは私ひとり。「女性10人で家飲みする会」に、やはり私がポツンとひとり。「男子がいれば女子会ではないのでは?」と、思われる方もおられよう。しかし、男子がひとりいても女子会は成り立つのだ。

女性が20人もいれば、もはやオトコの私など取るに足らないちっぽけな存在である。男性である私の発言権は与えられず、黙って酒を飲むしかない。部屋のオブジェにでもなった気分である。飲めや騒げやの女子パワーに、たじろぐのみ。そのとき私はふと、女子会に紛れ込んでしまった男性の<正しい身の処し方>を会得したのだ。

女子会における男性の注意点

1)女性のノリに従うこと

女子会ではたいてい脈絡なく話題が変わり、そのたびに女性たちは思い思いに喋る。男性は彼女たちの流れ・ノリに自然に従えば、決して女子会の雰囲気は崩さない。また男性がテーマを与えてはいけない。あくまでも女性主導、彼女たちのノリについていけば良い。

時にそれは恥ずかしいのだが、女子会を何度もこなしていると、自然と気持ちも"女子的"になれるのは不思議だ。「男性は理性、女性は感性の生き物」とよく言われるが、まさしく私は女子会では感性でのみ喋る。そうすることで女性陣はもはやわたしの性別を気にしなくなる。

2)オトコ目線の発言をしない

喋っていると「いや、それは違うよ・・・」などと、つい思ってしまうこともある。それが"男性目線"なら口にするのはご法度である。せっかく女子的に話しているところに"オトコのワタシ"が出現するのは、性別を意識させてしまう。興ざめだ。気分的には私も女性、もっと言えば女子大生的な脳にチェンジする。

女子会って何の話をしてるの?

男性が恐れるような赤裸々な話がポンポン飛び出す過激なものはそうない。仕事、恋愛、グルメ、旅行・・・どれも日常の一部である。女子会だからといって"完全なる女性目線"で語られることもそうない。なぜなら彼女たちはビジネスマンでもあり、そのあたりはクールかつ常識的ですらある。政治の話題も上るし転職についても語り合うし、それは男性だけの飲み会=男子会と大きな差異はないだろう。

では男性が女子会に参加するメリットは? 女性ならではの自由な会話のなかに潜む"発見"と"知見"を見つけること、これに限る。働く女性たちの偽らざる心理、ビジネスに対する現在の思想、ライフスタイルの考察・・・マーケティングやコンサルティングを手掛ける私にとって、これらは目的の決まった「グルイン」よりもよほど参考になる。いろんなヒントが隠されている。

マーケティングに欠かせない要素のひとつに、メディアの通説や議題設定に踊らされない<確かな情報収集>がある。世間に出てこない埋もれた価値観、リアルな感想、ユニークな発想・・・これらを分析して"サムシングニュー"を生み出すのに、女性たちの発想は欠かせない。マーケティングは机上の空論ではない。セオリー通りの理論は、時として通用しない。現場もしっかり見るべきなのだ。

私は埋もれた鉱脈を探すため、時おり女子会に参加する。ママ友の会合にだって出向き、お昼のファミレスで耳を傾ける。女子大生の女子会には参加していないが、参加してみたい・・・。だって、若くてキレイな女性ばかりに囲まれれば、それはやはり、嬉しいものだ。超肉食系男子としては・・・。

(荒木NEWS CONSULTING 荒木亨二)

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