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『差別化に潜む落とし穴』を読んで考える Part2    ~『差別化』について、事例を元に考察~

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前回のブログエントリーにて、『会社が持つサービス』+『個人の持つ
要素(個人の持つ力)』が差別化要素として大切になると私見を述べ
ました。

 抽象的な結論になりましたが、私の知人の経験が『差別化』に関する
考察に繋がると感じ、今回ご紹介させていただきます。

【Aさんの事例】

私の知人のAさんは、某証券会社に務めています。過去、Aさんが勤務する
証券会社では、社員向けに、社員向けに『新規顧客開拓』キャンペーン
がありました。キャンペーン開始後を20日たらずで、Aさんは1顧客あたり
100万円以上の入金を伴う顧客を24件獲得し、見事社内表彰を受賞した
とのことでした。

20日間で24件の新規開拓…1日1件ペース以上で新規顧客を開拓しなければ
なりません。

株を売るか、投資信託を売るか、MMF・中期国債ファンド・公社債投信
(1年物)を売るか・・・などなど、みなさんならどうやって新規顧客を
開拓するでしょうか?

● Aさんがなぜ社内表彰を受けることができたのか?

Aさんが社内表彰を受けるに至った理由・・・それはAさんのひらめきと実行が
ありました。

Aさんは既発債(既に企業が発行した債券)を思いつき、見込み客や既存客の
知人に対して販売を行ったとのことでした。
当時で1年物の定期預金が0.1%の時代、既発債の利回りは、年率1%(残存
年数2~3年)でした。リスクは債権発行元の倒産リスクと、金利が年数%
まで上昇しての機会損失が主なものでした。
 知人が販売した社債は財閥系不動産会社や大手総合商社(5大商社の一角)
でした。

 金利が低い中、2~3年物、かつ倒産可能性が低いと思われる(ないしは
世間的に会社の信用度がある)会社で、年率1%程度の利回りがある債券は
非常に魅力があり、社債は飛ぶように販売できたとのことでした。

ただ、なぜ他の社員はそれをしなかったか疑問を持つと思います。この事について、Aさんの販売した
社債は、全社的に公に販売していた債券ではなく、証券会社の債券部が
個別に引いてきた債券になるので、毎回債券部に問い合わせなければ
ならないものであったとのことでした。また、営業マンが毎回、直接債券部に
問い合わせることは、数字を抱える営業マンにとって面倒臭く、また、債券を引けることを知っている社員も
多くなかったとの事で、その時代では(現在はわかりませんが)あまり
真似をする社員は少なかった事が、他の社員から模倣をされなかった大きな理由であった様です。

 つまり、マイノリティな商品に、『気づいたこと』、その気づきを単なる
『ひらめき』ではなく、『自分を信じて実践した』こと、商品が『顧客ニーズ』を
掴んでいたことも成功の大きな理由になったのでは、と話しておりました。

【Aさんの事例から読みとれること】

Aさんの事例は、先のITメディアで紹介された記事、『差別化に潜む落とし穴』に
あった、バリュープロポジションについて必要な観点を満たしていたと思われます。

●バリュープロポジションに必要なもの

(1) 顧客が望んでいて、
(2) 自社が提供でき、
(3) 競合他社は提供できない価値

さらに重要な事は、Aさんの行ったことは特別なことではなく、会社が提供している
サービスの中で、顧客ニーズに合うものをいち早く見つけ、労力や周りに流されず、
信念を持って販売したことが成功につながったのかと思います。

会社を務めていると『うちの会社の取り扱う製品(サービス)が悪い』、『技術力
がない』、『ニーズに合っていない』などなど、商品やサービスを販売できない理由
を多く並べる人が見受けられます。

こうした不満を不満を述べるよりも、今ある会社の商品/サービスを『どのような
仕組み/仕掛けを』、『誰に対して』、『信念/思い』を持って販売することが、
差別化につながるのではと思います。

『会社が持つサービス』+『個人の持つ要素(個人の持つ力)』それが『差別化』に
つながると感じます。

(証券会社での経験をお話してくれましたAさん、貴重なお話並びにブログへのエントリー
 承諾ありがとうございました。)

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