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あれこれ考えるよりも作ってしまった方が早いんじゃね?と思う、ギークなサラリーマンのアジャイルな日々。

【検証】 ITP2.0とリファラー(referrer・参照元)について

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Appleの新型iPhone、「iPhone Xs」「iPhone Xs Max」「iPhone XR」の発表に合わせて日本時間の9月18日(火)午前2時に配信開始予定だった「iOS12.0」とiOS12でプログラマティック広告配信関連でターゲティング配信のために行われているトラッカーによるユーザー追跡機能をブロックする機能(ITP ‐ Intelligent Tracking Prevention)が強化された「ITP2.0」機能を搭載した「新Safari12」がリリースされました。

ネット広告業界、特に運用型広告の世界の住人の方は戦々恐々としてITP2.0がiOSに提供されるこの日を迎えたのではないでしょうか?

私の管理しているサイトでも、9/18 午前7時くらいからiOS12からのアクセスが増え始め、日を追うごとにその割合が増えていっています。日本ではソフトバンクさんや各キャリアが Appleからの圧力を受けた 頑張ったせいか、右に倣えの国民性なのか単に金持ちが多いのか、iPhoneのシェアが諸外国に比べて高く、サイトへのアクセスも過半を超えている媒体社さんも多いのではないでしょうか?

そんな中で、ITP1.0が昨年(2017年)9月20日のiOS11のリリースと共にSafariに搭載されました。インテリジェント トラッキング プリベンション、直訳すると「賢く 追跡を 防止する」ですが、最近のネットワーク広告、特に日本のネット広告の世界では、リタゲ(リターゲティング広告)、リマケ(リマーケティング広告)と呼ばれる出広方法が盛んに行われてきました。

自分はそうではないですが、髪がちょっと薄くなってきたなーなんて気になって、アデランスさんとかリアップさんとか、東国原さんの髪が突然ふっさふさになったと話題?のビタブリッドとか、マツコさんが「マジで生えるじゃない」ってテレビで言ったか言わないかわからないですがランブットとかのページをクリックしたりすると、以降、その商品の広告がひたすら広告枠を埋め尽くしたり、GoogleとかYahoo!とか、その他の広告ネットワークや3rd Party DMPにハゲ認定(禿認)をされて、アプリを見ても、ブラウザを変えても、禿げコンプレックス広告(禿げコン商材)が追ってくる始末。

ちょっと、脱線しましたが、要はユーザーの意図しないところでユーザーのウェブ行動履歴が記録され、追跡されて、広告が地の果てまで追ってくるようなターゲティング広告に、CookieやらWeb StrageやらIDFAやらAAIDなどのブラウザ内記憶領域や端末識別ID(ADID・広告ID)が使われているということです。

なぜ、こんなにも日本ではリタゲ広告が流行っているか。

それは、見かけの成果が出しやすいからです。

一度でもハゲコンクリエイティブを押したってことは、禿げている可能性が高い、将来顧客になりやすいってことですね。でも、リピート商材やLTVを長期的に追える商品ラインナップの多いECやマーケットプレイスなら良いんですが、しっかりとフリークエンシコントロール、逆リマケを行わないと、ユーザーの態度(行動)変容を起こし新規顧客化するといういわば畑を耕すようなマーケティングではなく、他の施策で耕した畑をターゲットに刈り取るだけの施策に金をじゃぶじゃぶつぎ込む結果になってしまうんですね。一度刈り取ってしまったら、種をまく、水をかける、雑草を取り払って虫を払い、みたいな地道なマーケティングを行わない限り、当然次の収穫はありません。なのに、刈り取りマーケティングだけが成果が高い!なんて勘違いする農家は、そういう地道なマーケティングの成果が(短期的に)悪いと短絡的に判断して、荒れた畑にコンバインだけを機械的に投入していきます。

また、脱線してしまいました。

話を戻しますと、世界のAppleさんは自分らは広告で稼いでいるわけじゃないから、そういうオーディエンスターゲティング広告に必要だった、3rd Party Cookieを駆逐するITPという技術を昨年9月に導入したわけです。

ITPのネット広告村に対するインパクトはものすごく、リタゲ・リマケ広告の雄であったフランスのCriteo(クリテオ)という会社の株価は急落し、時価総額にして300億円が吹き飛ぶくらいのインパクトでありました。その後も具体的な打開策は示せず現在も株価は上場来安値付近で推移しています。でも、まあWindows PCやMacやiPhoneのChrome、Android端末ではITPは影響はないので、これ以上株価は下がることはないかもしれません。でも、ITP1.0-1.1で24時間の猶予があったユーザーが訪問したことのあるドメインの3rd Party Cookieの保存期間もトラッカー判定された時点で即時削除になり、1stでも30日の制限が出てきましたし、EU圏ではGDPRとか米国の州でもターゲティング広告に影響が出そうなネガティブな動きも出ていますので、わかりませんが。。

ITPがターゲットにした3rd Party Cookieですが、要は各お店(サイト)とは独立した、ポイント、会員カードのようなもので、どのお店で買った(閲覧)としてもそのポイント、会員カードを発行している側では、誰がいつどこで何を買ったかの情報を把握できるようになります。

コンビニでおにぎりを買っても、コーヒーショップでコーヒーを買っても、ガソリンスタンドでガソリン入れても、スーツやさんで背広を買っても、レジのときにTポイントカードはありますか?って聞かれますが、ポイントを貰える・使える代わりにTポイントの会社の人はあなたがどこでいつ何を買ったのかがわかります。加盟店としては、ポイントが貯まるから、使えるからというお客さんが増えるという期待と、Tポイントの会社の人にこれこれこういう購買行動を最近している人にメールを打ちたいんだ、って相談すればお金はかかるもののそういう人たちへの広告を打つことができます。

ネットの世界でも、3rd Party (つまり第三者の管理する) Cookieの中にそれぞれの会社が入れている会員番号のようなものを用いて、誰がいつどのサイトでどのページを見たのかを記録しています。Appleは消費者の代わりに俺のショバで何をしてくれんねんということでITPという盾を作ってそのようなキモい行動ターゲティング広告を妨害健全な方向にしようとしています。

まあ、結局はイタチごっこなんですが。。

ITP2.0によるCookie制御(制限)や対策についてはもうツールベンダーの対応次第でサイトオーナーレベルでは1st Party中心にデータマーケティングを組み立てるくらいなので詳細はココでは割愛しますが(投げやり)、ITPがリリースされたときに目を引いたのが、ITP2.0のSafariではリファラーがドメインレベルでしか送出されないという記事。

「ITP2.0 リファラー」とかで検索すると出てくるページに、

「ITP2.0」って?ScaleOutの中の人が解説してみる(勝手に予測もしてみた)
https://supership.jp/magazine/technology/2700/

今回は詳しく説明していませんがリファラー情報(webサイトに到達する参照元となったwebサイト)がURLからドメインに変更されるため、レポートの正確性の低下などが考えられます。」⇒詳しく説明しろよっ!ぼけっ

Apple ITP2.0発表
http://blog.marinsoftware.jp/apple-announced-itp-2

「リファラーというどのURLから現在のサイトを訪問したかという情報を現在はかえしているが、ITP2.0では、フルURLではなくドメインのみをリファラーとして返す。」

とか、あるじゃないですか?!

リファラって、WEB解析とかの基本のキですよ!

それをSafari12はドメインしか返さない??

常時SSL化の流れで、HTTPサイトがリファラもらえなくて仲間外れになってしまったように、Safariになったらいろいろ計測できなくなっちゃうやんか、どうするん?コレ!

って、内心焦っていたんですが、そして18日を迎えてもう2週間近く経っているんですが、Googleアナリティクスのコミュニティも含めて「誰も」ざわざわしていないんですね。

というわけで、検証してみました。

結論を言うと、ITP2.0によるリファラー制御ですが、

「該当のドメインがトラッカー認定されない限りリファラを制限する機能は発動しない」

「制限されるのはユーザーのインタラクション外で送出されるリファラー(ピクセルタグ等)」

ということで、通常のサイトの計測にはそこまで影響はありませんでした。

ていうか、適当な記事を読むより原文にあたった方が良かった。

Intelligent Tracking Prevention 2.0
https://webkit.org/blog/8311/intelligent-tracking-prevention-2-0/

Origin-Only Referrer for Domains Without User Interaction

ITP's purging of website data does not prevent trackers from receiving the so called referrer header which reveals the webpage the user is currently on. In ITP 2.0, the referrer, if there is one, is downgraded to just the page's origin for third party requests to domains that have been classified as possible trackers by ITP and have not received user interaction.

Here's an example of what we mean by this: Say the user visits https://store.example/baby-products/strollers/deluxe-navy-blue.html, and that page loads a resource from trackerOne.example. Before ITP 2.0, the request to trackerOne.example would contain the full referrer "https://store.example/baby/strollers/deluxe-stroller-navy-blue.html" which reveals a lot about the user to the third-party. With ITP 2.0, the referrer will be reduced to just "https://store.example/".

For further reading on this subject, see Mozilla's research on origin-only referrers.

検証もしないで適当なことをほざいている記事はたくさんありますが、以下の記事はとっても参考になりました。

ITP 2.0の機能の検証 - NO AD NO LIFE
http://inchom.hatenadiary.jp/entry/2018/06/17/012526

実地検証 is 神

というわけで、私も検証をしてみたのですが、通常のページ遷移でのリファラ、iframeやimgタグでのリファラについても特段問題はありませんでした。

***.***.***.*** - - [03/Oct/2018:14:55:39 +0900] "GET /?itp_check_iframe HTTP/1.1" 200 2624 "http://abc.hakkason.com/referrer_check/iframe.html?iframe" "Mozilla/5.0 (iPhone; CPU iPhone OS 12_0 like Mac OS X) AppleWebKit/605.1.15 (KHTML, like Gecko) Version/12.0 Mobile/15E148 Safari/604.1"

***.***.***.*** - - [03/Oct/2018:14:18:56 +0900] "GET /referrer_check/itp.png?itp_check_img_src HTTP/1.1" 200 3249 "http://abc.hakkason.com/referrer_check/img_src.html?hoge" "Mozilla/5.0 (iPhone; CPU iPhone OS 12_0 like Mac OS X) AppleWebKit/605.1.15 (KHTML, like Gecko) Version/12.0 Mobile/15E148 Safari/604.1"

ただ、iOS11とiOS12のSafariの挙動を比べて、唯一気になったのが、プライベートブラウズモードでアクセスした際に、iOS11ではプライベートブラウズモードの場合も参照元がフルパスで出ていたところが、iOS12ではITP2.0トラッカー適用された際と同じく、ドメイン(オリジン)しか出てこないこと。

***.***.***.*** - - [03/Oct/2018:15:09:49 +0900] "GET /?itp_check_iframe HTTP/1.1" 200 2624 "http://abc.hakkason.com/" "Mozilla/5.0 (iPhone; CPU iPhone OS 12_0 like Mac OS X) AppleWebKit/605.1.15 (KHTML, like Gecko) Version/12.0 Mobile/15E148 Safari/604.1"

***.***.***.*** - - [03/Oct/2018:15:08:10 +0900] "GET /?itp_check_iframe HTTP/1.1" 200 2624 "http://abc.hakkason.com/referrer_check/iframe.html" "Mozilla/5.0 (iPhone; CPU iPhone OS 11_4_1 like Mac OS X) AppleWebKit/605.1.15 (KHTML, like Gecko) Version/11.0 Mobile/15E148 Safari/604.1"

その他も、検証中ではありますが、結論としては普通にWEB構築・解析をしている限りITP2.0はそこまで影響はない。ただし、ちょっとだけ今までより取れる情報が減ってしまうかもしれないねーってくらいでした。

現場からは以上です。

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