組織を活性化させていく上で外せないポイントを、企業や組織が抱える問題や課題と照らし合わせて分かりやすく解説します。日々現場でコンサルティングワークに奔走するコンサルタントが、それぞれの得意領域に沿って交代でご紹介します。

外国人目線から見た日本の外国人社員のマネジメント(下)

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マルチカルチャー企業の人事マネジメント

「働き方改革」を背景に「外国人雇用」や「ダイバーシティ」というテーマがよく取り上げられています。
前回の上巻で、外国人社員がマネジメントしにくい原因 -「文化の差」- が本当に存在しているかどうかについて、検討させていただきました。

今回はマルチカルチャー企業の人材マネジメントに内在する「文化の差」について話したいと思います。

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一般的に用いられる人事マネジメントのモチベーションの理論の一つに、ハーズバーグの動機づけ・衛生理論があります。

アメリカの臨床心理学者ハーズバーグが提唱した仕事における満足と不満足を引き起こす要因に関する理論で、人間が仕事において満足感を感じる要因と不満足を感じる要因は全く別物であるとする考え方です。
「衛生要因」は、人間の不満要因を誘発する要因で、不満となる原因を一定レベルで解消しないと、不平不満ないし離職を誘発する可能性があります。
「動機づけ要因」は、仕事の満足感を引き出す要因です。「動機づけ要因」は高ければ高いほど、人間は仕事に対する満足感が高まり、モチベーションアップに繋がります。

それでは、外国人社員にとって「衛生要因」と「動機づけ要因」それぞれは何でしょうか。

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「衛生要因」について考える際に、「宗教・文化・政治上の『ダブー』に触れないこと」に関しては、説明は不要だと思います。したがって、今回は外国人としての特殊な心理について話したいと思います。それは「疎外感」についてです。

外国人社員は自分が育った環境とは異なる習慣・制度の環境で働いているため、入社する際に外国人として感じる「疎外感」と「不安感」は日本人が感じるものより非常に大きく・強いものです。例えば、多少過剰反応の面もあるかもしれませんが、日本人にも生じる可能性のある「不公平なこと」が発生した場合、外国人社員は「自分が外国人であることで差別されている」と感じる可能性が高いのです。

この疎外感の発生を避けるためには、意識的に「日本人」と「外国人」の違いを強調する話し方を、避けた方がよいと考えます。

例えば、「空気が読める」「気配りがある」と評価される時、日本人である上司・先輩に「日本人っぽいですね~」「今の考え方は日本人らしいですね~」と言われることがよくあります。このような言葉について、外国人であっても大部分の人は褒め言葉として理解できますが、時には「上からの目線」や「偉そうに話している」と感じる人もいます。それはこの話を、東京と地方の人に置き換えて考えてみるとわかります。

地方の人がおしゃれな格好で外出した際に、隣の東京出身の人に「今日は都会っ子らしいですね~」「東京人っぽいですね~」と言われる時の気持ちと同じです。褒め言葉なのに「東京の人がおしゃれです。地方の子はおしゃれではありません。」という言外の意味を感じ取り、気になる人がいるかもしれません。

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「疎外感」の話に戻すと、「空気を読む人」と「気配りのある人」はどんな国でもどんな文化でも存在しているはずです。外国人社員から見れば、あえて「日本人」と「外国人」を区別する必要はありません。普通に「周りに気配りができますね」という言い方が一番よいのではないかと思います。

そして、「動機づけ要因」については、そもそも同じ日本人でも、人によって若干違います。外国人社員を雇用する場合、この違いがさらに大きくなる可能性があります。すべての人のすべてのニーズに対応することはできないため、原則として皆の共通の要求を満足すればよいと考えます。これは『求同存異』という考え方です。『求同存異』とは、同じような考え方を求め、それぞれ異なる意見も尊重するという考え方です。

例えば、働くことに対して、「安全衛生な環境で働き、自分のパフォーマンスが公平公正に評価され、合理的な給料をもらい、かつ人材として成長していくとのこと」は共通な考え方であると思います。しかし、国ごとの人事制度は違うため、「外国人の考え方は違う」と捉えることが多いのです。外国の人事制度と日本の人事制度との大きな違いは、昇降給・昇降格の頻度です。日本では、年2回賞与、年1回は昇降格・昇降給を行う会社が多いです。一方、外国の場合、その都度経営判断で即時に昇降格・昇降給を行うことが多いです。そのため、日系企業で働いている外国人から見れば、自分のパフォーマンスは即時に評価されていないと勘違いしてしまう可能性が高いのです。加えて、外国人は日本人に対して、そもそも「融通がきかない」という固定観念を持っていることが多いので(これは外国人の誤解だと思います)、その時「やはり日本企業で働きにくい」と感じる可能性が高いです。

対処策として、外国人向けの制度と日本人向けの制度を分けて作る会社がありますが、実は制度作りよりは外国人に人事制度を丁寧に説明することが大事です。そして、制度はあり方だけではなく、なぜこのようになっているのか、およびこの制度のメリットを説明するのはもっとも重要です。徹底的な説明によって、安定的に働く外国人が確実に増えるのではないかと思います。

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以上、まとめると、「文化の差」はよく「考え方の差」と「性格の差」として捉えることが多いですが、実は「制度と習慣の差」は一番大きいです。つまり、このような「文化の差」は変えられるものです。そして、ロジカルに丁寧に物事を説明すれば、マネジメント上越えられない「文化の壁」が少なくなると考えます。

組織開発コンサルティング事業部
鄧 辰

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