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30年に渡って関わってきた米国のITの出来事、人物、技術について語る。

シリコンバレーにいると、電力不足はデータセンター建設のときにしか語られないので、対岸の火事の様だ。しかし、筆者はこの夏7月の大部分を日本で過ごしたので、いかに皆が努力して節電したかも知っている。泊まった親戚宅ではエアコンが故障していて、30°で湿度70%のもとで何日が寝たので、完全に対岸の火事ではない。それではアメリカ中が電気余っているかというとそうではない。実はテキサス州は今年の夏は電力不足で、節電の嵐が吹き荒れ、計画停電の恐れがでている。


昔、ダラス近郊に住んだことがあるので、テキサスの夏がエゲツナイことを良く知っている。下の図を見て欲しい。アメリカの送電網は実は3つに分かれている。日本の送電網が電力会社毎に分かれているようなものだ。一番大きいのは、東部の送電網だ。一番人口も多いし産業規模も大きい。次に続くの西部送電網だ。シアトル、サンフランシスコ、ロスアンジェルスなどの都会を除けば、後は小さい。


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更に小さいのはテキサス州だ。3つはそれぞれ互いに電力の融通はするが、あまり大規模には行われない。なぜテキサス州だけ独立しているのだろうか。伝統的にテキサス人の連邦政府からのの独立心を持ち、また歴史的に州内で石炭や天然ガスが豊富に出たことで、他の地域との連携を考える必要もなかったし、その気もなかった。住んで分かったが確かにその精神は生きている。電力系統が大きければ大きい程、電力不足に陥った場合、他から融通して貰えるし、少し位の電力の電力網への異常事態(需要の急激な増加でバランスが崩れても)も飲み込むことができる。この辺りの電気の基本はここを参照


ところが、そのテキサスで電力不足が起こっている。実は今年の冬に計画停電が起こっていた。冬の話は後で、まずこの夏の話をしよう。テキサスの電力供給の安定を図るテキサス電力安定供給協会(ERCOT)NPOでテキサス州政府や連邦政府からは独立していて、ERCOTは独立システム・オペレーター(ISO)と呼ばれる。その使命は電力供給安定を図ることだ。ISOの詳細やアメリカの電力の情報はここを参照。

ERCOTは電力不足の緊急性に応じて3つのレベルの警告を発する。その3つとは

  • 警告段階1: 休眠中の発電所の稼動や他の送電網からの電力の移入

  • 警告段階2: 大口カスタマーの電力使用制限

  • 警告段階3: 計画停電 15-40分程度

警告段階1は余剰電力が230kWを切ると発令される。今年は既に何回も発令されている。以下の表を参照。


 

22

1,2,3

3月23日

1

6月27日

1

8月2日

1

8月3日

1

8月4日

1,2

8月24日

1

電力緊急警告発令日の表

警告は発令の同じ日に解除されている。この電力需要の伸びはテキサスへの人口流入と今年の異常に暑い夏の影響だと解説されている。その他、既存の発電所の故障も見逃すことができない。今年の夏のピーク時の電力需要を下の表に示す。東電は5,500万から6,000kWを供給できる。テキサスはそれより少し多くの電力を供給しているわけだ。

5

5740kW

6月

6310kW

7月

6520kW

8月(24日まで)

6829kW

今年のピーク時の電力需要の変化

ERCOT はまた2000年から今年までのピーク時の最大需要の電力も示している。アメリカではMWを日本ではkWを主に使用する。1万MW1000kWに対応する。

Itmedia2

年間ピーク時の電力需要量の変化

話を電力緊急警告の発令に戻そう。上の電力緊急警告発令日の表からも分かるように実際の計画停電は今年の冬の2月に起こった。2月2日のピーク時の電力需要は5,633kWでそれまでの記録は5,587kWだった。冬の寒さが原因で機材や装置の故障で500kWが喪失したことも計画停電へ至った理由の1つだ。テキサスというと暑いというイメージを持ちやすい。しかし、冬は寒くなる。国の真ん中に寒気を遮る山がないため、寒い空気はテキサスまで達する。このため冬には雪も降れば、凍った雨も降る。冬は暖房がなければ過ごせず、夏は冷房がなければ暮らせないという厳しい天候だ。もちろん、冬季は夏のピーク時に比較すれば需要は低いがそれでも、冬には点検や寒い気候で運転を停止を余儀なくされる発電所もある。

どうすれば、この状況を打破できるのだろうか。4つばかり考えることが出来る。

1.余剰電力を提供できる発電機や発電所を、いつでも稼動できるように準備しておく。これは、確かに有効だが、常時必要のない発電所を何時でも使用できるように用意しておくのは、費用面から言ってあまり好ましくない。

2.節電を最大限まで進める。これには、大口消費者の節電も含む。これは、良くも悪くも大きな影響がある。良い影響は明らかだが、悪い影響はビジネスが節電で冷え込むかも知れない。

3.州内の風力発電などの新エネルギーの開発を促進する。テキサスは風力発電が盛んで今後も発電量は増加すると予想されている。風力発電の問題点は気象条件に左右され発電量が一定化しない。発電力が一定化しない電力源を電力系統に接続すると系統が不安定になり、最悪の場合停を引き起こす。現在変動型の電源である風力や太陽光をいかに系統に取り込んで全体の安定度を保つかの研究が行われている。

4.東や西の他の送電網 から電力を輸入する。電力系統は大きければ大きい程、細かな変動に対して抵抗力があり、また電力が足りない地域に電力を融通することも容易になる。東の送電網は一番大きいく、ふんだんの余裕がある。西も東ほどではないが、テキサス送電網よりもはるかに大きい。テキサスは独立心旺盛であまり他を頼らない傾向がある。現在までに幾分か他から電力を融通してもらっているが、十分ではない。

問題解決には1から4まで全て必要だが、特に今後3と4が必要になるのではなかろうか。なにやら、日本にも当てはまる様だ。

zen kishimoto

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プロフィール

岸本 善一

岸本 善一

京都大学電気工学科を卒業後、米国でコンピュータ・サイエンスの博士号を取得。
GTE研究所、HP、NECを経てIP Devices社を設立。先端技術をビジネス展開に結びつけるコンサルティング業務を提供する一方で、Green ITにも関わっている。

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