最近米国東部で稀な地震が起こった。マグニチュード5.8で結構大きな地震だった。地震に慣れているカリフォルニアからの旅行者や出張者達は地震に慣れていない東部の人たちの大騒ぎにびっくりしたようだ。この地震で震源地から30kmにあるDominion Virginia Power が所有する原子力発電所が停止した。この原発はVirginia 州の州都であるRichmondから約100kmで、首都のWashington Dcからは約145km離れている。Richmondの人口は約20万人だ。首都周辺は約560万人だ。
地震の発生に伴い、外部電源は使用できなくなり原発は停止した。ただ非常用電源である5台のディーゼル発電機は稼動した。5台のうち1台が故障したが、発電機1台あれば足りると発表され、燃料も30日間もつということだ。幸いにも外部電源はその日のうちに使用可能となり、非常電源も正常に作動し、冷却の問題はなく原子炉に異変が起こるというような大事には至らなかった。Dominion Virginia Power は今後再生可能エネルギーの割合を増加するものの、この地震が起きても、今後のエネルギー確保の方針から原子力を除外することはないと述べている。現在稼動中の一号機と2号機の他、現在3号機の許可待ちとのことだ。ちなみにこの原子力発電所の2つの原子炉はそれぞれ1978と1980年に建設され発電量の合計はは180万kWだ。もう既に30年以上経ているわけだ。
福島での原発事故に関連して、避難地域の設定や風による放射能の移動などが話題になった。米国の場合はどうなっているのだろうか。米国の原子力規制委員会は2つの地域を設定している。1つは半径16kmを放射能による直接汚染地域として指定している。また、半径80kmを間接汚染地域に指定している。実際にこれが発令されたのは1979年の3月のThree Mile Island原発の事故の際で、この時は8km以内で妊婦や子供の避難が行われた。福島原発事故に際して、米国大使館が自国民に対して80km以上避難しろと警告したのはこの指定によるものだった。原子力規制委員会はこう言った緊急時のプロセスをウエブで公開している。
今回の原発は大事に至らなかったが、大きな都市から比較的近い。もっと大都市に近い原発もある。Indian Point Energy Centerだ。ハドソン川に沿ってNYCの北僅か61kmだ。上の間接汚染地域にすっぱりとはまってしまう。福島原発のニュースが頻繁に流れていたとき、この原発のこともNYCに近いということで盛んに報道された。発電総量は200万kwでNYCの電力需要の約30%を担っている。
16km以内の人口は約27万人、で80km以内は1700万人だ。実際に緊急事態が生じれば、大変なことになるだろう。地震の可能性はゼロではないが、NYC近郊ということもあり、緊急事態が起こるとすればテロによるものかも知れない。9.11から10年ということで、米国では新たなテロへの備えと追悼番組で一杯である。
ちなみに筆者の住む地域から一番近い原発は約265kmだ。
昔MySQL や JBoss の日本進出のコンサルをしたので、オープンソースがどんなものか分かっているつもりだ。しかし、MySQLやJBoss が買収された後、急激に興味を失った。 Openstack に関しては時々聞いていたが、http://www.openstack.org/ あまり詳細は知らなかった。多くのIT屋と同じように筆者もクラウドの動向に興味がある。クラウドを使えば規模の経済でエネルギーの消費を削減することができるだろう。クラウド、エネルギー削減とそこにオープンソースが絡んできた。それでは、ちと見てみるかという気になった。
ちょうど、 Openstackの初めから関わった人がたくさん出るミーティングがあったので参加してみた。以下の内容はあまり技術的なことは書いていないが、Openstackがなにか分かるかもしれない。
あちこちで報道されているように、OpenstackはRackspace と NASA が共同して開発しているオープンソースのIaaSのソフトウエアだ。
6人のスピーカは以下の通りだ。
ご存知のようにこちらでは、人は会社や組織を次々と変えるのでその人のバックグラウンドを知らないと時々混乱する。
Openstackの要約
まず簡単にOpenstackが何か述べてみよう. 3つの大きなプロジェクトが進行しているが、その他にも数個のプロジェクトが用意されている。3つは:
Compute (Nova), プロビジョニングなでコンピュート環境のセットアップなどの管理を行う
Object Storage (Swift), AWSのS3のようなもの
Image Service (Glance) , バーチャル・マシンのイメージの管理
他のプロジェクトはここに示されている。
全てのプロジェクトはPythonで書かれている。このわけを質問されると理由はあるがここでは言わないと Joshua が回答した。White Houseに提供された以下の文書に理由は示されているが、一般人には閲覧できない。
Openstackを支持するコミュニティや会社も増加している。下はその一部だ。ところで、日本にもOpenstackのコミュニティがある。ここ。
リストはがんがん大きくなっているので、最新のリストはウエブを参照のこと。
/ この中で1つの日本の会社が取り上げられているNTT Data とミドクラ だ。日本の会社が積極的に参加しているのは結構なことだ。
スピーカー
Rick Clark は以前Rackspaceに勤めていた (現在はCisco) が最初にOpenstackを考えて一人だ。そしてNASAとの連携に尽力した。
Rick Clark
Visa Ishtar は NASA に勤めていた (Joshua McKenzieが上司だった) が、今はRackspaceに勤めている。
Visa Ishtar
Visaは “Compute” の部分のテクニカルのリーダーだ。当初はNASAにいたので、その当時どのようにRackspaceと交渉したのかを話した。現在Rackspaceにいるので少し話がややこしい。
Joe Arnold はCloud scaling に勤めてOpenstack のObject Storageの部分を担当している。
Joe Arnold
James UrquhartはCisco に勤めるが、クラウド関係のコンファレンスではおなじみだ。彼の話は Openstack がCiscoのビジネスにどんな関係があるかというものだ。
James Urquhart
簡単に言えばサービス・プロバイダーがCiscoのカスタマであり、包括的なサービスを提供できるプロバイダーが競争に勝つ。サービスはCiscoのソフトとハードで実装できるというわけだ。更に、現在のlクラウドはネットワークへのサポートが乏しいと言った。それで、現在 Network as a Service (NaaS)を Openstack の一部として開発している。プロジェクトの名前はQuantumだ。 http://wiki.openstack.org/Quantum また、ドナベ(土鍋)というコンテナ・サービスに関しても述べた。当初はネットワークのコンテナを目指すそうだ。このプロジェクトはRick Clarkがリーダーだ。
Christian Reilly はCitricに勤めており、Citricの立場を述べた。
Christian Reilly
主な話はCitrixのOlympusというプロジェクトに関してだった。Openstack の強化版でOpenstackと クラウドのギャップを埋めるものだ。以下の機能比較を参照。
Joshua McKenzie はNASA でOpenstackのプロジェクトを開始した。自分をOpenstackの父と呼ばれるにはおこがましいが、叔父か従兄弟くらいだろうと言った。でも彼から発するエネルギを感じるとやはり彼がOpenstackの父だと思う。
Joshua McKenty
彼はオープンソースの開発者の数の比較を示した。
Joshuaだけでなく残りのスピーカーも本当に入れ込んでいるように見えた。これは、筆者がMySQL とJBossのコンサルをした時に感じたようなエネルギーだ。Openstackにはまだやることが多い。同じオープンソースのEucalyptusは既にカスタマーを入手しており一歩も二歩も進んでいる。今後の展開が楽しみだ。
シリコンバレーにいると、電力不足はデータセンター建設のときにしか語られないので、対岸の火事の様だ。しかし、筆者はこの夏7月の大部分を日本で過ごしたので、いかに皆が努力して節電したかも知っている。泊まった親戚宅ではエアコンが故障していて、30°で湿度70%のもとで何日が寝たので、完全に対岸の火事ではない。それではアメリカ中が電気余っているかというとそうではない。実はテキサス州は今年の夏は電力不足で、節電の嵐が吹き荒れ、計画停電の恐れがでている。
昔、ダラス近郊に住んだことがあるので、テキサスの夏がエゲツナイことを良く知っている。下の図を見て欲しい。アメリカの送電網は実は3つに分かれている。日本の送電網が電力会社毎に分かれているようなものだ。一番大きいのは、東部の送電網だ。一番人口も多いし産業規模も大きい。次に続くの西部送電網だ。シアトル、サンフランシスコ、ロスアンジェルスなどの都会を除けば、後は小さい。
更に小さいのはテキサス州だ。3つはそれぞれ互いに電力の融通はするが、あまり大規模には行われない。なぜテキサス州だけ独立しているのだろうか。伝統的にテキサス人の連邦政府からのの独立心を持ち、また歴史的に州内で石炭や天然ガスが豊富に出たことで、他の地域との連携を考える必要もなかったし、その気もなかった。住んで分かったが確かにその精神は生きている。電力系統が大きければ大きい程、電力不足に陥った場合、他から融通して貰えるし、少し位の電力の電力網への異常事態(需要の急激な増加でバランスが崩れても)も飲み込むことができる。この辺りの電気の基本はここを参照。
ところが、そのテキサスで電力不足が起こっている。実は今年の冬に計画停電が起こっていた。冬の話は後で、まずこの夏の話をしよう。テキサスの電力供給の安定を図るテキサス電力安定供給協会(ERCOT)はNPOでテキサス州政府や連邦政府からは独立していて、ERCOTは独立システム・オペレーター(ISO)と呼ばれる。その使命は電力供給安定を図ることだ。ISOの詳細やアメリカの電力の情報はここを参照。
ERCOTは電力不足の緊急性に応じて3つのレベルの警告を発する。その3つとは
警告段階1: 休眠中の発電所の稼動や他の送電網からの電力の移入
警告段階2: 大口カスタマーの電力使用制限
警告段階3: 計画停電 15-40分程度
警告段階1は余剰電力が230万kWを切ると発令される。今年は既に何回も発令されている。以下の表を参照。
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2月2日 |
1,2,3 |
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3月23日 |
1 |
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6月27日 |
1 |
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8月2日 |
1 |
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8月3日 |
1 |
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8月4日 |
1,2 |
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8月24日 |
1 |
電力緊急警告発令日の表
警告は発令の同じ日に解除されている。この電力需要の伸びはテキサスへの人口流入と今年の異常に暑い夏の影響だと解説されている。その他、既存の発電所の故障も見逃すことができない。今年の夏のピーク時の電力需要を下の表に示す。東電は5,500万から6,000万kWを供給できる。テキサスはそれより少し多くの電力を供給しているわけだ。
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5月 |
5740万kW |
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6月 |
6310万kW |
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7月 |
6520万kW |
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8月(24日まで) |
6829万kW |
今年のピーク時の電力需要の変化
ERCOT はまた2000年から今年までのピーク時の最大需要の電力も示している。アメリカではMWを日本ではkWを主に使用する。1万MWは1000万kWに対応する。
年間ピーク時の電力需要量の変化
話を電力緊急警告の発令に戻そう。上の電力緊急警告発令日の表からも分かるように実際の計画停電は今年の冬の2月に起こった。2月2日のピーク時の電力需要は5,633万kWでそれまでの記録は5,587万kWだった。冬の寒さが原因で機材や装置の故障で500万kWが喪失したことも計画停電へ至った理由の1つだ。テキサスというと暑いというイメージを持ちやすい。しかし、冬は寒くなる。国の真ん中に寒気を遮る山がないため、寒い空気はテキサスまで達する。このため冬には雪も降れば、凍った雨も降る。冬は暖房がなければ過ごせず、夏は冷房がなければ暮らせないという厳しい天候だ。もちろん、冬季は夏のピーク時に比較すれば需要は低いがそれでも、冬には点検や寒い気候で運転を停止を余儀なくされる発電所もある。
どうすれば、この状況を打破できるのだろうか。4つばかり考えることが出来る。
1.余剰電力を提供できる発電機や発電所を、いつでも稼動できるように準備しておく。これは、確かに有効だが、常時必要のない発電所を何時でも使用できるように用意しておくのは、費用面から言ってあまり好ましくない。
2.節電を最大限まで進める。これには、大口消費者の節電も含む。これは、良くも悪くも大きな影響がある。良い影響は明らかだが、悪い影響はビジネスが節電で冷え込むかも知れない。
3.州内の風力発電などの新エネルギーの開発を促進する。テキサスは風力発電が盛んで今後も発電量は増加すると予想されている。風力発電の問題点は気象条件に左右され発電量が一定化しない。発電力が一定化しない電力源を電力系統に接続すると系統が不安定になり、最悪の場合停を引き起こす。現在変動型の電源である風力や太陽光をいかに系統に取り込んで全体の安定度を保つかの研究が行われている。
4.東や西の他の送電網 から電力を輸入する。電力系統は大きければ大きい程、細かな変動に対して抵抗力があり、また電力が足りない地域に電力を融通することも容易になる。東の送電網は一番大きいく、ふんだんの余裕がある。西も東ほどではないが、テキサス送電網よりもはるかに大きい。テキサスは独立心旺盛であまり他を頼らない傾向がある。現在までに幾分か他から電力を融通してもらっているが、十分ではない。
問題解決には1から4まで全て必要だが、特に今後3と4が必要になるのではなかろうか。なにやら、日本にも当てはまる様だ。
最近日本へ行ってある携帯電話の大手の会長と話す機会があった。その時、「WiMaxはアメリカは全然駄目ですよ。」と言ったら、「そんなはずはない。」と言われて少し言い合いになってしまった。日本だと、大手のコンピュータ関係の店に行くと、WiMaxの宣伝がガンガン出ている。こちらの、Fry'sに行ってもWiMaxの話は皆無だ。
ところが最近になって、オフィース長屋の隣人がやってきて、「ドライバーを貸してくれ」と言ったついでに、「おい、Clearと言うサービスプロバイダーが良いぞ。ATTより安いし、下りは10Mbまで行くぞ。」と言った。「それって、Clearwireか」と聞いたが、知らないとのこと。少し調べるとClearwireのWiMaxのサービスだと分かった。4Gだし、モバイルなんで、家でもオフィースでも使えるわけだ。家もオフィースもカバーされているようだ。「済みません Yさん、私の間違いでした。」
前にも書いたがアメリカはインターネットへのアクセスでは遅れている。筆者は未だに、2.5Mbs程度で作業している。もちろん、TVやビデオのサービスをついでに買えば10-20Mbs程度は確保できるのだが。。。安くて、アクセス・スピードが速いとなればなぜ変えないかということになる。しかし、これがClearwireと分かった時から、迷いだした。アメリカの携帯電話会社はユーザーの数から言えば、Verizonは1億800万人だが、現在9,600万人のATTのはT-Mobileの買収が完了すれば1億2千900万人になる。それで双方大体同じ大きさと言えるだろう。それに引き換え第三位のSprintは僅か5200万人だ。一位と二位の半分だ。これでは、生き残りが危うい。Sprintは以前からWiMaxに入れ込んでいる。ある前社長はWiMaxに入れ込むあまり、本業を疎かにしてボードに首を切られてしまった。それ以降過半数の株を持つClearwire にWiMaxを任せてきた。
技術やオペレーションだけで、プロバイダーを選べるのならこんな楽なことはない。アナリストとしてどうのこうのと人のことは言える。これが自分のこととなると、悩む。以前DSLが出始めた頃、Covadという地域電話会社でないDSLのプロバイダがあった(今もあるが)。そこに、DSLの接続を依頼した。Last mileの電話線はSBC(地域電話会社で、長距離専門のATTを買収して、現在は名前をATTに変更した。)の作業員がやってきて、裏庭に建っている電柱から新たに線を引いた。待てど暮らせど、何も起こらない。聞いたら、電話局から距離があり過ぎてDSLは不可とのこと。そのため、我が家には何にもしていない電話線が余分にある。電話局は後にファイバーで線を延長してそこから電話線を繋いだの、DSLはOKになった。
それで、DSLは使えないので止めた。ケーブルの@homeに切り替えた。最初は良かった。しかし、ATTに買われた。その時ATTはケーブル部門も持っていた。その時モデムの手法が違うかなんかで、1ヶ月は繋がらなかった。新しいモデムを設定すると簡単に繋がったのだが、それが原因であることやどのモデムに変更すれば良いかの情報が一切なかった。ATTのサポート番号は何時掛けても話し中。それでも、その後はしばらくはケーブルを使っていたが、頻繁に落ちるのと、なんやかやで、値段をガンガン上げるので、怒ってSBC(現在はATT)のDSLに落ち着いた。ATTのケーブルはその後Comcastに売却(馬鹿な判断だと言われていたが)。
悩む理由はこうだ。@Home.のサービスは本当に良かった。あまり落ちないし、値段もあまり上がらない。しかし、ある日買収されてしまった。その後がひどかった。また同じことが起こるのではないか。Clearwireのサービスは良い様だ。スピードも速い。ATTのDSLより安い。でも、ClearwireはSprintにおんぶに抱っこだ。Sprintがこけたら、Clearwireはオペレーションを続けられないだろう。そうしたら、またDSLかケーブルになる。そうしたら、またアカウントを設定したりでめんどくさい。今なら遅くて高いが接続はある。
今は、ATTのT-Mobileの買収を政府が認めるか、そうしたらSprintがどうなるのか。ATTやVerizonに買収されるかも知れない。アメリカは荒くたい。買収した会社の以前の方針なんか全く気にしない。
そうだ佐藤元首相に習って「待ちの岸本」で行こう。佐藤栄作首相を知らないって?
最近、GigaOMが主催するクラウドのコンファレンス、Structureに参加してきた。GigaOMのDerrick Harris氏はこのコンファレンスと同時にリサーチ レポートを発表した。A Field Guide to the Cloud: Current Trends and Futureというタイトルで、クラウドの現在の傾向とその将来、とでも訳すか。これからクラウドを採用しようとする大手と中小の企業、まだクラウドの分野で名前が売れていないベンチャー企業、どこと提携しようかと考えているクラウドの大手や中堅などを対象にしたレポートと考えられる。今回はこのレポートについて報告しよう。英語版のブログをここでさらに簡単にまとめた。詳細は英語版を参照のこと。
レポートは5つの分野を取り上げている。
Infrastructure as a service (IaaS)
Platform as a service (PaaS)
Software as a service (SaaS)
ストレッジ
プライベートとハイブリッド
IaaS
IaaSには2つの市場がある。ひとつはウェブ/インターネットで、もう1つはミッションクリティカル、主にエンタープライズの分野だ。ウェブ/インターネットでIaaSが浸透していることは言うまでもない。この分野にはAmazon AWSやRackspaceがおり、コモディティのIaaSと呼ばれる。クラウドによる売り上げはそれぞれ750億円と100億円と推定されている。今後、アナリティクスやテンプレートによる自動化の機能を追加する予定だ。
エンタープライズの分野ではセキュリティとアベイラビリティが確保できるようにならないと採用は難しく、ここ2年ばかり状況はあまり変わっていない。アベイラビリティよりセキュリティが要求される。これに加え、エンタープライズではVMwareが浸透しており、パブリックであってもVMwareを利用したいと考えている事情がある。現在大部分のパブリックはXenベースであるため、整合性が取れない。Eucalpytusがこの非整合性を解決する解を提供していることは周知のとおり。エンタープライズは最終的にはハイブリッドを狙っている。
PaaS
最近PaaSがホットだ。Salesforece.comによるHeroku、Red HatによるMakaraの買収の他、PaaSベンダーのDotCloud、PHP Fog、CloudBeesはVCから億単位の投資を受けている。またMicrosoftはWindows Azure PaaSを提供している。
PaaSの問題点は、1つのプラットフォーム、1つの言語、1つのスタックに縛られていることだ。この問題を解決すべくベンダーは動いている。今後、この分野の動きが加速すると予想される。大手ベンダーからの多額の投資、コントロール・選択の改善、ウェブ・モバイルのアプリの増加が予想されるためだ。
SaaS
GartnerはSaaSについて、2010年に9,200億円、2011年には1兆円規模になると予測した。一方IDCは、2015年にはクラウド全体で7.3兆円規模となり、そのうちの75%がSaaSと予想している。今後の課題はデータのインテグレーションと仮想化だ。
ストレッジ
クラウド ストレッジは主にバックアップとして利用されている。AmazonのS3は例外で、プライマリーのストレッジとして使用されている。Nasuniはこの分野で勢いがある。SSDは技術の進歩で価格も下落しており、今後目が離せない。下の写真は15,000rpmのHDDとSSDの価格をGbyte当たりで比較したもので、殆ど差がないことを示している。
プライベートとハイブリッド
このリサーチで行なったアンケートでは、少なくとも80%が今後はプライベートかハイブリッドを採用すると回答。それに対しパブリックのみと答えたのは37%だった。
プライベートで勢いがあるのは、Nimbula、Eucalyptus Systems、Cloud.com、Abiquoで、全部で73億円の資金導入があった。
プライベートでPaaSを提供しているベンダーはCumuLogic、CloudBees、Joyent、Red Hatだ。
Openstackへの支持が広がっている。例えば、Canonical/Ubuntu、NASA、Rackspace、Cisco、Dell、Citrixは採用している。オープンソースを使用すればパブリックとプライベートのどちらも構築できるため、整合性のあるハイブリッドを実現できるからだ。
今後の課題は、Big Dataへの対応、アプリ レベルでの機能のサポート、複数のストレッジやデータベースのサポートだ。
2012年に向け10の予想
コモディティIaaSベンダーはエンタープライズ市場へ進出
クラウドとBig Dataはその関係を深める
SSDは2つのIaaS市場に新しいアプリをもたらす
PaaSベンダーの買収と新たな参入が熾烈になる
プライベート市場で統廃合が起こる
AWSが何らかの形でオープンソースに関わる
データセンターでクラウドの遅延を解決できるようにするスタートアップはVCから大きな資金提供を受ける
AppleのiCloudやその他の消費者ベースのクラウド サービス提供者はモバイル開発者向けにPaaSを提供する
データ インテグレーションはデータ仮想化へと移行する
IaaSかクラウド ストレッジで大きなセキュリティ侵害がおこり、デファクトか標準化によるセキュリティの要求が高まる
サンフランシスコで開催されたDatacenterDynamicsのコンファレンスに参加してきた。日本のデータセンターが今回の大震災で受けた影響を報告するためだ。DatacenterDynamicsの友人はこの問題に大変関心を持っており、筆者のブログなどから記事を書いて発信してはいたが、彼の不満は何と言っても情報がほとんどないことだ。データセンターの被災については日本でもあまり話題にされてこなかったし、ましてや英語による情報はない。
そこでこの友人に、6月30日にサンフランシスコで行なわれるコンファレンスに日本データセンター協会(JDCC)から人を招いて話をしてもらったらどうかと提案した。彼は早速コンファレンスの係りと交渉してくれ、コマが取れた。さて次はJDCCを説得することだ。人は送れないが、筆者に代わりにやってくれという返事。しかしこれはやばい。表層的なことは話せても、筆者はデータセンター運営者が求めるような詳細を語ることはできない。そこで、東京でJDCCの会議に参加させてもらい、本物がやってきてこそ正しい情報を伝えることができると訴えた。その結果、IDC Frontierの山中氏がプレゼンを用意してサンフランシスコまで来てくれることになった。
コンファレンスで発表する山中氏
発表当日、筆者の短い紹介の後山中氏が登壇。英語が得意でないというのは日本人的謙遜で、完璧な英語でしかも物怖じせず、堂々とプレゼンを終了した。これは只者ではない。DatacenterDynamicsの宣伝に加え筆者もありとあらゆるコネを駆使した結果か、かなり大きな会場が結構埋まった。ざっと見たところ100名程度か。質問もガンガン出たが全部に答えることはできなかった。セッション終了後も質問者は引き下がらず、とうとうしまいには次のセッションの人に腕づくで追い出されてしまった。
この後、データセンター関係の有名人に氏を紹介したが、中でもOracleのエネルギー ディレクターのMukesh Khattarは山中氏を捕まえて離さず、質問攻めにしていた。彼は後のセッションでも山中氏の名を挙げ、氏が提供した情報を紹介していた。山中氏のような人はたくさんはいないだろうが、一企業のためではなく日本のためにスポークスマンを勤めて欲しいものだ。
左から、筆者、山中氏、Khattar氏
日本人間で励まし合うのも大事だが、外国への情報発信は不可欠だ。そして、IT分野は何が何でも米国だと考えてしまうのを止め、日本の技術に自信を持って海外に対し英語で発信しよう。日本の心を持ちながら、外国と対等に話ができる山中氏のような人がもっといないものか。。。。
米国の大手通信サービスベンダーと言えば、ATT、Verizon、それにSprintだ。ではこの通信サービスベンダーはどの様にスマートグリッドに関わっているのだろうか。最近のスマートグリッドのコンファレンスでセルラー通信を使う機器のベンダーであるSmartSyncの発表を聞いた。
電力会社はこれまで自社の通信インフラは自前で用意してきた。その大きな理由は、通信サービス会社がメータあたり1,000円から1,500円の通信費を課したことだ。これは電力会社にとっては到底採算の合うものではなく、そのため電力会社は自前の通信インフラを建設して維持してきたというわけだ。しかし電力会社はできれば本業でない通信インフラを建設したり維持したりしたくはない。
これが2つの理由で変化してきた。まずメータあたりの料金の低下だ。メータあたり5~25円まで下がり、採算的に合うようになった。そしてさらにスマートグリッドの進化がある。スマートグリッドはスマートメータとそれを支える自動メータ インフラ中心であったスマートグリッド‐Iから更に進んだスマートグリッド‐IIへと移行し始めている。スマートグリッド‐IIは需要応答や配電網自動化など、高速での通信を必要とするアプリケーションから成り立つ。そのため通信の帯域だけでなく、遅延も問題となる。スマートグリッド‐IIでは遅延はエンド ツー エンドで50ms以下であることが必要だ。現在のセルラー通信ではこの遅延を10ms程度で提供できるそうだ。またセルラー通信は標準となった通信プロトコルのIPをサポートしている。電力会社が今後も自前で帯域と遅延の要求を満たす通信インフラを維持し続けるためには専門家を雇用して多額の投資も必要となる。
こうした変化は、今回のSmartSyncの話からだけではなく、電力会社側からも窺える。おそらく全米最大の電力会社であるDuke Energy社はそのホワイトペーパーで通信業者との連携について次の要点を挙げている。
- コアでない機能は他社に頼る
- セルラー通信は50億の機器を接続している実績がある
- 規模の経済性
- IPのサポート
- 3Gは、既に多くの顧客に使用されている2Gとのコンパチがある
- セルラー通信サービスベンダーはハード、ソフト、サービスに多額の投資
- テクノロジーその他のベンダーに多大な影響力を持っている
セルラー通信企業のスマートグリッドへの参入はまだ実験段階のようだが、この発表では、ある電力会社との6ヶ月間にわたる試験的プロジェクトが成功したことにも触れていた。更にSmartSyncはQualcomm社と共同でスマートメータの実験も行なっている。スマートメータをスマートフォンのような仕様にしてメータ上で複数のアプリを実行できるようにし、バグ修正や新しい版のダウンロードを自動化して簡素化を図った。この発表で、今後新たにネットに接続される機器は20億から100億個となり、しかもその内の65%が電力業界によるものと予測している。電力業界における通信のニーズは飛躍的に増加すると予想される。
日本でも本格的にスマートグリッド化を進めることになれば、ドコモ、AU、ソフトバンクなどのサービスプロバイダも参入するだろう。ICTの解を提供する会社に取ってはチャンスだ。
以前、ITは新しい技術を開発するだけではもう生き残れないと書いた。そしてスマートグリッドにはICT(ITと通信)を応用するチャンスがあるとも書いた。震災以前の日本ではスマートグリッドの位置づけは特殊なもので、米国のスマートグリッド技術をそのまま適用するわけにいかなかった。だが震災で東日本の電力不足が起こり、その対策としてスマートグリッドの活用が現実味を帯びてきている。そこで今回は、米国の大手IT企業によるスマートグリッドへの取り組みなどについて述べてみよう。
スマートグリッドは、多種・多数のデータを実時間で収集・解析して有益な情報に変換し、その情報に応じて種々の機器やシステムを制御することで円滑に運営される。そのため、ITと通信の技術(ICT)の応用が必須だ。以前述べたように、最近データの発生源が増加している。普通のコンピュータ環境でもデータは増加する傾向にあるが、モバイル分野と人間を介さないマシン間(M2M)の分野では通信量とデータ量が爆発的に増加しており、今後更に増加すると予想されている。そのM2Mの分野でスマートグリッドは通信量とデータ量で断トツだ。
最近スマートグリッドのコンファレンスで、Oracleのスマートグリッドへの取り組みの話を聞いてきた。Oracleと言えばSAPと並びソフトに特化した大手で、最近Sunを買収してハードも手に入れたIT企業の中のIT企業と言える。そのOracleがスマートグリッドに参入している。スマートメータから得られたデータの解析と管理、電力会社のバックオフィスでのアプリケーションの設置と管理、そしてLANの分野(Sunの買収による)でスマートグリッドに参入していると市場調査会社の報告にあった。
Oracleのプレゼンテーションで特に面白いと思ったスライドが下の写真。これは大手電力会社が取り扱うデータ量の変化を示したもので、Y軸がデータ量(単位はテラバイト-TB)、X軸が時間の推移だ。スマートグリッドの色々なアプリケーションやサービスが時間と共に展開されていく様子を示している。現在100TB程度のものが最終的には800TBになると予想されている。
図中の矢印で示された各ポイントは以下のとおり。それぞれの機能の詳細はここでは述べない。というのは、それぞれがそれひとつで独立したブログになる内容なのだ。
· 自動化の配電網への伸張(配電網レベルでの監視・管理の自動化)
· 作業員管理システムの設置(作業員の管理の自動化)
· 変電所の自動化(変電所内の機器・装置の監視・管理の自動化)
· モバイル データの実装(モバイル機器によるデータのオンライン化)
· リモート ターミナル ユニットのアップグレード(リモートで監視・管理するシステムの機能アップ)
· 地理情報システムの設置(新しい装置の位置情報が自動的にシステム全体に反映される)
· 停電管理システムの設置(停電を自動で検知し、可能な限り自動で修復する)‐200TB地点に到達
· 配電網管理システムの運用開始
· 自動メータ インフラの展開(スマートメータをサポートするインフラの設置)
· 通信用設定可能サーモスタットの実装(通信機能を通じてコントロールできるサーモスタットの設置)‐700TB地点到達
· スマートメータ接続の新しい家庭用機器の利用(スマートメータと交信可能な機器や装置の家庭内設置)‐800TB到達
ICTは機能やサービスの自動化に大きな役割を果たし、自動化により生成される莫大な量のデータを管理・処理するにはICTが不可欠だ。例えば、配電網内の機器や装置の故障で起こる停電について考えてみよう。機器や装置を個別に監視して正常値から逸脱した際はそれが故障か、あるいは故障につながるトラブルかを判断し、将来故障する確率を分や時間単位で算定できるようになれば、その装置にかかる負荷をコントロールして故障を防ぐことができるようになるかもしれない。数多い機器や装置を実時間で監視してその健全性を判定することはICTを駆使しなければ到底不可能だ。身近なところで、家庭内でも、洗濯機、冷蔵庫、調理器具から、TV、PC、プリンタ、そして冷暖房や照明機器に至るまでの多種多様な機器も、電力消費量を測定しスマートメータと通信可能になってゆく。その通信は人間を介さないM2Mで、ここでもICTの技術が使用される。
将来出てくると予測される機能やサービスに、電気自動車の展開や再生可能エネルギーによる発電に伴う電力の管理がある。電気自動車の充電には家庭一軒で消費されるのと同程度の電力が必要だ。このため、個人個人が好き勝手に充電を始めると電力需要の急激な増加が起こり供給が追いつかなくなる可能性がある。電力需要と供給のバランスを保ちながら充電できるようにするための制御機能が必要だ。いつ、どこで起きるのか分からない充電による需要の増加を監視し、全体の需要と供給の状況に応じて最適な充電スケジュールを算定し、個々の充電に対し許可するのか延期するよう求めるのか決定しなければならない。更に、高い料金を払えば、先に充電しようとしていた人よりも優先して充電を行なうことができるようにするサービスだって開発できる。それもこれもICT技術があってこそだ。
また発電では一定の電圧や周波数を保つ必要があるが、太陽光や風力による発電ではそれが難しい。発電量が多くなりすぎた際にそのまま流すと送配電網の許容量を超えて電力網全体が不安定になってしまう。秒単位で変化する発電量や送配電網のその時点での許容量を把握して蓄電器への充電や発電の一旦停止などの判断をする。ここでもICTの技術が頼りだ。
ICT屋さん、皆さんの将来は明るい。
以前、日本で議論されているスマートグリッドと米国で現在実装されつつあるスマートグリッドは異なっていると書いた。電力会社の人に話を聞くと、日本のスマートグリッドが最終的に目指すものはどうやら「低炭素化社会の達成」らしい。これでは、「スマートグリッドは電力不足の解消策だ」と業界の人が言う米国型スマートグリッドの適用は考えられない。しかしこれは3.11で変わった。東日本の電力不足は米国型スマートグリッドで解決されるだろうか。
米国の電力網インフラはかなり危うい。発電所とそこから広がる送電網の新規建設が長い間先延ばしにされてきた。日本より国土が広いとはいえ日本同様人々は自分の家のそばに発電所や送電線が建設されることに反対してきた。そして気がつくと、電力の需要に見合う供給を行なうことが困難になってきているのだ。それでも送電網は比較的よく保守され、監視もされている。問題は配電網だ。
高電圧を運んできた送電線は変電所に接続され、ここで高電圧が低電圧に変換される。この変電所から消費者へと繋ぐ電力網が配電網だが、これが老朽化している。配電網では耐用年数をとっくに過ぎた変圧器やその他の機器類が使用されており、これらが突然故障して停電を引き起こすことが結構ある。米国内の電力会社の停電状態をTwitterでフォローしていると、停電の情報が天候に関わらず流れているのに気付く。もちろんすべての問題が配電網によって引き起こされているわけではないだろうが、かなりの率を占めることは間違いない。しかも停電が起きても、電力会社は消費者からの電話連絡以外に停電が起きていることを知る術がない。この配電網にテコ入れすることが現在米国スマートグリッド市場に見られる傾向のひとつだ。これは配電網自動化(DA)と呼ばれ、配電網内の機材の交換や監視の強化が含まれる。DAへの興味や期待は、市場のこれまでの牽引者であったスマートメータや家庭エネルギー監視システムからのシフトと見られる。
このDA、日本には当てはまりそうにない。配電網はインフラ老朽化というにはほど遠いし、問題の自動検出や自動復旧などの技術にも優れているからだ。ではスマートグリッドのどこが東京を含めた東日本の電力不足の解決に役立つのだろうか。
実はDAにはもうひとつの側面がある。配電網内の電力の需要と供給のバランスを図るということだ。これには需要応答という機能も密接に関連してくる。最近参加したコンファレンスのパネルでも取り上げられていたが、これまで分からなかった電力の消費情況が、スマートグリッドでは実時間で細かく把握できる。もちろんこれはすべての消費者がネットワークで電力会社と接続されていることが前提となる。日本の電力会社はスマートメータの設置実験を行っていると聞いている。しかしメータの積極的な設置には至っていない。それは、電力はふんだんにあるので少々の需要増加にはびくともしないという大前提があるからだ。
電力消費量を正確に把握するには、すべての消費者がネットでつながっていることが望ましい。一番簡単なのはPLCと呼ばれる電力線を介したネットワーク接続だが、米国も日本もPLCは発達していない。そのため独自のネットワーク接続が必要となる。それがスマートメータと自動メータインフラ(AMI)だ。スマートメータの設置は費用も時間もかかることは間違いないが、電力問題を本格的に解決しようとするなら避けては通れない。米国ではスマートメータ自体の費用や取り付け工事費用は電気料金に上乗せされている。そんな馬鹿なと思うかもしれないが、電力会社が新たなサービスや製品を提供する場合、それに掛かる費用はほとんどすべて電気代に上乗せされる。日本でも同じだろう。ソーラーパネルから発電される電力を電力会社が買い取る経費はすべて電気料金に上乗せされ、消費者全体で負担している。ソーラーパネルを持っていないあなたも私も、ソーラーパネルを持っている一部の消費者への支払いに協力しているのだ。
スマートメータの設置には2~3年を要するだろう。だが2~3年のうちに電力問題が解決すると期待しない方がよい。我々が使用できる電力は自然界には存在しない。異なったエネルギー源から作り出すわけだが、そのエネルギー源を日本ではほとんどすべて輸入に頼っている。今後エネルギー源の争奪戦が世界中で起こることは間違いなく、価格も高騰すると予測される。その中、発電効率が比較的高く温室効果ガスを出さない発電エネルギー源ということで、原子力が急速にエネルギー政策の柱になっていったという事情がある。しかし今回の事故で、原子力による発電は漸次減少していくのではないか。
原発を廃止して再生可能エネルギーを使えという感情的な論調を最近よく耳にする。しかしソーラーパネルなどの再生可能エネルギーによる発電量は、火力や原子力に勝るのに10年どころか、数十年かかかってもそのレベルに達しないかもしれない。再生可能エネルギーを利用することは当然必要だが、現実には化石燃料も不可欠なのだ。我々には、電力を無駄なく最適に使用するしか方法はない。そうしなければ、一日のうちに電気がつくのは数時間、という時代も決してあり得ないことではないのだ。
次回は、数年後スマートメータが大部分の消費者に設置されたとして、スマートグリッドがどのように電力不足解消に役立つのか見てみようと思う。
前にも書いたが、アナリストに成り立ての頃、アナリストとして活動している人に、何時になったらアナリストとして認められるのかという質問をしたことがある。自分がアナリストだと思って相手もそう思ったとき、という答えだった。それから時は流れ、コンファレンスをカバーして欲しいと先方から連絡が来るようになった。最近Cloud Connect 2011というコンファレンスに参加した。また「Smart Gridから生じるデータの管理」という別の集まりのパネル討論では司会を務めた。今回はこの2つの集まりで話題になったことを中心に書こうと思う。
SunのLew Tuckerと言えばCloudのコンファレンスでいつも基調講演をしたりする有名人だ。OracleがSunを買収した後はCiscoに移っている。彼の基調講演はビデオ撮影したので、興味のある人はここ。
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CiscoのLew Tucker氏
氏の話を簡単にまとめると、ネットワークで接続されたスマート オブジェクトが激増し、それらが発信するデータが莫大な量(Big Data)になってきているということだ。以下の図はTucker氏の話を基に筆者が書いたものだ。
そもそも、どうしてこんなに莫大な量のデータが突然湧いてきたんだろう。PC、サーバからのデータに加え、モバイル機器の増加でデータが大幅に増加していることは誰でも知っている。今後更に増加するということにも異論を唱える人は稀だろう。
では次にこのセンサーとは何だろう。そしてセンサーから大量のデータが生成されるということはどういうことなのか。ここで言うセンサーとはビル管理用のものだ。商用ビルや工場の管理には数多くの通信プロトコルやデータ形式が使用されてきた。さまざまな職種の人たちによりばらばらに管理が行なわれてきた結果だ。例えば、ひとつの建物で空調なら空調、照明なら照明と異なったベンダーから購入して、その管理にはそれぞれのベンダーが提供するシステム(プロトコルやデータ形式)を採用した。そのため、ひとつの建物でも機能により複数のコントロールシステムが存在して、プロトコルも異なればデータ形式も違い、全く互換性がなかった。これを統一するためASHRAEによってBACnetが開発され、それぞれのシステム間の互換性が図られた。さらに一元的でより効率的な管理をめざし、ITと連携させるためにBACnet/IPなるものが開発された。
従来ビル管理を担ってきたベンダー、たとえば筆者が直接話をした空調機器のベンダーは、IP化が自然の流れとは認めながらも、現在IPを主にビル間の通信インフラとして利用して、BACnetを廃止する予定はない。今後も短期間のうちにBACnetがIPにとって代わられ消滅することはないだろう。これはNISTのsmart grid標準技術の中にIPと共にBACnetが明示されていることからも分かる。しかしIPとの互換性が図られたことで、以前に比べ建物のデータがITに流れ始め、データ量が増加している。
更に、建物内に無線のセンサーを設置する動きが活発となっている。無線なら壁に穴を開けたりケーブルを這わす必要もない。米国ではセンサー技術が実用化され始めた1980年代以前に建設された建物が全体の50%を占める。こういった建物の管理に無線センサーは最適だ。最近、スマートメータや家庭内ネットワークに使われる低電力・短距離用無線センサー プロトコルであるZigBeeがデファクトになりつつあり、ビル管理にも浸透してきている。このZigBeeですらIP化の波を避けることはできず、自前のネットワーク層の代わりにIP層を使用し、変更を加えたアプリ層をUDPの上に乗せたZigBee IPを開発している。無線センサーは普通の建物だけではなく工場などにも容易に設置でき、しかもIPを話す。こういった無線センサーからのデータも膨大な量となる。
Tucker氏が示したデータ源はもうひとつある。自動車だ。たとえばセンサーによる車の位置情報は交通情報を提供したり衝突を回避するために利用できるが、こうしたセンサーとコントロール回路との交信など、データ量の飛躍的な増加が見込まれている。
先日司会をしたパネル討論では、このデータをどう処理するのか、どのようにして解析を加えるのか、その解析結果をどのように利用するのか、さらにデータのセキュリティはどのように保証するのか討論したが、結論はまだ出ていない。
さて、IPの世界制覇はいつになるのだろうか。エンタープライズのIT部門はエンタープライズのテレコム部門との戦いに勝ち、エンタープライズにIPの旗を打ち立てた。さまざまな分野でIPが他のプロトコルの牙城を次々に落としている。なにせ、NISTを始めとする政府が後ろについている。そう、IPは官軍なのだ。既存のシステムをどのようにIP化していくのか。IPを話さない既存のシステムをどのようにしてまとめて、エンタープライズのITに収束していくのか。Ciscoは端からIPで統一するつもりだ。しかし本当にそんなことができるのか。筆者としては現在こういったところに興味がある。





























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