ヨロズIT善問答:ITmediaオルタナティブ・ブログ (RSS) ヨロズIT善問答

30年に渡って関わってきた米国のITの出来事、人物、技術について語る。

前にも書いたが、アナリストに成り立ての頃、アナリストとして活動している人に、何時になったらアナリストとして認められるのかという質問をしたことがある。自分がアナリストだと思って相手もそう思ったとき、という答えだった。それから時は流れ、コンファレンスをカバーして欲しいと先方から連絡が来るようになった。最近Cloud Connect 2011というコンファレンスに参加した。また「Smart Gridから生じるデータの管理」という別の集まりのパネル討論では司会を務めた。今回はこの2つの集まりで話題になったことを中心に書こうと思う。

SunLew Tuckerと言えばCloudのコンファレンスでいつも基調講演をしたりする有名人だ。OracleSunを買収した後はCiscoに移っている。彼の基調講演はビデオ撮影したので、興味のある人はここ 

Lewtucker

CiscoLew Tucker

氏の話を簡単にまとめると、ネットワークで接続されたスマート オブジェクトが激増し、それらが発信するデータが莫大な量(Big Data)になってきているということだ。以下の図はTucker氏の話を基に筆者が書いたものだ。

Bigdata

 

     
データは頻繁に途切れなく生成されて送信される。一体この莫大な量をどう始末するのだろうか。Cloud Connectでの様々な発表や議論の中で、Cloudは確かにコンピュテーションをサポートする部分もあるが、本当のすごさはデータ管理ではないかという意見が数件あった。まさに我が意を得たり。生成されるデータをすべて捕捉することは不可能だし、おそらく不要なデータもたくさん混じっている。しかし逆に言えばこのBig Dataは宝の山だ。ではどうしたらこの莫大な量のデータから必要なデータを抽出して解析し、判断を下す際に有効活用できるようにするのか。

そもそも、どうしてこんなに莫大な量のデータが突然湧いてきたんだろう。PC、サーバからのデータに加え、モバイル機器の増加でデータが大幅に増加していることは誰でも知っている。今後更に増加するということにも異論を唱える人は稀だろう。

では次にこのセンサーとは何だろう。そしてセンサーから大量のデータが生成されるということはどういうことなのか。ここで言うセンサーとはビル管理用のものだ。商用ビルや工場の管理には数多くの通信プロトコルやデータ形式が使用されてきた。さまざまな職種の人たちによりばらばらに管理が行なわれてきた結果だ。例えば、ひとつの建物で空調なら空調、照明なら照明と異なったベンダーから購入して、その管理にはそれぞれのベンダーが提供するシステム(プロトコルやデータ形式)を採用した。そのため、ひとつの建物でも機能により複数のコントロールシステムが存在して、プロトコルも異なればデータ形式も違い、全く互換性がなかった。これを統一するためASHRAEによってBACnetが開発され、それぞれのシステム間の互換性が図られた。さらに一元的でより効率的な管理をめざし、ITと連携させるためにBACnet/IPなるものが開発された。

従来ビル管理を担ってきたベンダー、たとえば筆者が直接話をした空調機器のベンダーは、IP化が自然の流れとは認めながらも、現在IPを主にビル間の通信インフラとして利用して、BACnetを廃止する予定はない。今後も短期間のうちにBACnetIPにとって代わられ消滅することはないだろう。これはNISTsmart grid標準技術の中にIPと共にBACnetが明示されていることからも分かる。しかしIPとの互換性が図られたことで、以前に比べ建物のデータがITに流れ始め、データ量が増加している。

更に、建物内に無線のセンサーを設置する動きが活発となっている。無線なら壁に穴を開けたりケーブルを這わす必要もない。米国ではセンサー技術が実用化され始めた1980年代以前に建設された建物が全体の50%を占める。こういった建物の管理に無線センサーは最適だ。最近、スマートメータや家庭内ネットワークに使われる低電力・短距離用無線センサー プロトコルであるZigBeeがデファクトになりつつあり、ビル管理にも浸透してきている。このZigBeeですらIP化の波を避けることはできず、自前のネットワーク層の代わりにIP層を使用し、変更を加えたアプリ層をUDPの上に乗せたZigBee IPを開発している。無線センサーは普通の建物だけではなく工場などにも容易に設置でき、しかもIPを話す。こういった無線センサーからのデータも膨大な量となる。

Tucker氏が示したデータ源はもうひとつある。自動車だ。たとえばセンサーによる車の位置情報は交通情報を提供したり衝突を回避するために利用できるが、こうしたセンサーとコントロール回路との交信など、データ量の飛躍的な増加が見込まれている。

先日司会をしたパネル討論では、このデータをどう処理するのか、どのようにして解析を加えるのか、その解析結果をどのように利用するのか、さらにデータのセキュリティはどのように保証するのか討論したが、結論はまだ出ていない。

さて、IPの世界制覇はいつになるのだろうか。エンタープライズのIT部門はエンタープライズのテレコム部門との戦いに勝ち、エンタープライズにIPの旗を打ち立てた。さまざまな分野でIPが他のプロトコルの牙城を次々に落としている。なにせ、NISTを始めとする政府が後ろについている。そう、IPは官軍なのだ。既存のシステムをどのようにIP化していくのか。IPを話さない既存のシステムをどのようにしてまとめて、エンタープライズのITに収束していくのか。Ciscoは端からIPで統一するつもりだ。しかし本当にそんなことができるのか。筆者としては現在こういったところに興味がある。

zen kishimoto

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岸本 善一

岸本 善一

京都大学電気工学科を卒業後、米国でコンピュータ・サイエンスの博士号を取得。
GTE研究所、HP、NECを経てIP Devices社を設立。先端技術をビジネス展開に結びつけるコンサルティング業務を提供する一方で、Green ITにも関わっている。

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