30年に渡って関わってきた米国のITの出来事、人物、技術について語る。

データセンター市場としての日本

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中国やインドの台頭が著しい。その他韓国やシンガポールの追い上げもある。日本再生のためには、外国に市場を求める他、日本市場を活性化させることも大切だ。

日本はデータセンターの市場としてどうなんだろうか。それを知るには米国から進出しているデータセンター事業者に話を聞くのが一番手っ取り早い。米国を中心に全世界でデータセンター事業を展開しているEquinix社の東京のデータセンターに大槻顕人氏(セールスエンジニア)を訪ねた。Equinixのファウンダーのひとり、Bill Norton氏を知っていることもあり、サンホゼにあるそのデータセンターは何度か見学したことがある。Equinixが東京ではどんなセンターを運営しているのか、また日本市場はどうなのか、興味のあるところを今回大槻氏に伺った。

Ohtsukiequinix

大槻氏

大槻氏は日本の銀行や外資の通信関係企業での経験をお持ちで、日米どちらのビジネスも実際に体験されてきたので、その言葉はまさに核心を突いて説得力がある。更にNorton氏のことも知っていたため、初対面とは思えぬ和気藹々とした雰囲気のうちにお話を聞かせていただいた。

日本のデータセンターについてよく言われるのは、2008年に日本のデータセンター事業者は容量を作りすぎて、その後のリーマンショックも重なり市場が冷えこんでいるということだ。Equinixは正反対で、20078月に2番目のセンター完成の頃はあまり需要が無かったが、2008年に入って需要が激増し、現在3番目のセンターも建設中だ。一体同じ東京の市場で何が違うのだろうか。

例によってまとまりがないが、大槻氏との会話を思い出しながらだらだらと書いてみる。まず場所だが、品川駅から30分以内で行ける。往きはタクシーを使ったが、帰りは歩いてみた。大きな看板もなく思わず通り過ぎてしまいそうだ。よく見るとビルの窓すべてにブラインドが下り、米国で見るデータセンターと同じ。日本の他のデータセンターはでかい看板なんぞがあったりするが。

シリコンバレーは田舎なのでデータセンターは広い敷地に建っている。一階建てでともかく広い。東京のEquinixのデータセンターは7階建てだ。1階には非常用のガスタービン発電機が、2階には電力や冷却の装置が設置され、残りの3、4567階がデータセンターのフロアということだ。訪問前にセンターの周りをちょっと歩いてみたが発電機が見当たらないので変だと思っていたら、内部に緊急発電装置があるのは、外部に出しておくと作動したときに出る煙で近くの住人が大騒ぎをするからとか。そういえば、すぐ前はアパート群だ。月1のテストで運転するが、煙などは極力処理してから外部に出すなどの努力をしている。

米国Equinixのフロアは二重床ではなく冷却や電源は上から来るが、東京のセンターでは二重床を採用している。まず感じることは、日本は良い意味で細かいということ。ラックのあるフロアに入る際は内履きに履き替えたり、静電気を防ぐために靴に覆いを被せたり、今自分は東京にいるんだと感じた瞬間だった。大槻氏も指摘されていたが、ある一定の基準を満たしたデータセンターはどこもそれほど変わったことはない。

さて、話題を市場へと移してみよう。まず気になるのが顧客の種類だ。やはり外国系企業が多いのだろうか。センター開設当初は日本での知名度が低く、予想通り6070%は外国系企業だったが、最近は50%程度が日本企業だそうだ。

ここに入っているお客さんにとって何が一番重要なのかと聞いてみた。逆にそれがEquinixの強みとも言える。3つの柱があって、まず地の利だという。これは前にも聞いた。東京23区内でしかも山の手線内側かその近く。自社から30分以内で行ける所というのが日本ではデータセンターの場所として好まれる。Equinixは最初のサイトもこのセンターも品川界隈にあり、建設中の3つ目もこの辺りだそうだ。新たにプログラムを設置したり機材を導入した際、最初の36ヶ月はラックに張り付くことになる場合が多く、その際、遠いセンターでは仕事にならない。東京は地価もなんでも日本一高いから、じゃあ大阪にセンターを作ってそこで運用しようかという案が浮かぶかもしれないが、東京本社から23人のエンジニアを大阪に出張させて何日も作業させることを考えると結局は東京の方が安くなってしまう。おまけに電気代は東京23区の方がその周辺地域より割り安で、通信・ネットワーク費も23区内の方が安いとか。反対のように思えるが実際はそうではないらしい。今お客が入らないセンターというのは東京の都心から離れたところにあるのではないかと思う。

2つ目の強みは海外のお客だ。今のところ、ファースト ラインのサポートからエンジニアのサポートまで日米両語でできるのはEquinixだけだという。他社もようやく力を入れ始めたようだが。筆者は日本へ米国の企業を連れて来るということをしばらくやったことがあるので、これはよくわかる。技術は世界共通語で、技術の話は言葉ができなくても通じるというのは全くの嘘。全くの嘘というのは少し言い過ぎかもしれないが、言葉の問題は実に大きいのだ。双方の技術のベースが同じであれば、相手の言葉が理解できなくても、例えばCプログラムを見れば一目瞭然となり、意思疎通はできるかもしれない。しかし技術のベースが違うとなると、言葉が通じなければどうにもならない。例えば、日本語はコンピュータ上では34の異なったシステムの上に成り立つ。そのため日本語のサポートは複雑だ。MySQLの日本進出をサポートしていたとき、この問題で苦労した。1バイトの世界に住むエンジニアは2バイトのエンジニアと話が通じない。UTF-8ですべて処理できていると単純に思っているからだ。ベースが違う場合、言葉が通じないとサポートはまず無理だ。

3つ目の強みは、Equinixは多くのキャリアをホストしていて、それが売りになっている点。これは米国と同じだ。海底ケーブルの引き込み線も来ていて、日本、米国はもとよりアジア各国から二十数社のキャリアが集まっている。例えば、中国はあまりないが、香港、マレーシア、フィリピン、オーストラリア、インドなど。つまりここ東京にサーバを置けばアジア各地にサーバを置かなくてもカバーできることになる。

視点を変えて、日米のデータセンター事業者のビジネスや仕事のやり方について聞いた。いちいち思わず頷いてしまう。まず人員数。米国型は少数精鋭で、仕事の枠がきちんと決められていないことが多い。まさにスタートアップのカルチャー。対して日本型は組織をかなりしっかりさせて多人数(米国型に比して)で立ち上げる。米国型は書面やログなどはきっちり残すが、仕事の上では弾力性があり、お客のリクエストには臨機応変。悪く言えばアバウトだ。日本型はもっと柔軟性があってもよいのかもしれない。

日本のお客と外資のお客の差も面白い。今米国で話題になっているエネルギー効率化というのは日本のお客にはあまりセールス ポイントにはならず、費用とどれだけ今風のハイテク機器を展開しているかということが重要なようだ。外資のお客は、現場レベルでどれだけ本当にサポートしてくれるのかが気になるらしい。

3年くらい前まではネットワークやその他のインフラで日本はデータセンターの市場としてはシンガポールや香港に大きく勝っていた。しかしその問題が解決されてきた今、逆に東京の地価と電気代の高さがネックになってきている。その上英語によるサポートの欠如というのは日本に進出しようとする企業にとっては一番大きな問題かもしれない。ある米国大手のデータセンターの人と1年半前に話した時、アジア進出はシンガポールか東京だと言っていたが、蓋を開けたらシンガポールだった。次の進出地に挙げられているのが香港、シドニー、上海。東京がないのが寂しい。上海はともかく、あとは全部英語が通じる地域だ。さて日本はどうしたものか。

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