米国の納税と国税庁
アメリカでは4月15日が個人の確定申告の締め切りで、ビジネスは3月15日だ。何せ零細企業でも一応株式会社で納税義務があるので、3月15日の締め切りは気になる。それが終わり、今年は珍しく個人の分も済ませ、何となくほっとした。ご存知かと思うが、アメリカは基本的に各自確定申告だ。大企業に勤めていても、会社は何もしてくれない。全部個人で申告しなければならない。もうひとつ日本と違うのは、日本は夫婦でも個人個人の申告となるが、こちらは夫婦まとめて申告できるオプションがある。
当然3億人いるこの国のこと、税金の申告にもITが活躍している。2週間前のコンファレンスで国税庁(IRS)のデータセンターに関するセッションがあったので参加した。演者は面白い人で、他のITのコンファレンスで発表をしたら、遅れて会場に入ってきた人がスライドにIRSと入っているのを見て慌てて部屋を出て行った、と言って皆の笑いを誘った。泣く子も黙るIRS、面目躍如といったところだ。
最近データセンターは廃統合される傾向が強い。IRSもそれにならって、10ヶ所あったデータセンターを3つに統合した。3つのうち1つが申告された税金について実際の作業を行い、2つ目はその作業も行うが1つ目のスペアの役目を果たす。最後の3つ目のセンターはIRS自体の業務用だ。場所は1つ目が首都ワシントンに近いマーティンスバーグで2つ目はメンフィス、3番目はデトロイトだ。コンピュータは様々なものが使用されている。IBMとUnisysのメインフレームの他、ありとあらゆる種類だ。例えば、Linux、Windows(各種)は当たり前で、Solaris(各種)やNovellまである。このため、かなりの人数を雇用しているとのことだ。 この話で一番面白かったのは、昔ながらの紙で申告する場合の作業の流れだ。紙の申告では、まず何枚もの用紙をそれぞればらして処理していく。その作業を示したのが次の写真だ。
この作業の後、申告ごとにそれぞれ固有の番号を付ける作業がある。これも原始的だが、次の写真に示す。
番号の付いた申告書類は、以下の写真のようにして保存される。
紙の場合、入力ミスなど間違いの割合は20%とか。オンラインの場合はわずか2%だそうだ。また現在、紙とオンラインの申告件数は6千万対9千万だそうだ。読者の皆さんは、当然筆者はオンラインで申告していると思うだろう。ところが、何年前だったか、オンラインでやろうとしたところ、ある部分をいくらやってもコンピュータが受け入れないので、仕方なく止めて、未だに紙で申告している。税収が落ちている中、IRSは申告者を呼び出して質問攻めにあわすaudit(税務調査)の数を記録的に増やしているそうだ。20%のミスの確率でauditされてはかなわない。来年こそはオンラインで。