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30年に渡って関わってきた米国のITの出来事、人物、技術について語る。

これさえ知っていれば、絶対にベンチャーで失敗しない(かな?)

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と書くと、本当にそんな方法があると思うかもしれないが、そんな方法があったらどうして皆が成功しないのだろうか。そんな方法があると言っている人はどうして自分でやって一人で儲けないのだろうか。筆者は残念ながら絶対成功する方法は知らないが、何故失敗するかは分かる。それなら、失敗する条件を挙げてそれを出来るだけ回避すれば、成功に近づくのではないだろうか。そうしたからといって、成功するという保証はないが。

失敗する理由は貨車一杯ある。主なものを筆者の経験からいくつか述べてみよう。

1. 「僕も、私も」症候群

2. おそまつなチーム

3. 市場に比して早すぎる技術

4. 凄い技術と存在しない市場

5. ゴリラを倒そうとする愚かな試み

6. 解析をし過ぎる

7. 直ぐに投げ出す

8. 他人の言うことに振り回される

まず1の「僕も、私も」症候群についてだが、ベンチャー会社は個人の能力によるところが大きい。どんなアイディアを出せるかだ。しかし、凄い技術やビジネスモデルを発明したと思うとき、注意した方が良い。世の中には自分より能力のある人間が掃いて捨てるほどいるものだ。殆ど同時期に同じ分野で似たようなベンチャーが複数個登場する。これは、技術やインフラが整い、ある時点で今まで不可能だったことが可能になることがあるためだ。日頃から市場を見て新しいベンチャーを考える人達の考えは似通ってくる。だが、他と変わっていないとまず成功しない。差別化というのは非常に重要で、ちょっとやそっとの差別化では成功しない。TENというインキュベーションでアドバイザーをやっていた時、持ち込まれる案件は、前の会社で気がついた簡単な問題を解決するものが多かった。そんなものでは競争に勝てない。

2のチームに関しては航空業界の話でも書いたが、ひょっとすると一番大切なのはこのチームではなかろうか。ベンチャーの立ち上げは一緒に戦場に行くようなものである。絶対に信頼の出来るチームでなければいくさは戦えない。弾は前から飛んでくるだけとは限らない、という状況ではおちおち戦っていられない。少なくとも一度は一緒に仕事をした人間と組まないと、困難な状況に直面した時に必ず揉める。自分より経験も能力もあると思う人のチームに潜り込むことがひとつの方法かもしれない。

どちらも技術と市場に関係しているが、34と違う。先を読めるビジョナリーと呼ばれる人々は時として市場の推移の速度を見誤る。彼らのアイディアはタイミングが早すぎて、市場がそれを消化できないのだ。Netspaceの話で書いたMarc AndressenLoudCloudなんぞはその良い例だ。現在のCloudの原型のような会社だったから、立ち上げがあと数年後だったら、今頃すごい注目を浴びていただろう。でもこれを避けるのは難しい。これは筆者だけでなく、この道の専門家でも困難だ。

43とは大いに違う。3は、将来市場は立ち上がるのだけれど今はまだその時期でないというものだが、4は独りよがりで、自分で凄いと思う技術を開発するのだが、全く市場が反応しない。これは比較的簡単に見分けられる。客観的な見方の出来る人に意見を聞くのはどうだろうか。信頼できる友人に意見を聞いて見るのも良いだろう。

5のゴリラとは、この業界でよく使用される、市場のリーダーのことだ。誰しも一度くらい、MSを凌ぐ技術を開発して一泡吹かせてやろうと思ったことがあるのではなかろうか。IT業界では、一旦市場で絶対優位を確立してしまった企業をそこから引き摺り下ろすのは殆ど不可能に近い。デスクトップの環境ではWindowsより良いものはたくさんある。Ubuntuなんぞはその最たるものである。しかし、あれだけ支持を受けているUbuntuですら、MSの市場をひっくり返すことは不可能だろう。もしMSに代表される圧倒的に強いリーダーを倒すことが可能であるとするならば、それはパラダイムが動いた時だろう。梅田望夫氏の言葉を借りるなら、MSは「こっち」の世界をデスクトップで征服した。インターネットというパラダイムシフトで、市場は「こっち」から「あっち」へシフトしている。これがCloud Computingだけれど、MSは「こっち」でのマーケットシェアを守るため、「あっち」への取り組みが遅れ、Googleのリードを許してしまった。「あっち」はインフラ等を整備するのに莫大な経費がかかる。InternetCloudの市場で現在のリーダーを倒すのは並み大抵なことではない。

6の解析し過ぎは大いに筆者が反省するところである。どんな事業にもリスクは付き物だ。解析し過ぎると次に進めなくなってしまう。断言するが、どんな事業のビジネスプランを見ても、なぜ失敗するか、理由を山のように挙げる自信がある。解析するのは必要だが、「ええい、ままよ」と飛び込むことも大事だ。しかし、熟考せずに飛び込むのも考えものだ。その線をどこで引くか、これは自分の勘だろう。

76とも関連するが、引き際を見極めるというのも難しい。一体どこまで頑張れば良いのだろうか。Smart Gridで今ガンガンに活動しているSilver Spring Network社は、つい数年前までは投資するVC1社だけで、主なVCからは製品や分野が地味と言われて何度も投資を断られている。ところがここ12年の間にSmart Gridは脚光を浴びて、Silver SpringにはメディアやVCの関心が集中している。会社は何も変わっていない。製品も技術も。ある日起きたら世の中が変わっていた、いう感じである。ベンチャーは博打だ。

8の他人の意見ということについては、他人から意見や体験を聞くのは大切なことである。しかし、人はそれぞれ違う。そしてそれぞれの事業も違う。他人の経験や意見がそのまま通用することは稀だ。筆者の駄文も含めてそれを強調しておきたい。結局は多くの事例や自分の経験から判断するしかないのだ。

最後に皆さんに考えてもらいたい。上に述べたこと全部、その反対をやれば、あなたのベンチャーは成功するだろうか。答えは多分「違う」だろう。上に書いた話は全部定性的で、定量的でない。定量的に書けないのは、すべての事業は異なっており、1つの方程式を当てはめられないからだ。

人生は一度だけ。ベンチャーをやって失敗して後悔するのと、やらずに後悔するのはどっちが良いのだろうか。もしあなたがまだ若くて、失敗しても家族を路頭に迷わせることがないのであれば、やって失敗してそれから学ぶことは決して無駄ではないと思う。だが、それなりの年齢になっていて、全財産を失うかもしれないというリスクを取れない人にはお勧めできない。メディアは、失敗して家族離散など散々な目に合った人の話は決して書かないから。もう一度言おう。ベンチャーは博打だ。あなたはそれでも、「ベンチャーで成功する方法」を信じるのか?

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