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30年に渡って関わってきた米国のITの出来事、人物、技術について語る。

深くシリコンバレーのコンファレンスの企画に関わった話

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2050年にはInternetによる電力消費が全体の50%にもなるというような、レポートが飛び交う中、これを憂慮した米国議会は2007年に米国環境庁(EPA)に実際のデータセンターでの電力消費を過去・現在・将来に渡って調査する様に要請をした。その結果は2001年から2006年までに消費量は2倍になり、2006年の時点で全体の1.5%を占め、このまま放っておくと、更に5年後の2011年には更にその2倍になるというものだ。この調査はLawrence Berkeley国立研究所(LBNL)EPAの委託を受けて行い、最新の技術や手法を駆使すれば、これを防ぐことが可能となると結論づけている。しかし、調査は概ね理論的なもので、実証実験が必要であった。LBNLSVLG(シリコンバレー リーダーシップグループ)のメンバーであったことで、この2つが中心となり、多くの会社や機関がボランティアとして参加して、この実証実験を2008年に最初に行いEPAの報告書の結果の実証に成功し、昨年結果を発表した。

さてそのシリコンバレー リーダーシップグループ(SVLG)だが、SVLGはシリコンバレーの大小300以上の会社がメンバーのNPOだ。大手のHPOracleGoogleCiscoIntelSunやあまりなじみのないベンチャー企業も参加している。また、シリコンバレーの雇用の4分の1程度はSVLGの会員メンバー会社が担っているそうだ。SVLGは市町村政府をはじめ、州政府や連邦政府ともシリコンバレーの様々な問題を解決するべく連携している。広く経済、セキュリティ、交通、エネルギー、環境、教育などの問題を解決することを目指す。

昨年のコンファレンスに参加した筆者はまさか今年のコンファレンスの企画チームに参加するとは思っていなかった。シリコンバレーはコネとコンタクトの世界だ。筆者が協業をしているクリーンテックの調査・コンサル会社の社長は元Accentureのエグゼキュティブで去年この実証実験のまとめ役に古巣のAccentureSVLGに紹介していた。去年のコンファレンスに参加していた筆者は彼に依頼してSVLGの企画チームに参加できるように取り計らって貰った。よくアメリカ人は日本での商売の成功はコネとコンタクトだと言うが、それはここでも同様である。この地の強みは特にそれぞれの専門知識(技術、マーケティング、営業、経営、サポート)と経験を持つ人々の層が厚いことだ。特に、大企業で働いてその後、会社を興す場合組織を知っているということで、即戦力となる。こいいう土地柄、Linkedinが非常に良く利用されている。これに関しては、以前記事を書いている。「Linkedin ITPro 岸本」で検索すれば見つけることができる。

今年は2年目としてシリコンバレーのSunnyvale市に拠点を持つNetApp社で1015日に開催された。今年の参加者はこの不況真っ只中にもかかわらず、昨年の300人を越える400人が参加する大成功となった。実証実験は幾つもの実例から成り立っている。例えば、ラックの温度を計測してそれに応じて室内の温度調整をしたり、仮想化の程度による電力消費削減効果などだ。去年の実例が17であったに比して今年は24とこれも増加した。企業や機関は大手のSunOracleNetAppを始めベンチャー企業などを含む多くが手弁当のボランティアとして参加した。SVLGLBNLという利潤を求めない2つの組織が、米国データセンターでのエネルギー消費を抑えるために広く呼びかけ、平素利益追求をする企業がボランティアでこれに参加した訳だ。

筆者も協業しているAltaTerra社と共に実証実験の事例のレポートの編集と推敲に参加した。実際には、それだけではなく、プログラムの内容に関しても意見を述べ、セッションの設定やスピーカーの確保にも貢献した。今年のキーノートがCloud Computingになったのも、温室効果ガスとデータセンターの関係を話し合うパネルとCloud Computingとデータセンターのエネルギー効率のパネルの設立にも貢献した。その他、色々なマーケティングの資料の作成にも貢献した。多くの会社や人々がボランティアとして参加しているので、時として問題に遭遇して胃が痛くなることもあった。それだけではなく、時として企業同士の利害が絡む場合もあり、意見の不一致から紳士からぬ言語も飛び交い、しかも大分のコミュニケーションがメールで行われる。その数や莫大なもので、コアな人だけでも数人おりそこに問題によって色々な人が含まれるので、メールでの意思疎通はかなり困難であった。全ての人が一律に全てのメールを同時に読んでいるわけではないので、既に前のメールで述べたことをベースに議論するとまだ前のメールを読んでいない人にはなんのことか分からない。

筆者は当初、実証の実例のレポートの推敲と編集という係りであったので、かなり後まで出番がないかと思っていたら、途中から全てのプロジェクトの進捗の話に巻き込まれ、実際に進捗を管理している人との連絡も頻繁になった。コンファレンスが近づくにつれ、今年の参加を見送る企業やかなり遅い段階で参加を希望するものが続出した。そういった企業とのコミュニケーションも手伝った。日本企業も2社ばから当初は参加の意向を示して、コアの人々に取り次いだが、やはりこの不況の影響で断念に至った。来年は日本企業にも是非参加して貰いたい。

パネルを設定するにあたっては、筆者の持つ全てのコネとコンタクトを動員してスピーカー探しにあたった。Cloudのパネルは1ヶ月ちょと前に企画されたので、スピーカーを探すのに苦労した。今Cloudの専門家は引っ張りだこだ。多くの企業は本人に直接コンタクトされるのを嫌がる。しかし、それでは埒があかないので、コネを使ってメールアドレスや直通の電話番号を探して直接連絡する。メールで反応がない時は電話だ。電話を掛けても大抵は留守電だ。しかも、その挨拶メッセージには「電話よりメールが私を捉まえることが出来ます。」というなんとも皮肉な結果で。こういう時は何回も掛ける。しかし、これは営業のテクニックと同じで技術がいる。その技術についてはまた述べるが、ともかく相手に連絡しないと悪いなと思わせることだ。かなり高等なテクニックだが、マスターすると色々なことに使える。

この活動は多分にボランティアにより成り立っており、幾らでも貢献できる。そこが面白いのだが、気がつくといつの間にかコアーチームの直ぐ外側に立っていることになり、幾らでも相談され頼まれる。まあ、商売へたの筆者だからしょうがないか。。。。

しかし、長い一日が成功裏に終わって、レセプションで飲む一杯のカリフォルニア産の赤ワインは達成感と相成って格別の味だ。来年の第3回もボランティアで参加するかは今は未定だ。

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