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国内UX第一人者 黒須正明先生による連載コラム最終回「ERMによるUX評価とUXD」

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私が編集支援している国内UX第一人者 黒須正明先生による連載コラム最終回がプライム・ストラテジーで公開されました。

第六回「ERMによるUX評価とUXD」

全6回をWeb担当者向けに解説いただきました。

興味がある方は第一回からどうぞ!
第一回へ


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[ERMによるUX評価]

ERMというのはExperience Recollection Methodの略で、経験想起法といいます。つまり、評価を行う時点で、それまでの過去の経験を思い出しながら記録する、というものです。したがって現在のUXの評価ではなく、過去のUXを記憶に頼って思い出す評価です。認知心理学を知っている方ならご存じでしょうが、記憶というのはまず忘れてしまいやすい、そしてその内容が変容してしまいやすい、そのような欠点を持っています。ですから、ERMによって得た結果は正確に過去の経験を再現しているとは考えない方がいいでしょう。忘れてしまわれた経験もあるでしょうし、経験したときにはとても嬉しかったのに、そのことを忘れて低い評価をつけてしまうこともあるでしょう。したがって、ERMは、評価を行う時点から過去を振り返ったとき、自分の経験の歴史がどのようになっているかという「現時点」での考え方を把握する手法だと考えるべきでしょう。

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ERMの記録用紙を図として示します。ERMの調査は、ひとつの対象について20-30人分くらい集めれば十分といえるでしょう。100人も200人も集めてしまうと集計が大変です。もちろん、その気になれば集計できますし、信頼性の高いデータが集まるでしょうが。また、できるだけ違った属性を持った人からの回答を集めるようにしましょう。女性も使うのに男性ばかりのデータであるとか、高齢者も使うのに若い人ばかりのデータである、というように偏ってはいけません。特に、その製品やシステム、サービスを利用すると思われているターゲットユーザを中心にしてサンプリングしましょう。

行の方向には、期待感から始まって現在、そして近未来の予測までが、大まかな時系列で分割してあります。以前はこれを年ごとに書いてもらっていたのですが、人間の記憶がそこまで正確ではないと考えて、このように大括りにしたわけです。

列の方向にはエピソードの記入欄と評価の記入欄があります。エピソードというのは、その製品やシステム、サービスとのインタラクション、つまりそれを利用していて生じた出来事を思い出した内容です。評価は満足感について、それを-10から+10までの21段階で評価してもらいます。

この例の場合は、Webを利用した社内の旅費精算システムに関する記録です。いろいろなエピソードが書かれており、評価、このインフォーマントの方の場合はマイナス評価が多くなっていますが、それが書かれています。

このERMの評価データをどのように利用すればいいでしょう。まず、エピソードの内容を、評価点を付けたまま分類します。そして、これはインタフェースのユーザビリティの問題、これは性能の問題、これは一般的なコメント、といった具合に整理します。もう少し細かく分類してもいいでしょう。そして、マイナスの点数がついたところ、特に大きな得点がついたところ、多くの人によって指摘されたところは重視しましょう。そうやって得た結果を企画や設計の関係者にフィードバックして対応策を協議するようにつなげるのです。できれば、分類や整理は、そうした関係者と一緒にやるのがいいでしょう。

また、注意すべき点は、良い評価が得られた点です。これらについては単に喜ぶのではなく、インタフェースやシステムの機能などを現状のまま維持することを基本とすべきです。Webサイトのインタフェースを変更する際には注意が必要だからです。良かれと思って改善したつもりが、かえってUXを損ねてしまうということが往々にして発生するからです。

(この続きは以下をご覧ください)
https://column.prime-strategy.co.jp/archives/column_1332

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