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IT業界でベンチャービジネスの支援をしている執筆者が日々の活動ログと感じたことを、徒然なるままに書き綴っていきます。

推進することでうまく局面を変える ~「にわたま」からの脱出~

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この「にわたま」の話はこのブログでも過去に書いたことがありますが、最近気になるトピックなので、当時オールアバウトのガイドをしていた時に寄稿したものをベースに再リバイス!してみました。

ビジネスを運営していると、どこから手をつけてよいか分からなくなるときがありますよね。そのような場合は「にわたま」な状態に陥っていることが良くあります。私も過去にそんな事がよくありました。その時に感じた陥りやすい穴と解法についいてふれてみます。

ニワトリが先か卵が先か(にわたま)

事業運営や推進会議には必ず、「ニワトリか先か、卵が先か(以下:にわたま)」的な話が出ます。 「もし、事例があったら、もっと売れるのに。でも売れていないから事例が出来ないんだよね。」とまぁ、そんな感じです。 そんなときに、「ホント、ニワトリか先か、卵が先かだよなぁ」などという発言が出ることもままあります。 以前私がやっていた“立ち上げ屋さん”や事業企画の仕事はいわば白紙で更地な場所から始める仕事が多いので、最初はいつもこんな”にわたま”な議論から始まることが多いのです。 ビジネスはお客様とパートナー、そしてメーカーが同じひとつの市場で動いているので、全て関連性があります。ソフトウェアの間接販売ビジネスを例にとって書いてみます。ビジネスを上手くまわすためには、この顧客とパートナーとメーカーの3者が同時に動き出す必要です。しかし顧客もパートナーもそれぞれ主体性を持っており、特に弱小メーカーの言う事なんかそうは聞いてくれませんw 更に立ち上げ当初なのでメーカーに予算なんかほとんどない状態ともなれば、3者を同時に動かすなんて不可能に見えてしまうことも多いと思います。 「あーあれがあれば、これができていれば、いやはや、そこがぁ!!」 なんて、悲鳴は自分もよく上げますし、実際にあちこちの会議室で聞こえてきそうです。この苦悩があるからビジネスは面白いのだと(後になってですが)思います。

「にわたま」な状態とは!? 

日本のIT業界のベンチャー企業が成功する確率は「千三つ」といわれることもあります。 成功するのは3%くらいということだとおもいますが、ほとんどの会社が立ち上がらずに10年もたずに飛ばないままの零細企業で終わってしまうような気もします。実際に調べていないのでわかりませんが、ほとんどの「成功しない理由」が、この「にわたま」な状況から脱せていないことのように思います。 そこで、”立ち上げ屋さん”や事業企画者として一番期待される部分であり、経営陣からみて深刻な部分である「にわたまからの脱出」について書いてみたいと思った次第です。

まず、「にわたま」な状態とは? 

”にわたま”な状態とは、経営者や現場キーマンが製品が売れないことと、売れない理由しか理解していないため、その議論ばっかりが進み、明快なプランが出てこないまま会議に疲れて、仕事をした気分になったり、問題が先送りになったり、時間ばかりがたってしまう状態のことを意味しています。 経営的に時間だけがたつことは、給与を社員に支払っている以上、資産の流出であり、これが続けば倒産の危機もまねくこともある由々しき状態であると思っています。 仕事の効率が上がるだけで、業績が上がったりすることも結構あります。限られた時間の中で何手打てるか、何歩進むかが結構大事だと思います。

「にわたま」な状態からの脱出方法 

では、どうすれば「にわたま」な状態から脱出できるのかをまとめてみましょう。 実はこれは、文章で説明するのは結構難しいことです。なぜなら、その解法は本質的にはシンプルですが、方法としては複雑だからでです。 そもそも会社というのはどんなに小さな会社でも、その市場で仕事をしている現場作業のプロ集団であり、それなりの知識と経験があります。そういう現場作業のプロが見つけられないことなのですから、解法自体は非常に複雑になっていることが多いと思います。それ故に、議論をすれば紛糾したり、穴にはまったり、突破口が見えないまま会議の時間が過ぎていくことなんて本当によくありますよね。

では、その解法とは?

この解法は、将棋の戦略のようなものであると私は考えています。 将棋は最初の一手だけで勝負がつくことは絶対にありません。何手も打ちつづけながら戦場形成を変化させ、局面を変え続けるうちに、勝利の打ち筋が確立されると考えています。解法におけるミソはまさにこの「何手も打ちながら戦場形成を変化させ、局面を変え続ける」ことです。将棋では、「王手」を打つまでに、何手も「王手ではない手」を打ちますよね。それらは全て、局面を有利にするための一手だと思います。「にわたまの解法」もまさに、この部分が一番肝心なのです。 事業が成功するために重要な大きなプランがあれば、そのプランを実行可能にするためのいくつもの小さなプラン(将棋でいうところの局面を有利にするための手)を同時に創造することが「にわたまな状態」から脱出するために非常に大事です。 一般的に「にわたまな状態」に陥りがちなのは、事業成功のための重要プランが、市場の状況にマッチしていないので、成功しにくく見えてしまい、議論と事業運営が堂々巡りになってしまうからです。その際に、「事業成功のための重要プラン」が有効に働くための「お膳立てプラン」のような小プランもできていれば、事業は「にわたま」から脱出できる案を実行できるようになはずです。(私はそう信じています)

お膳立てプラン・イメージ

しかし……。その「お膳立てプラン」が一段階ですめば、シンプルなのですが、実際にはもっと複雑で、本プランを実行するまでの「お膳立てプラン」が3段階くらいあることもあるように思えます。更にその本プランも何個もあるのが普通なので、シナリオ自体は非常に複雑になります。5手も10手も先を読み、そして柔軟性に富んだシナリオをつくることが必要となります。 仕事として請け負えば、当然そのシナリオの明文化が必要です。しっかり作れば、シナリオの長さは相当な長文になるのは間違いありません。 以前、私が某一部上場企業での新事業立ち上げのシナリオを書いたときは、企画書の枚数が販売戦略だけで100ページ近くになったこともありました。(サマリーは15ページであとは、補足資料でしたが)「市場がこうなったら、こういうプランを開始し、中間結果Aのときはプランを維持、中間結果Bの時はさらにプランを追加する……」といったシナリオでした。私はこういうシナリオづくりが苦にならないタイプなので楽しかったですが、作成には結構時間がかかり、大変な作業でした。

「圧倒的な実行力」が必要

話しを「にわたまからの脱出法」に戻します。私流の「にわたまからの脱出法」のイメージは前項のような感じです。ひとことで言えば、事業効果が高い本プランを実行するための戦略局面を有利にするプランが解法」であると信じています。 そしてもうひとつ肝心なことがあります。それは何よりも「圧倒的な実行力」です。道を切り開き、ビジネスを推進させるパワーです。 常に変化している実際の市場で、自分に有利な局面を作り上げるためには、複数の顧客、複数のパートナーに対して同時に何手も打つ必要があると信じています。一手一手ゆっくり打っているのでは、打っているそばから市場は違う形に変わってしまいます。その市場を切り開くためには同時に何手も打つことが出来る「圧倒的な実行力」が何よりも必要だと思います。「前に進むことで道は開ける」と、私も思います。とは言っても、「言うはやすし、行うは難し」ですね。私も精進しますw

今晩も、あと一歩、そして、もう一歩進みたい。

自分が進めば、お世話になっている周りの人達、そしてその周りの人たちも進みます。

そう思うと、メール一通、原稿1枚、そして企画の原案をもう少し練りたいなどと考えてしまいますよね。今日も寝れなくなりそうですねw

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