PCが使えないのは退化ではなく進化である
「近頃の若者はパソコンが使えない」という。海外に比べて、若者のPC所有率が低いんだそうだ。これを問題視する日本人は結構多いらしい。ちょうど、うまくまとまった記事があったので、詳細はそちらを読んで欲しい(「PCを使えない学生が急増」の問題点)。
この記事、PC8801やFM-7と、ホビー色を強めたPC-6001や、ビジネス色の強いPC-9801を同一視していたり、1980年代のパソコン普及率を過大評価していたりするのが気になるが、それは些細なことである。問題は「学生のうちにPCが使えるようになるべきだ」という一般的な風潮である。全くそんな必要はない。
現在、ほとんどの企業は、学生時代に身に付けたスキルに対して何も期待していない。考えてみて欲しい。今の学生は、他人の電話を取り次いだ経験を持たず、初対面の人に電話したこともない。そこから教えないといけないのだから、PCの使い方を知っていても、新人研修期間は大して短くならない。
だいたい、「学生がPCの使い方を知らない」と言うが、そういうあなたは知っているか。電卓をたたきながらExcelのセルに数字を埋めている人、Word文書のレイアウトをスペースと改行で調整する人、スライドマスターを変更せずにPowerPointを作る人、こういう人が「PCを知っている」と自分で思っているからひどい話である。
自分たちにできないことを新卒に要求するのは、誰も教えられないからだろうか。
若者がPCを使わないのは、PCを使う必要がないし、PCは使いにくいからである。
だいたい、今のPCが本当に使いやすいと思っている人がいたら、その人は自分の感性を疑った方がいい。単に文書を見るだけなら、明らかにスマートフォンやタブレットの方が使いやすい。
特殊なアプリケーションが必要な場合や、複雑な表の操作や、マクロを利用したい場合はPCが必要になるが、ある程度ビジネスを経験しないと、PCの便利さに気付くことはないだろう。PCを学習する意味が感じられないのは当然だし、それでは学習もできないだろう。
そもそも、ほとんどの世代の社会人は、会社に入ってからPCの操作を習ったはずだが、特に問題はなかっただろう。もともと誰でも使えるように設計されているのだから当然である。決して使いやすくはないのは大きな問題だが、一応使えるようにはなっているはずである。たとえスタイルの概念を理解していないとしても。
電子メールのマナーもよく問題になる。タイトルが付いていないとか、いきなり本文から入るとか、そういう話である。
これも、立派な大人が「教えてください」とか「ありがとうございました」「ご相談」などというタイトルを付けてくるのだから似たようなものである。むしろ、レスポンスの早い若者の方が優秀である。
いきなり本題に入るのも、電子メールならそれほど不自然でもないだろう。付き合いの浅い顧客に送るのはちょっと問題あるが、もともとビジネス文書のマナーは新人研修で扱うものだ。
もう一度書いておく。学校でPCの操作を覚える必要はない。今の若者は、旧世代の人間よりもはるかに優秀だから、必要ならすぐ習得する。今、PCを知らないのは必要がないからだ。必要のないことを学習することはできない。
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